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Data No. BT-19

旅行地: 青荷(あおに)温泉
旅行日: 2013年7月7〜10日
地域: 青森県黒石市
同行者: ひとり旅


秘湯探訪

ランプの宿 青荷温泉 
 



最新鋭新幹線で、みちのくへ!

       最新鋭、E5型車両の「はやぶさ」に乗って新青森へ

  7月8日の朝、新青森へは、JR東日本の最新鋭新幹線、時速320kmで走るE5型車両の「はやぶさ1号」に乗った。うわ〜っ!速い速い...景色の流れる速さが、段違いだが、対向列車とすれ違う時に感じる風圧は、逆に少なく、しかも、「あっ」という間だ。でも、離陸滑走時の飛行機よりも揺れない。いや〜、日本の新幹線技術はすごいものだ。しかし、盛岡を過ぎると、速度はガクンと落ちる。といっても、それが普通の整備新幹線の速度(〜260km/h) なのだが、感じる落差は、とても大きい。
 

山中の秘湯は、容易にはたどり着けず

  新青森駅から弘前まで、特急「つがる」に乗り、弘前から昼過ぎの弘南鉄道の電車で30分かけて黒石へ。さらにそこから、路線バスに乗り換え、30分かけて国道102号線の道の駅「虹の湖(にじのこ)へ。ここで青荷温泉の送迎バスを、1時間以上待たねばならない。

  梅雨の明けていない北東北は、雨こそ降らないものの、曇天で蒸し暑い。ダム湖を見下ろす、ガランとした人気の少ない道の駅では、一体誰に聞いてもらおうというのか、ひとりのオジさんの奏でるエレキギターの大音響が、蒸し暑さのストレスを増幅させる。しからば道の駅のそばにある公園を散歩しようとしたら、歩き始めた途端、ヘビに遭遇してUターン。

  どうにかこうにか、時間が経ち、15:00、青荷温泉の送迎マイクロバスに落ち着いた。弘前からずっと、顔を見知ってきたひとり旅の男性数人も、同じ青荷温泉が目的地だった。マイクロバスは、すぐに国道102号を離れて、狭い山道をグングン登ってゆく。運転手が岩木山や弘前の市街地、八甲田山のあるべき方向を案内してくれるのだが、生憎今日は遠望の利かない曇天だ。

  
 シャトルというほど頻繁にバスは無いですけど...(虹の湖で)    山道を延々たどっていくと、谷間に目指す青荷温泉が

  一旦標高が600mくらいまで上り詰めたマイクロバスは、登ってきた高さの1/3くらい、谷底まで下る。途中で、谷間にある青荷温泉の建物を見下ろせる場所も徐行して見せてくれた。まさしく、山中の秘境だ。私の秘湯探訪へのワクワクは次第に高揚して行く。
 

ランプ灯る秘境の一軒宿

  15:20、弘前から凡そ3時間をかけて、待望のランプの宿「青荷温泉」にたどり着いた。まだまだ陽の高い時間だが、古びた建物内は、フロントから奥に続く廊下まで、薄暗くて、幾つかの、か細いランプの灯りだけ。広い館内で、私にあてがわれた部屋は、フロントから一番近く、トイレも廊下のすぐ反対側にある101号室で、6畳間だった。近年は、こういう秘湯めいたところに泊ると、なぜか一番移動に楽な部屋を指定される。これ、宿泊者の「年齢」を見てのことかしら...。でも、夕食時には、もっと高齢の団体さまが居ましたけどね。

  
    山中の秘湯、青荷温泉に到着です。午後3:20          私の泊った101号室、窓の外は渓流

  部屋には、最初からランプが灯されていた。しかし、まだ午後4時前なので、ランプの灯りが無くても、全く不自由はしない。布団やシーツ敷き、お茶淹れは、セルフサービスで、館内に女中さんというものは居ない。ま、それはそれで気楽です。
 

秘湯を存分に味わって

  私のような年配者は、足元のまだ明るいうちに4箇所ある温泉浴場を巡っておきましょう。この青荷温泉の泉質は「単純泉」で、特別な濃い成分は含まれていない。しかし、回った浴場には、とても気持ちよく、湯ざわりの良い、白濁した、ぬるめの湯がこんこんと湧き出ていた。私は、熱い湯がニガテで、40℃以下のぬるめの湯が好きなんです。時間を忘れてのんびりできます。建物や浴槽は、総じて木造なので、そのぬくもりが湯と共に、身体に優しい。

   
   本館から橋を渡って滝見風呂へ   一枚岩を流れる滝を見物しながら     これは本館内の風呂

   
 玄関前にある「健六の湯」は無色透明  混浴露天風呂は遠慮しておきます    正面玄関前には散策路も      

  他所の歓楽温泉地に行くと、大浴場は夕食前には大賑わいになるものだが、ここでは、各浴場共に、同時に3人以上が居ることは全く無かった。渓流の水音を聞きながら、鳥のさえずりを聞きながら、他人に気遣いすること無く、ボーッとした時間を存分に楽しめました。
 

秘湯情緒、演出満点の夕食会場

  いまどき、標高3,000mの北アルプス稜線の山小屋でも、もっと高い富士山でも、発電機を使って、電燈を点し、テレビを見られる時代なんです。でも、この青荷温泉は、そんなもの一切無し。というか、そんなものを一切使わない「不便の演出」をしているんです。それが「ウケる」ので、これだけ有名になって、お客さんが来るのでしょう。

  
 夕食膳は岩魚の塩焼き、鴨鍋、そして山菜など素朴な山里料理  宿の主人がユーモアたっぷりに料理の紹介をします

  夕食は、大広間の、やはり薄暗いランプの灯りの下で、午後6:00からでした。弘前からずっと同じ行程を来た、同年輩かつ、ひとり旅の男性達と同席になりました。そして、ビールを飲みながら、賑やかに会話を楽しみました。

  「トイレはウォシュレット付で明るいのに、食事会場は、何もここまで暗くしなくてもいいのにねえ...」、
  「ここは、電気が無くはないのに、意図的に「不便さ」を演出しているんですよ。客が逆に喜ぶから。」
  「こりゃあ、暗くて、自分が食べているのが何だか分からないから、闇鍋つついてるようなもんだね、アハハ...」
  「あれ、オタクさんもじじばば切符の旅ですか、実はボクもそうなんです。やっぱり、アハハ...」
  「明日はどこへ?」
  「明日は日本海をひたすら南下して、新潟の月岡温泉で、コバルトブルーの湯が湧く温泉宿に泊ろうかと。」
  「ありゃあ、いいですね。ボクは秋田市内の温泉に泊って、秋田新幹線の最新型車両に乗って東京へ帰るんです。」
  「あれ、おたくさん、乗りテツ(鉄道に乗るのが趣味な人)ですか?」
  「いえいえ、ボクは、温泉オタクなんです。アッハッハ...」
  「ボクは昨日、法事で青森の実家に来たんですが、なんでこんな不便な温泉にわざわざ行くんだ?って母がバカにして
   ましたよ。フフフ...」
  「こんな不便な宿が好きな人は、物好きな都会人だけでしょうね。」
 

ひとり旅のランプの宿、何を想ってすごそう...

  そんな楽しい夕食会場のだんらんも、せいぜい1時間。午後7時過ぎには自室に戻る。

             
          電気の無い薄暗いランプだけの部屋、何を思って長い長い夜を過ごしますか?

  携帯は圏外、ネットも使えない、そもそもコンセント自体が無くて、ラジオも無え、テレビも無え、オラの部屋には電気が無え!という世界。ランプの灯りは、とても本や雑誌を読める明るさではない。やっと陽が沈んだ時間の、こんなとき、ひとり旅の人間は、思い切り長い夜を、何をやって、何を思って過ごせば良いのだろう。

  いつも、ひとり旅をやっていても、泊る部屋ではテレビを見たり、酒を飲んだり、ネット検索したりで、退屈したことは、ほとんどありません。しかし、今宵は無性に人恋しさがつのる。こんなとき、昔の仲間達や、毎日Kスポーツで顔を合わせる皆さんと、お酒を飲みながら、こんな場所で、しみじみと語らいのひとときを持ったら、どんなに楽しかろうと。

  何も無いランプだけの薄暗い部屋で、聞こえるのは川の流れの音と、カエルの鳴き声だけ。

  夕食時には、酔っ払って寝込むほどのアルコールは飲んでいないし、手持ちの酒も無い。かといって、すぐにまた温泉巡りをするほどの体調でもない。静かに、じれったいほどに、ゆっくりと、夜は更けてゆく。

  ビールの酔いが醒めてから、就寝前にも、もちろん温泉入浴は存分に楽しみます。そんな時間、男性浴場は、私ひとりに貸切同然。部屋に帰ってから、お酒の酔いが足りない気分のまま布団に横になる。いろんなことを思いながら、ほの暗いランプの灯りを見つめていると、部屋の外の瀬音が心地よい眠気を誘い、人恋しさを頭のスミに感じつつ、人里離れた秘湯の夜に安らかな眠りに落ちる。

      7:30からの朝食も素朴な山里料理でした
 

再び、最新鋭の新幹線で

  翌朝7月9日は、朝食前も後も朝風呂を楽しみ、9:30の送迎バスで青荷温泉を後にする。来るときは、バス便の接続も悪く、時間をかけて苦労したが、帰路は接続が極めてスムースだった。その日は、秋田市内の温泉付ホテルに宿泊し、7月10日の午後、この春にデビューしたばかりの最新鋭新幹線車両E6系「スーパーこまち12号」で帰途につく。

    
 秋田駅で出発を待つスーパーこまち12号東京行(午後2時過ぎ)  普通車は暖色系のシートで、ヘッドレストは上下に調節可能

  スーパーこまちは、はやぶさの320km/hには及ばないが、盛岡以南では300km/hで走る。(近々、320km/hの運転も予定されている。)そのスピード感と快適さは素晴らしい。最新鋭新幹線車両で訪ねた北東北の、思い切り不便な山奥の秘湯の旅だったが、帰途も最新鋭新幹線車両は、秋田駅からほんの3時間余りで、あっというまに、私を梅雨明けした猛暑の関東に引き戻した。■


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