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Data No. 187


Data: 
愛鷹山(越前岳)
 登頂日: 2010年11月27日
 地域: 静岡県東部 愛鷹連峰
 標高: 1,504m    天候: 快晴
竜爪山(りゅうそうざん)
 登頂日: 2010年11月28日
 地域: 静岡県静岡市郊外
 標高: 1,051m      天候: 快晴
同行者: 単独行 


駿河の低山を訪ねて
 

愛鷹山(越前岳)

竜爪山(りゅうそうざん)
 



富士山追っかけの昨今

  8月に2度目の富士山登頂を果たした後、私の秋の登山は、富士山を眺められる山ばかり選んでいる。すっかり私は富士山の追っかけになってしまったのか...。

  追っかけになったのは良いとして、晴天に恵まれても、この秋に見た富士山は、どうも富士山らしくないのだ。何故かというと、見たのは、スッピンで色黒の富士山ばかりだからだ。今年は夏の猛暑のせいで、富士山の冠雪も遅れ、11月に入っても山体は黒々としていた。私のパワースポットである富士山は、見るだけでも元気をもらえるが、やっぱり多少は、お化粧をしていて欲しい。

  11月も下旬のある日、テレビで昼の中継番組を見ていたら、真っ白に雪化粧をした富士山が出た。ああ、やっと富士山がきれいに、お化粧をしてくれたんだ!と、うれしくなり、快晴の予報が出た週末、迷いもせずに、またしても富士山を眺められる山へのハイキングを企てた。
 

いざ、愛鷹山へ!

  愛鷹山(あしたかやま)は、ずっと昔から気になっていた山だ。伊豆方面には幾度も、マイカーや、小田急ロマンスカーで通ったが、沼津が近付くとき、その車窓から、富士山の左側の麓に連なる愛鷹連峰を幾度眺めたことだろう。いつか必ず、富士山を眺めに登ってみたいと願っていた。今回は、ようやくその愛鷹連峰の最高峰、越前岳(えちぜんだけ)を目指す。

          
           静岡県富士川付近からの愛鷹連峰、左端が最高峰の越前岳。富士山は左にでっかく見える。(翌日撮影)
 

  愛鷹山は、その昔は「足高山」と呼ばれ、甲斐の足和田山、箱根の足柄山と合せて、富士山を取り巻く「富士三脚」と呼ばれていたとのこと。最高峰で1,504mと、標高自体は奥多摩エリア並で、決して高くはないが、海の傍から聳えている連峰なので、結構その存在感はある。その最高峰は、富士山に一番近いところにある越前岳(えちぜんだけ)だ。

  金曜深夜、大月から中央道無料区間を通り、富士山をぐるりと回って、十里木高原の登山口駐車場にて、マイカーホテルに宿泊。しかし、土曜日早朝は、思いっきり曇天だった。従って、もう一度ゆっくり朝寝をして、再度目を覚ました午前9時過ぎには、青空が少しずつ見えてきた。この日に限っては、遅く出発したことが大正解だった。

  愛鷹連峰の最高峰、越前岳には、ここから約1時間半で登れるので、気張る必要は無し。絶対に晴天になるんだ!という確信を持って、9:20出発。

  
             十里木高原登山口                           先ずはあの鉄塔を目指す

  さすがに手軽く、人気のある山なので、昨夜はガランとしていた駐車場は満杯になっていた。既に大勢のハイカーが入山している。ススキの穂が風に揺れる草原を、ゆっくりと登ってゆくが、この時点では、まだ何の景色も見えない。

  草原状だった山道は、鉄塔を過ぎ、広々とした展望台を過ぎると、やがて樹林帯に突入してゆく。そして、木の根が縦横無尽に出っ張っている、急な山道を登るようになった。段差も大きくて息が切れる。これは当たり前の登山道なのだが、ちょっと前に、あまりにも整備された歩き易い甲州、蛾ヶ岳を歩いた後だけに、気分的な落差は大きかった。そして、えぐれた道と、それを避ける道が、幾通りもあって、はて、どこを歩こうかと迷う場所も多々あった。

  
            木の根を絡む急な登りが続く                        越前岳山頂に到着

  しかし、そんな歩きにくい登山道も、せいぜい1時間程度の我慢だ。標高1,504mの越前岳山頂には、10人位の先客がいた。私には、駐車場から1時間15分の道程だった。この時点では、遠くの景色は全く見えない。山頂標識前で記念撮影をして、もう確信にも似た天候回復を待って、腹ごしらえをする。でも、ちょっと寒かった。

  ちょうど腹ごしらえが終わる頃、山頂標識の付近にいる人が、「あ〜見える、見えるっ!」と大声を張り上げた。その声につられて、私も立ち上がって富士山のあるべき方向を探した。

  富士山は、全く意外にも、山頂の樹木の茂みの、その上に、空飛ぶ飛行機を眺める角度の高さに、まさしく光り輝く姿を現した。私は、その高さと、大きさ、そして神々しい無垢の純白のまぶしさに、ひどく感動してしまった。

    
                    全く思いがけない場所と高さに、まぶゆく光る姿を見せた富士山

  富士山は、すっかりお化粧をした。やっぱり富士山はお化粧をしたほうが、断然きれいだ。でも、この世界に、何であんなきれいな山ができたのだろう。なんで、あんなに大きな姿ができたのだろう、そして、なんで、あんなに高いんだろう...。

  富士山は見ていても決して飽きないが、この越前岳山頂よりも、もう少し下の展望台のほうが眺めが良さそうだ。

  
                     空はすっかり晴れて、富士山は気持ちよく、その全貌を現す

  下山は、樹林帯の隙間から、ずっとずっと富士山を眺め続けての歩きだった。ところが、山を下るにつれて、富士山の全体が見えてくるに従って、私には、富士山が次第に遠くなって、低くなっていくような錯覚を味わった。越前岳山頂では、すぐ傍の樹林の、その上で、飛行機を見上げる高さにあった純白の富士山頂は、次第に対等な高さに落ちて行き、展望台では、もはや仰ぐ高さではなく、真正面に位置していた。

  富士山は、安易に眺められる場所からよりも、やはり苦労して登り詰めた山の上からの方が、その気高さを増すのだろうか...。

   ポレポレ隊 製作の越前岳登山記念バッジ 
 
 

初めての静岡でのんびりと

  土曜日の晩は、静岡市中心部近くにある、終夜営業の、駿府天然温泉「天神の湯」に宿泊。ここはインターネットでホームページから割引券を印刷して持参し、午後6時以降に入館すると週末料金でも1,200円(ロッカー・タオル・館内着付、平日はもう少し安い)、それに2,000円の深夜料金を払うと、おにぎり2個と味噌汁の朝食付きで、パーソナルテレビ付安楽椅子やマッサージ機能付ソファーのある快適な仮眠室に泊まれる。館内ではインターネットもできる。小学生以下は入館できないので、極めて静かで快適な一夜を過ごせた。

  思い切りゆっくりと、温泉につかって、サウナで汗をしぼり、山の汗をさっぱり流して、館内レストランでビールを飲みながら夕食をとっても、総額5,000円程度だったので、民宿に泊まるよりも、ずっと安上がりだった。
 

静岡の名所、竜爪山に

  日曜日は、早朝、宿泊者サービスのおにぎりと味噌汁の朝食を6:30にいただき、7:00にチェックアウト。静岡市葵区の北部にある「竜爪山」(りゅうそうざん)を目指す。

      
         静岡市内から見る竜爪山(右の双耳峰)                      竜爪山のバッジ(穂積神社にてゲット)

  竜爪山とは、1,051mの薬師岳と、1,041mの文殊岳からなる双耳峰で、安倍川の東、身延山地に属する。しかし、決して埼玉県に住んでいる人間が、わざわざ登りにいく山ではなかろう。私が関心を持ったのは、ネットでこの山のバッジを見てからだ。双耳峰の上を竜が飛んでいる図柄が、とても神秘的で、どうしてもこれが欲しかった。しかし、売っているかどうかは、いちかばちかの賭けだった。

  静岡市内から北に向かい、かなり山奥の平山という集落から、狭い山道を延々と登ってゆく。(日祝日以外は通行止めとの情報を、どこかで読んだ記憶もあり。)幸い対向車は来なかったが、逆に心細くなった。登り詰めたところが穂積神社で、鳥居前に駐車場があったが、私が一番乗りだった。普通の人は、この山は、もっと麓から登るようだが、私は、あるものは利用させてもらう。早朝7:30に着いた神社は、全く人気が無かった。「熊に注意」という立て札が、ちょっと私の登高意欲をびびらせる。しかし、トレッキングシューズを装着して準備をしているうちに、男女各1人が、熊鈴を鳴らしながら、麓から登ってきた。女性は神社に着いてからトイレに直行したが、私は男性の約50m後ろについて、登山道に入る。これなら安心。

  
       車道途中から仰ぐ竜爪山の双耳峰                     シンと静まり返っていた竜爪山穂積神社

  穂積神社は、戦時中、「たま除けの神」として信仰されていた。現在は平和の神、五穀豊穣の神として祭られているという。しかし、この山をなぜ「竜の爪」と呼ぶのかの由来が、どこにも説明が無いので分からない。麓から眺めた双耳峰が、竜の爪を表しているように見えたのだろうか?

  この日は、やや冷たい風が木々の梢を鳴らしていた。しかし天気は良好である。神社を出発してしばらく登ってゆくと、木製や鉄製の階段を延々と登るようになる。短時間で高度を稼げるので、効率は良いが、階段と言うのはなせこんなに疲れるのだろう。そんなことを考えながら登っていったが、理由が分かった(今さらかい?)。階段を登るのは、片足で自分の全体重を支えて持ち上げる時間が長く、その負荷もずっと大きいのだ。

  
          延々と続く鉄製の階段(息が切れる!)                  展望は何も無い薬師岳頂上

  雑木林の中の階段を延々と登っていった。ひどく息が切れるので、何度も息継ぎ休憩する。季節柄、汗はあまり出なかった。山頂が近づいて尾根道になったら、ひどく暗い杉林に突入したが、やがて薬師岳、標高1,051mの山頂に到着した。しかし、ここは何の展望も無し。展望を楽しむには、隣の文殊岳を目指す。

  一旦急斜面を下り、鞍部から少しだけ登り返せば、明るく展望の開けた文殊岳、標高1,041mの山頂だ。薬師岳から約15分。ここは展望が得られるように、樹木を伐採したような形跡も見受けられる。先客が2名だけいた。

  
           逆光に霞む駿河湾と静岡市街地                          文殊岳山頂にて

  眼下には、駿河湾と静岡市街地が、逆光の中に光っていた。そのためか、景色はひどく霞んだ状態だ。そして、富士山は、薬師岳の右側の中空に、まるでUFOのように浮かんでいた。背後の北面は樹林帯で、展望は得られない。

      
                       文殊岳山頂から見る富士山と薬師岳(左側)

  遠景は霞んで良く見えないものの、周囲の樹木が冷たい風を遮ってくれるので、晩秋の日差しはぽかぽか心地よい。ベンチやテーブルもあるので、ここでゆっくりと、いつもの山頂ひとり宴会を開催する。

     本日の山頂でのお供え物

  30分ほど、ゆっくりとひとり宴会を楽しんでいたら、次第に山頂には人が増えてきた。この山は、静岡市民にとっては、手軽かつ気軽なハイキング行楽地なのだろう。私は充分に楽しんだので、特等席をゆずるべく、下山にかかる。下山開始したら、続々とこれから登る人とすれ違った。山頂は大分賑やかになるだろう。

  穂積神社に下ったとき、真っ先に社務所に人がいることを確認し、神社に参拝するよりも先に、竜爪山のバッジを買い求めた。すごく、うれしい。これで、わざわざ埼玉県からやってきた甲斐があった。穂積神社にお礼の参拝をし、満足して帰途につく。

   
                         富士山は、スッピンよりも、この方が断然良い!
 

  「富士山は、嗅いでみるより、するがよい」

  すなわち、「富士山は、甲斐で見るより、駿河良い」という、山梨県の人には、ムカつく言葉だが、私にはどちらも甲乙つけがたい。客観的な人気投票をしたら、どちらに軍配が上がるのだろう。人口や人の往来量から言えば、東海道が通る駿河の方が、甲斐よりも数段勝るだろう。でも、私は埼玉県人で、山梨県は隣人でもあるし、自分自身の行動範囲も、山梨県の方が馴染み深い。だから、あえて言うならば、私は「嗅いでみる」方に、清き一票を投じましょうか。■

 

駿河の低山巡り行程

2010年11月26日(金曜)〜27日(土曜)
入間23:40 ==R16==八王子==(中央道)== 須走 == 2:00
十里木高原 9:20 --- 10:35 愛鷹山、越前岳頂上(1,504m) 11:05 --- 12:05 十里木高原 12:20 === ヘルシーパーク裾野で温泉入浴 === 静岡清水区西里温泉 === 17:50 静岡市、駿府天然温泉「天神の湯」宿泊

11月28日(日曜)
天神の湯 7:00 === 葵区平山集落 === 7:30
穂積神社 7:55 --- 8:35 薬師岳(1,051m) --- 8:50 文殊岳(1,041m) 9:15 --- 9:30 薬師岳 --- 9:55 穂積神社 10:10 === 10:50 静岡温泉美肌の湯 12:05 === R1 === 須走 === 中央道 == 大月 == R20 == 上野原 == 五日市 == 16:50 入間帰着

 

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