Data No. 50 |
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蔵王山
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冬には、あの有名な樹氷に覆われ、カラフルな衣装のスキーヤーで賑わう蔵王山。樹氷とスキー場があまりにも有名で、登山の対象としては、あまり思い浮かばない山であるが、それでも深田久弥選日本百名山のひとつである。以前会社のスキーツアーで、この山の一角を知る機会があったが、モンスターのような名物の樹氷を目にすることも出来た。ゲレンデから眺めた蔵王山は決して急峻な山岳ではなく、いつか雪の無い季節の登頂を心に期していた。 蔵王山といっても、一つの山の名前ではなく、「蔵王連峰」と言った方が相応しい。山形盆地から東を見ると、屏風のように幾つもの山々が連なっている。その連峰の最高峰が熊野岳だ。その最高峰も、麓からロープウェイを使えば、大した苦労もせずに登頂出来そうなので、10月末の週末に思い立ち、東北道を愛車カムリで北上する。 福島から国道13号に入り、夕方山形到着。長時間ドライブで、へとへとに疲労。山形駅近くのビジネスホテルに宿泊し、夕食には山形牛ステーキを奮発する。 翌朝、日曜日、天気はイマイチだ。しかし麓から山は何とか見えているので、とにかく行ってみる。 蔵王温泉からロープウェイを途中乗り継ぎし、あっという間に標高1,736mの地蔵岳に立つ。ところが稜線は凄まじい強風だ。駅舎を一歩出ると立っていられない程だ。山頂付近のアオモリトドマツの森は霧氷で白く化粧し、強風に靡いている。これでは身動きが取れないので山頂駅舎で小一時間も待機した。そして諦めて下ろうかと思い始めた頃、ようやく風も幾分和らぎ、熊野岳方面の視界が利いてきた。その山頂は指呼の先である。 思い切って出発。地蔵岳山頂の巨大な地蔵様にお参りし、登山道というよりは遊歩道と言った方が相応しい道を緩やかに登る。稜線を歩くと強風はまだ収まっていないが、東側の山陰に入るとピタリと止む。また天気が悪化しないうちにと、早足で歩く。地蔵岳と熊野岳の鞍部に降り、そこから樹木を一切付けていない、石がゴロゴロの熊野岳の登りにかかる。断続的に呼吸も出来なくなる程の向かい風に襲われる。もうヤケクソに近い気分。右手の麓には、山形盆地と山形の街並みが、こんな強風などとは全く無縁そうに静かに佇んでいる。麓には薄日も射している。 急いだせいで、ロープウェイ山頂駅から40分で標高1,840.5mの熊野岳山頂に立つ。誰も居ない、だだっ広い山頂には霧氷で白く化粧した石塔が、吹雪で立ち往生した僧侶のように立っていた。この風では自動シャッターで記念写真を撮ることも無理だ。ほうほうの体で折り返し下山する。結局、私以外は誰もこんな天気に登頂はしなかった。往復約1時間強で、ロープウェイ山頂駅に帰り着くと、待合室のストーブがとても暖かく、快適だった。 蔵王温泉に下り、車を蔵王エコーラインに進める。坊平スキー場を過ぎ、カーブの連続する上り坂をぐんぐん進み、刈田岳を目指す。刈田岳には立派な駐車場があったのに、知らずにかなり手前の駐車場に車を停めてしまい、強風の中を20分も余分に歩く羽目になった。 刈田岳山頂レストハウスは、観光客で溢れ返っていた。レストハウスを出て、再び強風の中を少し歩くと、樹木を一切つけない荒々しい山肌の中に青緑色の水を湛えた「お釜」が見下ろせた。目を稜線の先にやると、先刻、強風に喘ぎながら登った熊野岳が堂々と聳えていた。この刈田岳からでも、所要時間は大差あるまい。この標高1,758mの刈田岳山頂も、陽が射す程に天気が回復したが、強風は最後まで止まず。オバさんグループが、下から突き上げる強風にスカートを捲られまいと押さえながら、記念写真を撮っていた。 刈田岳レストハウスで温かい食事をとり、宮城県の白石に下り、一気に東北道を南下し、その日のうちに入間に帰着。あの蔵王連峰が白い雪をまとい、樹氷原をスキーヤーが滑走する季節はもう近い。■ また、冬の蔵王の樹氷は、こんな感じです。(1991年3月4日、蔵王スキー場にて撮影) |