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Data No. BT-17


旅行日: 2012年6月16日〜17日
地域: 
「きらきらうえつ号」:羽越本線(新潟〜酒田を乗車)
「SLばんえつ物語」:磐越西線(新潟〜会津若松を乗車)
同行者: ひとり旅

 

リゾート列車の旅

羽越本線「きらきらうえつ」

磐越西線「SLばんえつ物語」

 


「乗る」ことが目的の旅に!


1) 羽越本線「きらきらうえつ」(新潟→酒田)

 
               笹川流れ付近を走る「きらきらうえつ」(JR東日本新潟支社のパンフレットより)

  週末の新潟駅からは、午前中に臨時観光列車が2本相次いで発車する。広い駅構内の人々の注目を思いっきり集め、「ボオ〜〜〜ッ!」と超ど派手な汽笛を鳴らし、真っ黒い煙をこれでもか!と跨線橋に吹き上げて、会津若松行きの蒸気機関車に引かれた列車が発車後(これは翌日乗車)、瀟洒な電車4両編成の酒田行「きらきらうえつ号」が入線してくる。

      
               きらきらうえつの走行ルート(この日は酒田が終点) [観光パンフレットより]

  ちょうど今は、JR東日本が期間限定でじじばば会員に提供する激安乗り放題切符の発売時期なので、車内に入ると、満席の車両の8割以上は、半世紀以上を生きてきた男女で占められていた。この「きらきらうえつ」は、特急「いなほ」と同じルートを走り、所要時間も同じなのに、特急券の要らない快速列車だが、全車指定席で、座席指定料金510円が必要。しかし、このじじばば会員切符だと、4日間で6回まで指定席を無料で利用可能だ。

  
       新潟駅で発車を待つ「きらきらうえつ」            私の乗った座席、ゆったりしていて、窓も特急車両より大きい

     
 フリースペースの展望車(すぐにオバサングループに占領されました)      先頭車と最後尾車両にある展望スペース

  この「きらきらうえつ」の「いなほ」との違いは、乗って、車内で楽しむことを目的に設定された列車であること。座席は特急の普通席より、ゆったりで、窓も大きい。そして、イベントや飲食を楽しめるフリースペースの展望車もある。

  東京駅を7:48発車の上越新幹線に乗ってくれば、接続するダイヤになっていて、10:15、先刻のSLと違い、この列車は特別な注目を浴びることも無く、静かに新潟駅を発車。でも、車内はおばさん団体のお喋りとけたたましい笑い声で、もう最初から喧しい。そして、普通の特急と違い、観光案内アナウンスも頻繁にあるので、移動が主目的で、静かに旅をしたい人は、「いなほ」に乗った方が良いかな。「遊び」の気分で乗らないと、もったいないでしょう。

  この列車の走るルートは、私自身は列車やマイカーで幾度も通っているので、珍しいものは無し。しかし、村上駅を発車後は、名勝「笹川流れ」の海岸沿いを走るので、展望車を再探訪する。発車直後から、おばさん達に占領されていた展望車は、一番眺めの良いルートを走るのに、空席ができたので、売店でウィスキーを購入して、日本海を眺めながら、しばし楽しもう。ここでは、新潟や庄内の「地酒飲み比べセット」や「お茶セット」等も販売している。

   
     漂亮小姐が沿線のガイドです         展望車には売店もあります          やっと展望車を体験できました  

   
      こんなカウンターも               名勝「笹川流れ」付近を走る          日本海に浮かぶ粟島(あわしま)

  幹線である羽越本線を走る電車車両なので、乗り心地は良く、走りもスムース。山形県庄内に入ると、あつみ温泉駅や鶴岡駅で、大勢の乗客が下車し、ひっそりと静まり返った車両は、新潟から約2時間半で終点の酒田駅に12:51到着。この日は曇天で、雨も予報されていたものの、車窓から鳥海山が見えていたのが私にはとてもうれしい。

   
           鳥海山が見えてくると、終点酒田です                 12:51、終点酒田に到着

   
                ようこそ酒田へ!                 その名もズバリ「酒田のラーメン」(駅に近い三日月軒で)

  酒田では、もう観光なんかしなくて良いんです。また明日のために新潟へ戻る前に、酒田に来たら欠かせない「酒田のラーメン」さえ食べられれば。魚介系のダシを使ったおつゆがとっても美味しいんだな。ラーメン食べて満足して、「いなほ」に乗って新潟へ戻ります。■

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2) 磐越西線「SLばんえつ物語号」(新潟→会津若松)
 

   
                  JR東日本新潟支社、「SLばんえつ物語号」のパンフレットの写真

    
                     ばんえつ物語号の走るルート(上記と同じパンフレットより)

[蒸気機関車の思い出]

  蒸気機関車が消えて(定期運行しなくなってから)、もう40年くらい経つのだろうか?今、各地でイベントとしてリバイバル運行の話を聞くが、私自身は、そんな余興的なSLには、ちっとも興奮しなかった。

  私が生まれ育った越後の田舎町では、昔はSLしか走っていなかった。線路から100m離れている我が家にも、風向き次第で黒煙が入ってきた。夏休み、家族旅行で信州の温泉に行くとき、客車には空調も無く、窓を閉めると暑い。でも、窓を開ければ、列車がトンネルに入るたび、容赦なく車内が真っ黒い煙で充満する。ほんの数センチだけ開けていたって同じ。幾つもトンネルを通過すると、車窓にかじりついていた私の顔が黒くすすけているのを見て、私を叱る母親の鼻の下だって、ヒゲが生えたみたいに黒くなっていた。ローカル線の汽車旅は、髪も、顔も、衣服も、汚れまくったものだ。

  小学校高学年の頃、初めてディーゼルカー(気動車)が走り始めたとき、そのあまりの清潔さと機敏な走り方に、大いに感動したものだ。煙やススが全く出ないんだもの!

  でも、良き想い出としては、幼少の頃から、祖母に手を引かれ、家の裏へ、汽車が走るのを頻繁に見に行ったことだ。手を振ると、ススで汚れた顔をした機関士が敬礼してくれるのが、とても嬉しかった。蒸気機関車は、私が高校生の頃まで、貨物列車の一部に残っていたと記憶している。
 

[すべてが自分の記憶の中のもの...]

  じじばば切符での旅は、新幹線ばっかり乗っていたのでは、つまらない。それで、私としては、40数年ぶりに、蒸気機関車に引かれる汽車に乗ってみようかな、と思いついた。「SLばんえつ物語号」は、冬季以外の週末を中心に新潟⇔会津若松間を1往復する全車指定席の臨時観光列車。乗車券の他に、座席指定料金510円が必要なのは、きらきらうえつと同じ。東京駅を朝7:08までに発車する上越新幹線に乗ってくれば接続するダイヤです。会津若松で下車後は郡山へ出て、東北新幹線で帰京する日帰り周遊も可能。

   
     新潟駅7番線で発車を待つC57         C57は新津機関区所属         機関士のスタイルも、昭和中期そのもの!

   
    客車入口にある行き先表示板         車内の様子、空調付できれい!         デザインはとてもレトロ!

  発車前、新潟駅の7番ホームは賑やかだ。出発準備をする運転台も見学できるし、機関車前での記念撮影もできる。昨日の私のように、跨線橋から見物する人も大勢居る。

  新潟駅で車内は7割方座席が埋まり、発車時刻の9:43となった。ボオ〜〜〜!という大きな汽笛が鳴り、数秒後に連結器がガチャンと音がして、乗った客車はゴトンと音を立て、ごくゆっくりと、静かに引張られるように動き出した。

         
           思いっきり黒煙を吹き上げて新潟駅を発車するばんえつ物語号(前日跨線橋から撮影)
           通過直後は、窓の外が煙で真っ暗になります。左側は新幹線駅舎

  この発車の仕方、客車の動き出し方、音、空気、臭い、すべてのものが、自分の記憶の底に、きわめて明瞭に記録されていたそのものだった。電車や気動車のように、動力の付いていない客車なので、室内は静かで、レールの継ぎ目を渡るカタンコトンという轍の音も、他の列車よりスローペースで、思いっ切り懐かしい。

    
         黒い煙が住宅街を襲う!                     若い車掌さんが、礼儀正しく挨拶をします

    
    市街地を抜けると越後の穀倉地帯を横断             こんな場所でビール飲みながら外をぼんやり眺めるのも良いね

  発車直後は、新潟市の住宅密集地を走行するが、まあ見物客やカメラマンの多いこと。みんな珍しそうだが、煙突から出る大量の黒煙が住宅地に容赦なく流れていく。これ、週末だけ1日1往復だから許容されるんだろうが、毎日5往復走ったら、運転阻止運動が起こること、絶対間違い無いね。

  列車は平均速度45km/hで、最高速度は70km/h。そして記憶が正しければ、新潟→会津若松間で、石炭を3トン、水を20トン使用するとのこと。石炭の量も凄いが、水の量にはもっと驚いた。そう、「蒸気機関車」という通り、この汽車は石炭で走るのではなく、石炭を燃焼させた熱で水を蒸気化して走らせるのだから。
 

[ゆっくりと、のんびりと]

  車窓の風景は、この列車のキャッチフレーズが、「森と水とロマンの鉄道」と謳われるように、阿賀野川(あがのがわ)に沿った線路を、会津へ向かう。阿賀野川は、急流も無く、どっちに流れているのか分からないほど、とうとうと水を湛えている川だ。線路は阿賀野川とずっと寄り添って、緑の森の中を走って行く。

   
        水量豊富な阿賀野川沿いを会津へ向かう             7両編成の途中にある展望車はフリースペース

   
   のんびりお弁当を食べながら       トンネルの中は煙と蒸気で窓が曇ります   窓を閉めていても、ススは侵入してくる

  蒸気機関車はともかく、こういうのんびり走る汽車旅は、なかなか良いものだ。新潟から会津若松までは、凡そ4時間弱。途中の津川駅山都駅で2回整備と水補給などで10分程度の停車時間があり、乗客は、そのシーンをホームから見物可能だ。車内にはフリースペースの展望車、売店、イベントスペースがあり、沿線各地から観光案内役も乗っている。

  子供を退屈させないため(と言っても、乗客の大半はじじばばさん達ですけどね)、車内で賞品の当たるじゃんけん大会や、イベントなどがある。しかし、最近の若い乗務員の声は、やたらとテンションとトーンが高くて、言っては悪いが少し耳障りだ。もう少し、落ち着いたしゃべり方と発声の練習をしても良いんじゃないかな。私個人は、のんびり静かに車窓を楽しめれば、そして美味しい缶ビールと食べものでもあれば、何も退屈しない。

  
                   途中の津川駅での整備作業。大勢の乗客がホームで見物

  この列車は7両の客車があり、定員は468名。しかし、沿線には、その数十倍の見物客とカメラマンがいるのではないか。山の中を走っていると、急峻な崖の中腹にカメラを構えた人が突然見えたりして、びっくりする。見物客は別として、写真を撮るのが趣味の鉄道ファンは、JRにとって、決して有難くない存在らしい。彼らは乗車券を買って列車に乗ってくれるでもなく、移動の全てはマイカーで、撮影地を探して、一部少数の心無い人々は、崖でも湿地帯でも、他人の敷地でも、危険や迷惑を顧みず陣取る。事故が発生したら、果たして「自己責任」のみで片付けられるのか。 

         
      途中の主要駅では駅長が手を振って見送ってくれる       オコジョがメインキャラクターの記念スタンプ

  この列車は、15分程度の短距離を乗るために子供の団体がどっと乗ってきたり(それでも指定席券は必要)、途中駅同士で乗降する人も多く、新潟から会津若松まで全行程を旅する人は多くない。でも、いまどきの子供にとって、蒸気機関車を見たり乗ったりするのって、本当に面白いのかな?みんな車窓やSLなんてそっちのけで、別のことでワイワイ騒いでいたけどね...。

  私自身は、汽車旅大好き。日常を忘れて、車窓から美しい山河を眺めつつ、美味しい食べ物を味わい、ほどほどの気持ち良くなるお酒があれば幸せだ。最後には終点の会津若松に着いてしまうのが残念にさえ思えてきた。隙間から侵入してくる黒い煙や石炭の燃えカスの臭いも懐かしく、レトロな車両も懐かしく(もちろん昔の車両はもっとオンボロで汚れていたが)、列車の走るスピードも、轍の音も、昔の子供の頃の記憶そっくりそのままが再現されて、ただただ懐かしい。恐山(おそれざん)で、巫女(イタコ)が40数年ぶりに、私を祖先に引き合わせてくれたような「邂逅」の旅路だった。■



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