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Data No. BT_5 |
旅行日: 2009年9月12日〜14日 地域: 山形〜秋田〜青森県 同行者: ひとり旅 |
初秋のみちのくと、 五能線リゾート列車の旅
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9月12日土曜日早朝の上越新幹線、新潟行の始発列車は、大宮駅乗車だと、指定席をとっておかなければ座れないほどだった。新潟から乗り換えた秋田行特急いなほ1号の車内も賑わっていて、途中から乗車した客が、「今日は何で、こんなに混んでいるんだ?」と訝しげな会話をしていた。それよりも、「何でこんなに、じじばばが大勢乗っているんだ」と不思議に思わないのかしらん? 象潟と鳥海山 幾度も列車やマイカーで通過したルートであるが、今回は初めて秋田県の象潟(きさかた)に立寄った。ここは大手電機メーカーの工場があることで、通の間では有名だ。ここは名山、鳥海山の山麓の町。象潟駅から徒歩約20分の道の駅にある海の見える温泉を探訪して、「象潟」という名前の由来を初めて知った。 昔は文字通り「象潟」という潟があった。それは昔、鳥海山の噴火によって出来た小島が沢山浮かぶ入江であったのだが、大地震による隆起で陸地になってしまった。今はその隆起した昔の海底は水田になっているが、昔の小島は「九十九島」という景勝地として残っている。それが、道の駅の温泉センターから眺められる。 象潟を探訪後は、酒田に戻り、かねてから探訪のチャンスを伺っていた駅近くの評判のラーメン屋でランチ。酒田でも町中の温泉を探訪し、陸羽西線で新庄にでて、奥羽本線で横手まで北上する。新庄から大曲までの奥羽本線は、昔は上野から発着する10両編成以上の特急列車や寝台列車が行き来していたが、今は山形新幹線と秋田新幹線にはさまれて、2〜3両編成の各停電車が細々と走るのみ。だから、昔の長大編成列車に対応したままの駅の長大ホームが、うら寂しさをつのらせる。 横手で泊った駅前のホテルは、7,000円で二食付き(生ビール一杯付)、温泉センター入り放題、部屋は清潔で、関東近辺では考えられないコストパフォーマンスの良さ。気ままな旅は行き当たりバッタリも良いが、ある程度は事前の研究が無駄な出費を抑えることになりますね。 五能線、「リゾートしらかみ」の旅を満喫! 9月13日の日曜日は、今回のハイライトである五能線のリゾート列車の旅を楽しむ。予報では雨が降って荒天になるはずだったが、青空が上空に広がっていた。このリゾート列車は特急でも急行でもないが、全車指定席の一日3往復する臨時快速列車だ。もちろん、あらかじめ指定席は確保しておいた。じじばば切符を持っていれば指定席は6回まで追加料金不要。秋田駅に入線してきた列車を見て、旅の期待が大いに高まる。 五能線は電化されていないので、走る列車は電車ではなく気動車だ。3両編成の気動車は両端に展望車と中央にコンパートメント車を連結していて、私の乗る車両は4人掛けのコンパートメント。6人でも充分なスペースだ。そして真ん中の車両なので、モーター音がせず、とても静か。駅では満席との表示だったが、秋田駅発車時はガラガラで、同室にはおばさん一人だけ。やはり、じじばば切符で群馬からひとりで来たそうな。八郎潟の干拓地や海を眺め、会話が弾む。 東能代、能代から大勢客が乗車して、満席になる。沿線では、どこにも立寄らず、全行程をコンパートメントで景色を眺めながら、酒を飲みながら、終点まで4時間の旅をするというグループ、十二湖や岬の景勝地で途中下車するというグループ、目的は様々だが、乗客はおしなべて50歳以上の、じじばば切符利用のじじばばばかりだ。若い人なんて、ほとんど見えない。 東能代から乗車のおばさん達とも会話が弾んだが、私は秋田から約2時間の「あきた白神」駅で途中下車して、駅のすぐ前にある海辺の温泉センターで、日本海を眺めながら温泉入浴を楽しむ。そして、約3時間後にやってくる別のリゾートしらかみ「くまげら」号で、後半の旅を楽しむ。 くまげら号の車中では、またまたひとり旅のおばさん、というよりも老婆と同席になる。医者の奥様だという79歳の上品な人だった。私自身、旅先でペースの違う人や、他人の気持を察しない知らない人としゃべるのは得意ではなく、どちらかというと避けるほうであるが、自分の母親の年齢にも近いこの老婆は、一緒に居てうっとうしくない上品な人であった。会話も、ちゃんとTPOをわきまえていてくれるので、こちらも応じ易い。写真を沢山撮って、ご自分で油絵を描くのだそうだ。海辺すれすれをゆっくりと走るこの列車は、そんな意味ではとても、被写体が豊富だ。 老婆は夕陽を見るために予約しておいたという宿に泊るため、鯵ヶ沢(あじがさわ)駅で下車した。コンパートメント内は、私一人だけになった。午後5時半を過ぎると、周囲は暗くなりはじめる。この列車は満席だった筈だが、途中で人が降りた後は、席を発売しないのか、後半は、寂しいほど静かな車内になった。隣のコンパートメントで宴会をしていたグループは、飲み疲れたのか、皆さんが口をあけて居眠りしている。老婆の下車した鯵ヶ沢から海辺を離れた列車は、津軽平野のりんご畑の中を走る。それも、じっと目を凝らしていなければ暗くて分らない。 途中駅でひょっこり、津軽訛りのおしゃべりなオジさんが私のコンパートメントに乗ってきた。オジさんの乗る距離は20分で運賃は300円なのに、車掌から、しっかりと510円の指定席料金をとられて、ぶうぶう文句をたれていたが、私には言っていることの半分も分らない。でも、当地の人は人懐こいのかな。私が泊る弘前のホテルの道順を津軽訛りで、とても丁寧に教えてくれ、手前の川部で下車した。 後半3時間の旅は、すっかり日が暮れた弘前駅で終った。なんだか、終るのがとても惜しい、ローカル線のリッチな汽車旅だった。また機会があれば再訪したい。 新幹線のスピードは、あまりにも速い! 弘前に泊った翌日の月曜日は、もう帰るのみ。ホテル(朝食付、天然温泉大浴場付で3,980円)で朝食をゆっくりとり、弘前駅始発の八戸行特急に乗り、東北新幹線で帰京する。昨日は五能線を豪華列車で、贅沢なほどのんびりと旅をしたのに、その十倍の距離を新幹線「はやて」は、数分の一の時間で走り抜ける。快適だ、楽だ、便利だ。でも、そんなスピード時代に忘れかけていたものを、五能線のリゾート列車は、しみじみと味わわせてくれた。スピードを求めない旅も、充分に楽しい。■ 注記: この3日間の旅行では、交通費は12,000円のフリー切符以外、1円も使っていません。バスにも乗らないし、私鉄にも乗らない。駅から30分以内で歩けるところは、全部歩きました。 |
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