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Data No. 208 |
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杓子山
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私の住む埼玉県南西部では、冬など、空気の澄んだ快晴の日には、川沿いのウォーキングコースから、真正面に富士山を眺められる。富士山が見えると幸せで良いことがありそう、見えないと、ちょっとがっかり。トシをとって、寒さに弱くなった身体も、暖かい季節になると、少し元気が復活する。それで、崇拝する富士山に近寄って、もっとでっかく眺められる山に登ってみたくなった。 杓子山は、Wikipediaによると、『山梨県の富士吉田市、都留市、忍野村の境界に位置する山。標高1597.6m。道志山塊に属し、山梨百名山、都留市二十一秀峰の一つに選定されている。』 早朝の中央高速を河口湖ICで降り、富士吉田市街を抜け、山道に入る。そして「不動湯」という一軒宿の旅館を過ぎて、林道の車止めゲート前に午前6:40到着。誰もいない。私が一番乗りだった。と思っていたら、上からマウンテンバイクに乗った男性がひとり、凄いスピードで下って行った。 静寂の山道を杓子山へ ゲートからしばらくは、林道を登って行く。従って、急傾斜は無く、のんびりと歩ける。作業用の林道と分岐するところには、きちんと標識があるので、迷う心配は無い。歩き易い林道は、大権首峠(おおざすとうげ)という、高座山(たかざすやま)との分岐点付近まで続いた。両方とも、フリガナが無ければ読める人は居ないかも。 富士山は、歩いている途中にも、頻繁に顔を見せてくれる。今日は快晴の予報だが、朝もやが麓をおおっているため、「あたまを雲の上に出し、四方の山を見下ろして...」の世界だ。 大権首峠を過ぎてから、ようやく山道らしくなった。しかし、山頂近くでは、ひどく滑りやすい土斜面が連続した。ロープが張ってあるが、確かにこのロープに頼らなければ、滑り落ちてしまいそうな傾斜だ。これ、登りよりも下りの方が要注意。 富士山独占の山頂
林道ゲート前から約1時間で、杓子山1,598mの山頂に立った。まだ朝8時前。だ〜れも居なかった。シーンと、耳鳴りがしそうなほどの静寂に包まれた山頂では、度肝を抜くような巨大さで、富士山が出迎えてくれた。まさしく、天下を全て支配する神様のような姿。思わず、脱帽し、手を合わせる。 杓子山は、富士山だけを拝むための山頂だった。麓は雲の下。富士山の反対側は樹木で覆われているので見えない。富士山の右奥には、木立の隙間から南アルプスが見えた。オンボロのベンチとテーブルに上がれば、もっと良く見えそうだが、足をかけたらグラッときたので、カメラを両手で持ち上げてのメクラ撮影だけ。 こんな無風快晴に恵まれた土曜日なのに、全く人気の無い山頂だった。思いっ切りゆっくりと、富士山と向かい合って、祝杯をあげる。すごい贅沢な時間をもらった...。心の底から、ありがとうございます。 「世界遺産登録」の力とは 下山は、往路を鼻歌交じりで下る。大権首峠付近から、これから山頂を目指す人々とのすれ違いが増えた。20人くらいはいただろうか。そして林道ゲート前に帰着して驚いた。首都圏のナンバーに加えて、「青森」、「香川」なんてプレートをつけた車が居た。いや、居たって別に、何もおかしくないのだが、こんな無名の山に、よくぞはるばるいらっしゃった...。これって、単なる偶然か、それとも世界遺産登録というネームバリューが呼び寄せたのか。この近辺の山や観光地では、今後、こんな出会いが激増するのかしらん?人が増えたからって、地元の皆さんが、あまり商売っ気を押し出さず、私の大好きな富士山が、大勢の人々に愛されることを切望します。 「不動湯」は、厳密には温泉ではなく、湧水だった。山の汗を流すため、無色透明無味無臭の湯に、ゆったりと浸かる。入浴料1,000円は、この設備内容にしては、ちと高いが、最高のコンデションで富士山を独占したことで、ハイテンションの私は、幸せだった。■ 杓子山登山行程: |
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