山に呼ばれて山ある記Home

日本全国の山ある記

山のバッジギャラリー

ぶらり旅行記

ふるさと讃歌 十日町

お奨めリンク集

Data No. 193


Data: 
蒲生岳(がもうだけ)
 登頂日: 2011年6月5日
 地域: 福島県会津、只見町
 標高: 828m
 天候: 薄曇り
 同行者: FKさん


奥会津のマッターホルン 

蒲生岳(がもうだけ)
 

(山開き祭に参加して)

 



人知れぬ鋭鋒

  福島県の奥会津、只見町は、私の郷里である新潟県の魚沼市と接していて、私自身は、尾瀬や、会津旅行の行き帰りに、よく通った所だ。そこは、尾瀬に源を発する只見川をせき止めた「田子倉ダム」と「田子倉湖」直下の小ぢんまりした町。会津と越後の県境にある、浅草岳、会津朝日岳等の1,500m級の名山に囲まれた町で、冬には県境を通る列車も運休する豪雪地だ。しかし、そんな名山とは別に、田子倉ダムの展望台から町を見下ろすと、標高は低いものの、とても目を惹く奇怪な鋭鋒が見える。私自身も、以前より、ずっと気になっていた山だった。

     
               田子倉ダムからの蒲生岳。その姿はミニ・マッターホルン!(下山後、帰路に撮影)

     
                    会津塩沢駅付近から望む蒲生岳全景と只見川の流れ(下山後に撮影)

  それが当地では「会津のマッターホルン」と呼ばれる蒲生岳(がもうだけ)である。しかし、「マッターホルン」と呼ばれるような姿は、山のすぐそばからよりも、この田子倉ダムの展望台からの方が、より真実味がある。このような鋭角な山容は、豪雪による雪蝕地形と呼ばれ、この周囲にも似たような鋭角な山容を持つ山は、確かに多い。それにしても、標高828mの山を、「会津の槍ヶ岳」なんて言わずに、でっかく「マッターホルン」にしてしまったところが、心憎い。

  今回、その只見町が主催する、蒲生岳の「山開き祭」に参加して、参加者だけに無料配布される特製記念バッジをゲットするべく、FKさんと遠路赴いた。山開き祭の前日、6月4日の土曜日夜、登山口駐車場まで延々4時間近くドライブして、駐車場内にてマイカーホテルに宿泊。
 

厳かな山開き式典に参列

  6月5日(日曜日)、午前7:30から、真正面に蒲生岳を望む集会所そばの空き地にて、山開き式典が開催された。地元の只見町長や地区代表者も参列し、故坂上二郎氏をほうふつとさせる福々しい神主殿が祝詞をささげ、百名を超すハイカーらと共に山の安全を祈願する。町長や地区代表者らの挨拶も手際よく簡潔で、スマートだ。最後に参列者全員にお神酒が配られ、乾杯後、ラジオ体操。そして、待望の記念バッジが配布されて、8:00過ぎに登山開始。

  いやあ、山バッジのファンというのはこんなにいるものなのか...。式典が終わって記念バッジの配布が始まると、参列者が我先にと、バッジをもらうべく、目の色を変えて、係員のオジさんめがけて殺到した。中には、帽子に数十個のバッジを飾った老夫婦もいる。なにしろ、非売品の激レア限定バッジですからね。

     
     蒲生岳を正面に祝詞を捧げる神主                     只見町長や地元の代表者らも参列

           式典後に無料配布された、ステキな限定記念バッジ(非売品)
 

低山ながら、全身の筋肉を使っての登山

  山開き式典後は、参列したハイカーがぞろぞろと大勢一列になって山を目指すので、かなりの混雑だった。会津蒲生駅そばの、只見線の線路を渡り、カタクリ群生地の中を山頂目指して登ってゆく。

         
             この日のコースは、久保登山口から正面コースをとり、夫婦松から左に回り、右のコースを下山

  もちろん、この季節は、カタクリは終わっているが、この山の登山道は、ハイカーを飽きさせない素晴らしい花畑でもあった。花はきれいだが、登りはキツい。山の形がマッターホルンに似ているのだから、急斜面の登りが連続することは充分承知であったが、やはり朝一番には辛いものだ。歩き始めは元気良かった年配者達が次々とペースが落ちてきて休憩をとるようになり、次第に行列は「疎」になって行く。しかし、自分のペースで歩けるほどではない。トシをとって、体力の落ちた自分やFKさんには、まあ、無理が無くて、ちょうど良いのかな。

     
                       山に近づくと、その傾斜がとても急であることに畏怖する 
     
                      急斜面にへばりつくように岩壁を登ってゆく。油断は禁物!

     
        傾斜が急なので、高度感はすごい!                       仲良く絡みあった家族松

  山の中腹から上は、急登の連続だった。ロープや鎖を頼りに、岩場をトラバースしたり、岩壁をよじ登ったりで、足だけではなくて、上半身の筋肉も使う。しかし、ステップは程よく刻まれているし、油断さえしなければ、決して危険な場所は無かった。登る途中に下を見ると、登ってきた中腹の斜面は見えず、下界の水田や家が真下に見える。絶壁を登っている気分だ。
 

至福の山頂

  登山口から約1時間半で、標高828mの蒲生岳頂上に到着した。既に大勢の先客で賑わっているが、我々は、まだ早いほうだった。山頂標識前で記念撮影後、何とか山頂の一角で落ち着いて休憩できる場所は確保できた。

  この日の天候は、薄曇りで、肉眼では田子倉湖の右側に浅草岳等も見えていたのだが、残念ながら写真に撮れるほどのクリアさではなかった。もともと、この山は1,000m未満の低山なので、遠望を楽しめる山ではない。むしろ、中腹が見えず、ふもとの只見川と集落が直下に見える「高度感」と、そんな急な崖を登ってきたという「達成感」を楽しむ山なのだろう。

   
               蒲生の集落と只見川を見下ろす                        828m、蒲生岳山頂にて!

  昨夜到着後の祝杯がまだ効いているらしい、バテ気味のFKさんと、登頂祝のコーヒータイムをしばし楽しむ。その間も、続々と山開きに参加したハイカー達が山頂に到着する。約20分休憩後、あらかじめ「隊長」から指示のあったように、混雑と危険を避けるべく、途中まで、下山は登りとは別のルートをとる。

  下山ルートは、登りルートよりも岩場が少なめなコースで、緊張感は多少和らぐ。途中に、妙義山の石門のような「鼻毛通し」という岩のトンネルがある。これは、その岩の穴から、昔は松の枝が伸びていて、それが鼻毛が出ているように見えたことに由来する。今は残念ながら、鼻毛は出ていない。

   
           妙義の石門のような「鼻毛通し」                       下山も慎重に慎重に!

  下山道も、一方通行を過ぎて、登山道と合流し、しばらくすると、もうすれ違いラッシュもなくなった。ゆったりした気分で、もう一度、登山道周辺の花畑を楽しむ。

   
                          ヒメサユリをはじめ、登山道で出会った可憐な花... 
   

  下山後、無人駅である会津蒲生駅前の広場では、地元の人達が出店を開いていて、タケノコ汁やワラビの佃煮や、漬物などを無料で登山者にふるまっていた。車で来たのでなければ、ぜひともビールを一杯やりたくなるような、素晴らしく、ありがたいもてなしであった。

   
            下山後、会津蒲生駅前広場では、無料休憩所で、タケノコ汁や山菜が無料で登山者にふるまわれる
 

奥会津の素晴らしい気配りに感謝して

  ここ奥会津の只見町は、人口も少なく、決して財政的に裕福ではないだろう。それなのに、こんな山開きで大勢の人を集め、決してコストが安価ではない記念バッジを無料で配布したり、タケノコ汁等をふるまったり、山開きを目当てにやってきた登山者達が、決して大きなお金を地元に落として行くわけでもなかろうに、ありがたくて、本当に頭が下がります。蒲生岳だけではなくて、会津朝日岳や要害山でも、同様な山開き祭が開催されるとのこと。このような行事は只見町をはじめ、周辺の奥会津の自治体でも、盛んに行われている。これを機会に、私もまたこの地を再訪してみたいという強い意欲が湧いてくる。

  これが地域振興や山村活性化推進の素晴らしい見本であり、こうすれば、他所から人がやってくるという術を、こんな山奥の只見町の人達は、良く知っている。私の郷里の新潟県では、交通の便は、ずっと勝っていながら、こういう積極的な誘客イベントを行っている自治体は極めて少ない。それが全く残念なことだ。ぜひ、この奥会津の皆さんを見習って欲しい。何はともあれ、素晴らしい山開きイベントを開催してくれた只見町に、大いに感謝。そして、これからも応援したい。頂戴した記念バッジは、私の一生の宝物です!!■

 

会津蒲生岳登頂、行程

6月4日〜5日
入間20:30 === 小手指 20:55 === 川越IC ===(関越道)=== 小出IC ===(R252)=== 0:50 只見町、蒲生岳登山口(車中仮眠)

山開き式典7:30〜8:10 --- 久保登山口 --- 9:40 蒲生岳(828m) 10:00 --- 11:15 会津蒲生駅前広場で休憩 11:40 --- 11:45 登山口駐車場 === 会津塩沢駅付近まで写真撮影のためドライブ === 12:10 只見温泉保養センター 13:00 === 13:20 田子倉ダム(昼食休憩)14:00 === R252 === 小出 === R17 === 越後湯沢駅でショッピング === 関越道 === 19:30 川越IC〜夕食休憩 === 20:30 小手指 === 21:00 入間帰着

 

  登山記リストへ戻る