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早池峰・八幡平・ 蔵王山 を再訪 (みちのくの山と秘湯めぐり)
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夏山ならば、アルプスか東北が良い。山を下りたら良い温泉でのんびりしたい。良い温泉ならば東北が良い。ということで、岩手県、北上山地の早池峰を再訪することになった。「再訪」は私だけである。同行の皆さんにとっては初めてである。 早池峰(はやちね)は是非やり直し登山をしたかった山だった。以前に登ったときは雨に祟られて、風景は全く見えなかった。それでも、日本のエーデルワイス「ハヤチネウスユキソウ」の群落を眺めて感動した。以来、是非もう一度、青空の下で気持ち良くエーデルワイスを見たい、と思っていた。 7月18日(金曜日)、18:30に小手指駅前を車で出発。一路東北へ向かう。新幹線に比べると、高速道路を時速100kmで飛ばしても北東北はウンザリするほどに遠い。しかし、今回は運転手が3名いるので、負担は分けることが出来る。深夜岩手県紫波ICを降り、北上山地奥深くへと山道をたどり、午前1:45、早池峰登山口、河原ノ坊に到着。明日の晴天を約束するかのように、満天の星が瞬いていた。 7月19日(土曜日) きりっと空気の冷えた朝であった。まだ朝日の当たらない谷間の駐車場から、山頂部に陽が当たり始めた早池峰を仰ぐ。絶好の登山日和だ。朝食を済ませ、5:45、河原ノ坊を出発し、コメガモリ沢ルートの登山道に足を踏み込む。駐車場には夜間にも車がどんどん到着し、今日は登山者がかなり多そうである。 岩がゴロゴロの斜面を登る 早池峰の森林限界は低い。沢に沿った道をしばらく歩くと、岩がごろごろとした斜面の登りになり、背の高い樹木は姿を消す。そうすると、夏の日差しを遮るものは無くなり、肌の露出部はひりひりと火照り、汗はにじむ。そんな辛さを忘れさせてくれるのが、登るにつれて次第に生気を増してくる高山植物の花畑だ。 ハヤチネウスユキソウは直ぐに現れた。最初はほんの数輪だけだったが、登るにつれてその群落は華やかさを増していく。純白の雪をかぶったようなその花の姿は決して派手ではなく、むしろ地味である。この花は私の永遠の憧れであるヨーロッパ・アルプスを思い出させるので、姿を見るととても嬉しい。 咲いているのはもちろんハヤチネウスユキソウばかりではない。白いチングルマ、ピンクのナンブトラノオ、ミヤマシオガマ、アズマギク、イブキジャコウソウ、紫のミヤマオダマキなど、沢山の種類の花が咲き誇る。 天狗が頭をぶつけたという打石 眼下には深い緑の原生林が北上山地を覆い尽くしている。しかし、この早池峰だけが岩石質の山だ。コウベゴウリという地点を過ぎ、空飛ぶ天狗が頭をぶっつけたという岩塔「打石」を過ぎると山頂稜線に出た。稜線を右にたどって行くと、やがて待望の早池峰山頂(1,917m)である。8:10に到着。 360度の展望が広がる。茫洋とした北上山地の山々、そして西側には北上川の流域に発展した盛岡や花巻の町の彼方に南部富士、岩手山や八幡平、栗駒も望める。風も無く山頂は快適そのもの。山頂神社付近は人が多いので、少し下った岩場で、岩手山を正面に望む場所でブランチを楽しむ。足元には、「私を決して踏まないでね」と言いたげに、ハヤチネウスユキソウ数輪が岩陰に咲いていた。 下山は田代平湿原の花畑を通り、小田越えルートを歩く。田代平は白いコバイケイソウの大群落であった。岩場を下って行くと、背後には早池峰山頂の姿が素晴らしい。登り同様に、花畑は見事だ。 正午過ぎ、河原ノ坊駐車場に下山。全行程快晴に恵まれて、前回の荒天の無念さを見事に晴らしてくれた、素晴らしい山行であった。 炎天下の下界に下り、大迫町(おおはざままち)のエーデル・ワイン工場を見学し、ワインを試飲した後で、一路本日の宿、八幡平の麓の松川温泉へ向かう。 秘湯、松川温泉の露天風呂 山奥の秘湯の宿、松川温泉、松楓荘には16:00前に到着。渓流に面した宿は、古びているが、温泉は素晴らしい。白濁した湯をなみなみとたたえた露天風呂、洞窟風呂、内風呂が敷地内に分散されていて、湯巡りの楽しさを味わえる。夕食も川魚と山の幸がふんだんに使われた美味しいものであった。昨夜の寝不足と、山の疲れをゆっくりと癒し、美酒・美食を楽しむ。 7月20日(日曜日) 精進が良いためか、快晴は持続した。この日は、八幡平(はちまんたい)を見物する。9:25に宿を出発。 途中のスーパーで食料品を買い、八幡平アスピーテラインを登って行く。私にとって八幡平は3回目だが、過去の2回も、天候に恵まれなかった場所である。 標高が高くなってくると自然と見晴らしが良くなる。南部富士岩手山がなだらかに裾野をひいて大きく聳える。途中で、車が沢山停まっている場所があり、車窓から黄色いニッコウキスゲの群落が見えたので、急遽我々も降りてみる。標識には「黒谷地湿原」となっている。 八幡平山頂へと繋がっているハイキング・コースの一部のようだ。足を踏み込んでみると、「ミニ尾瀬」とでも言おうか、緑の草原に黄色のニッコウキスゲと純白のワタスゲの群落が広がっていた。花一杯の周遊コースを楽しんだ。 更に車で上り詰めたところが、岩手・秋田県境の八幡平山頂の駐車場である。ここに車を停めて、ハイキング・コースを歩く。以前は2回ともガスの中を、山頂地点への周遊ルートを歩いただけだったが、今日は晴天に恵まれたので、八幡沼一周コースを歩く。一般客用の周遊歩道から八幡沼一周コースへ足を踏み出すと、コバイケイソウの大群落が展開していた。このコバイケイソウは年によって大群落を形成したり、地味に咲いたりするそうである。昨日の早池峰の小ぶりな高山植物の花々とは趣が異なり、やや大ぶりな花が目立つ。きれいな水を湛えた八幡沼のほとりは、極めて静かな花畑であった。 八幡沼の一番奥の地点付近でランチタイムとする。普通の山のように、狭い山頂の一点だけにハイカーが集中する訳ではないので、静かな雰囲気を楽しめた。 八幡沼を一周して、遊歩道に戻ったあたりが展望台と八幡平山頂である。来訪3回目ながら、初めて緑のカーペットに覆われた八幡平山頂と、八幡沼へと広がる美しい景色を、自分の目ではっきりと認めることが出来た。三度目の正直に私の満足感もひとしおである。 この日は花巻温泉郷、鉛温泉に宿をとった。八幡平から車で約2時間、17:00前に、藤三(ふじさん)旅館に投宿。ここの名物は立ったまま入浴する楕円形の深い湯船である。但し、左右の廊下から階段を降りた場所にあるので、廊下から丸見えで、しかも混浴だ。しかし、じろじろ眺める人はいない。もちろん、この他に男女別の浴場もある。ここには旅館部の他に自炊棟もあり、食品や飲み物を売る売店もある。 部屋は由緒ある木造3階建ての三階部分の角部屋で、清流の流れを見下ろせる場所であった。夕食は部屋でも大広間でもなく、別室に誂えられており、プライベートに落ち着いて食事が出来た。 7月21日(月曜日) 楽しいことはあっという間に過ぎてしまい、もう最終日。今日も道中が長いので、朝食後、早目の8:25に旅館を出発。どうせならば、帰路に蔵王も見物してしまおう。 時間を節約したいので、東北道を飛ばして南下。白石蔵王ICから山道を駆け上がり、蔵王刈田岳への蔵王ハイライン有料道路に入ったら渋滞が始まった。それでも我慢して、何とか正午過ぎに駐車場に入れた。 熊野岳山頂にて
観光客のわんさといる展望台で、エメラルド色の水を湛えた「お釜」を見物。ここも私には再訪だが、以前は荒天で景色はろくに見ていなかった。ここで観光客と一緒のお釜見物だけではもったいないので、最高峰の熊野岳を往復しよう。そうすれば、皆さんも立派に百名山の蔵王山登頂という名目が立つ。 樹木を一切付けない禿げた稜線を30分も登れば標高1,840mの蔵王、熊野岳山頂だ。さしもの連続した好天も下り坂か、ガスが湧いて遠望は利かなかったが、三日連続で深田百名山に登頂だ。FKさんが嬉しそう。 一旦山頂から下った、風の当たらない平らな場所でランチを楽しんだ。しかし、そのランチタイムを終える頃、空が次第に暗くなってきて、遠くでゴロゴロと雷が鳴り出してきた。急いで片付けて、雨の降り出す直前に駐車場のレストハウスに無事帰還。 その後、白石蔵王ICへ下る途中の曲竹(まがりたけ)温泉で汗を流し、気分爽快で帰途につく。登った山々全てが私にとっては再訪だったが、以前は悪天候で見られなかった景色を絶好の快晴下に堪能した。北東北は、時間も費用もかかり、簡単に来られる場所ではない。私自身の満足感もひとしおであった。■
【参考資料】:
1997年7月18日(金曜) 7月19日(土曜) 7月20日(日曜) 7月21日(月曜) |