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Data No. 184

データ:
登頂日: 2010年10月2日
平標山標高: 1,984m
仙ノ倉山標高: 2,026m
場所: 新潟・群馬県境
天候: 快晴
同行者: 単独行

 

 谷川連峰 

 平標山・仙ノ倉山
 


地味な谷川連峰最高峰

  「谷川岳」や「谷川連峰」の名前を知らない人は居ない。世界で遭難者が最も多い山のひとつとして、あまりにも有名だ。でも、その「連峰」の最高峰が「仙ノ倉山(せんのくらやま)」だということを知っている人は、極めて少ない。山登りを趣味にしている人でもなければ、仙ノ倉山という名前さえも聞いたことが無いだろう。

  水上付近から仰ぐ谷川岳は、実に堂々たる風格を見せて、ネコの耳のような双耳峰を天空に突き上げている。また、連峰を上牧温泉付近から見ると、まさしく仏様が仰向けに寝ている姿の、足先の部分が谷川岳である。初めてその姿を見たときには、こんな私でも敬虔な気持になったものだ。しかし、仙ノ倉山はこの方角からは見えない。また反対の越後側の人里へ行っても、やはり見えない。そんな奥深い山だから、登山に興味の無い人が知る由も無い。私自身も、数年前に平標山(たいらっぴょうやま)の頂上から、初めて視認したことがあるだけだ。
 

秋の移動性高気圧に誘われて

  天気予報で好天を確信して、金曜日深夜に自宅を出発。関越道月夜野ICから国道17号をたどって新潟県側に入り、苗場スキー場を越えた付近の火打峠に、平標山登山口駐車場がある。マイカー・ホテルでぐっすり眠り、朝を待つ。

  土曜日朝までに、駐車場はかなりの車で埋まった。6:30、身支度を整えて、出発。松手山経由の登山道から、先ずは平標山を目指す。このルートは、7年前に一度歩いたが、その時は同行した友人の体調不良で、仙ノ倉山を諦めて、平標山をゴールとしたものだ。

      
          すぐ頭上に見えていた鉄塔。しかし、あそこまではひどく遠い!

  先ずは、頭上に見える送電線の鉄塔を目指して急斜面を登ってゆく。上空は良く晴れ、空気はきりりと冷えて、心地よい。薄暗い雑木林の中、階段状の登山道は息が切れる。麓からは、すぐ頭上に見えていた鉄塔は、歩いてみるとひどく遠かったのは、前回で経験済み。この付近は、送電線がやたらと多い。東京のJR電車を走らせるため、越後を流れる信濃川の発電所から電気が送られ、海辺の柏崎にある東京電力原発からも、大都会東京へ電気が送られる。越後の国は、大都会東京の便利な生活に大いに貢献している。

  登るにつれて、背後にはテーブルランドのような苗場山が姿を見せ、足元の南側には幾度もかよってガツガツと滑りまくった苗場スキー場のゲレンデの眺めが、私の心を熱くさせる。但し、誤解している人があまりにも多いので、お断りしておきますが、「苗場山」と「苗場スキー場」は、地理的には赤の他人です。苗場スキー場は、苗場山の麓でも、中腹でもなく、全くの別山(筍山=たけのこやま)にあるスキー場です。

  
     苗場スキー場のゲレンデの眺めが心を熱くさせる!        苗場山は、苗場スキー場とは全く別の場所、別山です

  越後側の空は完璧に晴れているが、どうしたことか、上越国境稜線の向こう(群馬側)は雲があふれている。それが稜線から越後側に侵入しつつあって、それだけが気がかりだ。

  鉄塔まで、しっかり小一時間かかった。鉄塔から更に30分登ると稜線に出て、標高1,614mの松手山(まつでやま)だ。ここで、視界が一気に開け、目指す平標山が姿を現す。ここから平標山までは、まだかなりの標高差がある。稜線の上空を活発にたなびく雲よ、早く消えておくれ。

          
                         松手山から仰ぐ平標山。雲がジャマだ...

  平標山の稜線までの登りは、かなり辛い。ここが今日で一番の頑張りどころだ。高度が上がるにつれて、越後側には、巻機山、八海山が姿を見せ、苗場山の背後には北アルプスの稜線も顔を見せる。稜線に出て、傾斜が緩んだところで、谷川連峰の核心部が見えてきたが、やがて残念ながらガスの中を歩くようになってしまった。

  8:55、たどり着いた平標山頂上は、越後側はピーカンの快晴。しかし、目指す仙ノ倉山は、ガスに隠れて全く見えない。しかし、希望は捨てずにがんばろう。

   
       平標山頂上にて、越後側は快晴なのに...               仙ノ倉山へ向けてガスの中に突入!

  平標山からは、新潟・群馬の国境稜線歩きだ。右側の群馬側からあふれ出したガスの中に突入してゆく。このルートは、以前平標山から眺めて、比較的ゆったりとした優しい草原状の稜線であることは知っている。20分間くらいはガスの中を歩いただろうか。
 

暖色に彩られた天空の楽園

  やや意気消沈し始めた頃、まったく突然、私の周囲から全てのガスが消え去り、目を見張るような暖色に彩られた草原が出現した。そして、目指す仙ノ倉山の優しい姿が指呼の距離にあった。

     
                           素晴らしい暖色に彩られた山の斜面

     
                          仙ノ倉山は左から二つ目のピーク

  足取りはすっかり軽くなり、ゆるやかなピークをいくつか越えて、仙ノ倉山頂上を目指す。途中、谷川岳方面から縦走して来たと言う男性と、平標山からの下山路について訊かれて、言葉を交わしただけで、待望の仙ノ倉山頂上は、私ひとりに貸切だった。

  山頂では、山頂標識と一緒に写真をとるのに、まったく都合よい場所にセルフタイマーをセットできる、方向指示板があった。誰にお願いする必要も無く、自分の気に入ったアングルで登頂証拠写真を無事撮影して、周囲の景色を楽しむ。

         標高2,026m、仙ノ倉山頂上にて 

       
                             平標山からたどってきた道
 

あまりにも目立たぬ盟主、谷川岳

  稜線の彼方に、すっくと目立つ双耳峰が見えていて、てっきりそれが谷川岳だと思った。しかし、地図を出して確認したら、違っていた。標高でほぼ肩を並べる茂倉岳(しげくらだけ、1,978m)と一ノ倉岳(1,974m)だった。肝心の盟主、谷川岳(1,977m)は、その右側、万太郎山(1,954m)の背後に、かろうじて姿を見せていた。

  
         茂倉岳と一ノ倉岳が肩を並べ、谷川岳は、その稜線伝いの右側。ずっと奥は尾瀬の燧ケ岳か

         
         参考までに、水上温泉から仰ぐ谷川岳の雄姿(2010年5月初旬撮影)

  盟主の姿は、水上側から見える雄姿に比べて、ひどく見劣りしているように感じる。そう、確かに谷川岳の標高は、この仙ノ倉山より約50m低いのだ。この方角からだと、茂倉岳や一ノ倉岳とほとんど同じ高さで、特別な特徴のある姿でもない。ここからは「見下ろす」高さだ。

  しかし、山高きがゆえに尊からず。ここ谷川連峰は、日本アルプスに比べ、平均で1,000mも標高が低い。しかし、多くのアルピニストを魅了し、あまりにも多くの命を呑み込んできた。日本海側の越後と関東の気候をはっきりと区切る、日本の脊梁山脈である。残雪期のこの連峰の眺めは、北アルプスや南アルプスのそれに決して引けをとるものではない。水上側からの谷川岳の雄姿を知ったら、やはりこの連峰の盟主は谷川岳をおいて他にはない。今立っている連峰最高峰の仙ノ倉山は、盟主に選ばれるには、その姿が、あまりにも優しすぎて、貫禄が足りないだろう。標高だけは勝る連峰の他の山は、気は優しくて力持ち、「へいっ、谷川親分を守る子分でやんす!」というところか。

  しかしながら、深田久弥先生が日本百名山に選んだ、天城山や丹沢山などに比べたら、仙ノ倉山の方が、はるかに魅力に勝ると感じるのは、決して私の地元ひいきだけではないと思う。

  山座同定していたら、三々五々、平標山で追い越した人々が登ってきた。ここで食事にしても良かったが、時間は早いし、間違いなく20数人の団体がやってくる。もう下るだけという平標山に戻って、ゆっくりしよう。

  いや、本来はもう平標山に登り返しはしたくなかったのだが、7年前に来たときは確かにあった山頂を巻いて、平標山の家に下る道が植生保護のために閉鎖されていたのだ。しかし、登り返しの辛さは、あまりにもきれいな紅葉と日本晴れの空に元気付けられて、感じずに済んだ。

   
                 平標山へ登り返す道。途中のベンチから左への巻き道は閉鎖されていた

   
                     中腹は、まるで燃えているかのような紅葉に染まる

   
                      往路では見えなかった仙ノ倉山から谷川岳方面の眺め

  平標山の頂上は、多くのハイカーでにぎわっていた。7年前の自分のように、仙ノ倉山は行かず、ここを目的地としているハイカーも多い。私も、ゆっくり、ゆっくり、山頂の憩いを、ひとりで楽しんだ。

                 
                 平元新道の登山口に会った石碑、「満天の 星降るごとし 登山小屋」

  下山は、7年前と同様、山の家を経由して、平元新道をくだる。静かな静かな山道だったが、今年で一番長時間の山歩きは、私を心地よい疲労に包みこんでいた。■

 

2003年の平標山登頂記は、こちら


行  程

2010年10月1日(金曜日)〜2日(土曜日)

入間22:00====(関越道)=== 月夜野 === R17三国峠 === 0:50 平標山登山口(車中仮眠)6:30 ---- 7:20 鉄塔 ---- 7:50松手山 ---- 8:55 平標山(1,984m) 9:00 ---- 9:40 仙ノ倉山(2,026m) 9:55 --- 10:30 平標山(ランチタイム) 10:55 ---- 11:20 平標山ノ家11:30 --- 12:05 林道出合 --- 12:35 車止ゲート --- 13:00 登山口駐車場 13:20 ==== 三国峠 === 猿ヶ京 === 水上、谷川岳ドライブイン14:30 === 赤城温泉郷、滝沢温泉16:50 ===(関越道)=== 20:00入間帰着


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