Data No. 201 |
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シダンゴ山 (震旦郷山)
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今日は久しぶりにお近くにお邪魔しますので、よろしくお願いします。 しかし、相模原から国道129号、厚木から国道246号を西進すると、富士山にどんどん近付いているにも拘らず、その姿は次第に山に隠れて見えなくなる。ま、いいや、山の上で、改めてご挨拶します。 半年振りに山に行こうと思い立った。半年間、不思議と意欲が湧かなかった。そしてトシをとって、寒さに弱くなった身体が、アウトドアでの行動を、これまでになく厭がっていた。寒さの厳しかったこの冬、春になっても、うすら寒い日々がぐずぐずと続き、梅も桜も開花が遅れているが、ようやく春の気配が漂い始めてきた。
秦野市街を過ぎ、国道246号を山に向けて右折。中津川沿いの道を山に向かってどんどん上っていったところが、目指すシダンゴ山の登山口である「寄」(やどりき or やどろき)という集落だった。冷たい北西の季節風を避けられるように、南側以外を低山に囲まれ、陽だまりの中にのんびりと佇む山里だ。その集落の中にある自然休養村管理センターそばの駐車場に車を停める。午前8時少し前。 シダンゴ山とは、変った名前で、つい近年まで聞いたことも無い山だった。知るきっかけになったのは、やはりポレポレ隊の山行記だ。 Wikipediaによると、 「丹沢山地の南部に位置する標高758mの山である。神奈川県松田町内にあり、丹沢大山国定公園に属する。展望の良い山で、相模湾や富士山や丹沢山地の山々など360度の景色を楽しめる。、飛鳥時代に、仏教を寄(やどりき)の地に伝える仙人がいて、この山の上に居住し仏教を宣揚したといわれている。この仙人を「シダゴン」と呼んだことからこの地名が起こり、「シダゴン」が転じて「シダンゴ」(震旦郷)と呼ばれるようになった。」 さて、山を見上げると、まあ、全国どこにでもある、まさしく「凡山」である。山頂からの大展望を楽しみに、半年振りの山歩きに出発した。 山の斜面にある集落は陽だまりの中で、ひっそりとしていた。半年振りの山歩きなので、急坂に息が切れる。ここに住んでいる人々は、毎日こんな坂道を上り下りするのか。体力が要りそう...。集落を越えると、茶畑や農地が現れ、3月も末になって、ようやく梅の花が盛りになっていた。 農地が途切れたところで、イノシシ除けのゲートがあった。登山者はゲートをくぐったら、必ず自分でまた閉めなければならない。 ゲートをくぐった途端、明るい山里の雰囲気は完璧に消えて、薄暗い杉林の中の登りにがらりと変った。そんな杉林の中の登りは、山頂直下までずっと続いた。花粉症の人には登りを楽しめる山ではなさそう。幸い、歩きにくい箇所やスリルを感じる場所もなく、しばしの辛抱だ。 やがて傾斜が緩むと、杉林の向こうが明るくなり、山頂部に出た。山頂部は河童の頭のように、眺望を良くするために、そこだけ杉林を伐採したのか、一面アセビの群落だ。それとも、大昔ここに住んでいた仙人様が、そういう風にしたのだろうか。登山口から凡そ1時間だった。人気は無く、今日は私が一番乗りか。ほどなく、単独行の男性が2人登ってきたが、挨拶を交わすわけでもなく、人物入りの記念写真のシャッターも頼まれるわけでもなく、それぞれ無言で景色に見入り、それぞれが違う方向を向いて休憩する。 風の当たらぬ快適な展望台 シダンゴ山の標高は758m。背景には丹沢山塊の1,500mクラスの山々が囲んでいる。西には箱根の山も良く見える。しかし、富士山だけは、山頂部を雲の中に隠してしまった。せっかくご挨拶をしようと思っていたのに、残念...。 南側に開けた麓の景色をゆっくり眺めながら、ブランチの一人宴会とする。東側は、相模湾の海岸線がゆったりと弧を描き、江ノ島がくっきり海に突き出ている。その奥が三浦半島で、そのまた奥は房総半島の山々だ。南西側には、真鶴半島と伊豆半島、そして大海原の彼方には伊豆大島も浮いているように見える。 手前の陸地を見ると、見事にぎっしりと、隙間もなく、神奈川県の市街地が延々と広がる。ああ、なあんて人が大勢住んでいるのだろう...。何万、何百万の人々のいろんな人生が、この視界の中で、うごめいているのだろう。丹沢山塊は、言っては悪いが、私には魅力が乏しい。しかし、いつぞや晩秋の頃、塔ヶ岳山頂の小屋に泊まって、眺めた下界(横浜〜東京方面)のきらめく大夜景と、それに繋がっているかのような満天の星空は、日本アルプスでは絶対に味わえない、一大感動ものだった。鍋割山頂上で食べた鍋焼きうどんも忘れられない。そして、丹沢は、山そのものよりも、富士山の姿が、どこからでも見えるのが特別なセールスポイントか。 本日の山頂の憩い ゆっくりと大展望を楽しんだ。しかし、後で気が付いたことだが、登山開始から下山終了まで、私はひと言も言葉を発しなかった。山頂では、誰からも話しかけられなかったし、登山中と下山中は、誰にも会わなかった。 下山コースは「宮地山」経由のルートをとった。山頂から登ってきたコースと反対側に下ってゆくのだが、杉林の中に再突入すると、指先がこごえるほど寒かった。また、延々と変化の無い杉林の下りは辟易とする。そして、「宮地山へ5分」という分岐点を見たが、展望も利かないという予備知識があったので、立寄らずに、まっすぐ下山することにした。 その分岐点から寄への下山コースは、前半のかなりの箇所で、登山道が谷側に傾斜した滑りやすい道で、極めて不快だった。違った展望があるわけでもなし、わざわざ変化を求めて歩くコースではないかも。 うす暗い杉林を早足で抜け出て、明るい茶畑と梅の花の咲く、暖かい陽光の射す山里に戻ったとき、ああ、やっと春がやってきたんだ...と、妙に安心して、気持が明るくなった。■ 今回の登頂の証、ポレポレ隊製作のオリジナルバッジ
シダンゴ山登山行程: 2012年3月25日 |
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