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Data No. 185


Data: 
登頂日: 2010年10月23日
地域: 静岡県・山梨県の県境
標高: 1,946m
天候: 快晴
同行者: 単独行


富士山の拝観所
 

天子山塊 毛無山

 



富士山に会いたくて

  「明日はこの秋一番の晴天になるでしょう」という天気予報を信じて、金曜夜に車で出発。中央道から富士五湖傍の国道139号をドライブし、朝霧高原のパーキングで、マイカーホテルに宿泊。暑くもなし、寒くもなし、車の中で眠るには一番快適な気候だ。

  星の見えない暗黒の夜空には、それよりも、もっと濃い漆黒の、ぞっとするほど巨大な三角形の魔物が、今にも地上の全てのものに圧し掛かって飲み込まんとするように、立ちはだかっていた。それはもちろん、富士山だ。

  紅葉の山を楽しむには、候補が幾つもあった。しかし、私は無性に富士山を見たかった。それも、なるべく近くで、しかも、まだ登ったことの無い山から...。それで、天子山塊の最高峰、毛無山(けなしやま)を選んだ。


急登連続の登山道

  夜が明けてから、他の登山者の車につられて、車を登山口近くの麓山の家の駐車場に進める。無人の管理棟には駐車は有料である旨が掲示されているが、支払い方法が不明瞭だし、他の車の登山者は完全に管理棟を無視している。私も、管理人がいる下山後に対処すればよいだろうと、登山の準備をした。

  6:55、駐車場を出発して平坦な車道を登山口へ進む。右手には目指す毛無山が聳え、左側には富士山がドカンと居座る。しかし、10月下旬だというのに、富士山は全く雪が無く、真っ黒な姿だったのに驚いた。この付近、昔は金がとれたのか、名残の採掘施設跡がある。

  20分ほど歩いただろうか、ようやく毛無山登山道入口に着いた。ところが、そのすぐ傍には、毛無山登山者用の広い無料駐車場があるではないか。なあんだ、20分も離れた有料かもしれない場所に停めて、損をした。 

  
          登山口付近から見上げる毛無山                     歩き始めは平坦な林道

  好天が約束されている登山は、決して辛くはない。山頂での大展望を楽しみに、せっせと頑張る。この山の登りは、かなり急登の連続である。しかし、危険な箇所はどこにも無く、ロープの設置された岩斜面も足場がしっかりしているし、ヒヤリとしたり、足がすくむようなシチュエーションも無い。ただ、木の根や枝を掴んで身体を持ち上げるような急登が頻繁なので、忍耐力は必要だ。

  登山道には、「一合目」、「二合目」と表示があり、辛い登りでも目安ができるので、ありがたい。私の足では、約15分が一合の目安となった。

           
                    二合目の上から眺める「不動の滝」
 

  登山の途中で、展望が楽しめるのは、二合目のすぐ上にあった、「不動の滝」展望台くらいだ。あとは、ひたすら樹林帯の中を登る。もう高山植物の花を楽しめる季節ではないが、毒をもつトリカブトがところどころに、妖艶な紫色の花を咲かせていた。

       
          ひたすら辛抱の登山道                         トリカブトが妖艶な紫の花を咲かせる

  麓山の家の駐車場にも、登山口の駐車場にも、かなり車が居たが、登山中は、ほとんど人に会わなかった。皆さんは別コースを登っているのだろうか。とはいえ、そんなにコースが幾通りもある山ではないのだが...。

  2時間あまりの急登との闘いのあと、九合目からは山頂稜線の緩やかな歩きとなり、鼻歌気分の快適散歩だ。
 

貸し切り状態の山頂

  約2時間半の労苦が報われ、9:20に毛無山、標高1,946mの山頂に立った。真正面には、見事なまでに均整のとれた富士山が、大きく裾野を広げて、私を迎えてくれた。いやあ、お久しぶりでございます。8月には、大変お世話になりました。

   実は若い頃は、私は富士山を好きではなかった。どこから見ても同じ姿だし、初めて登ったときは、あまりにも人出の多さに辟易し、山小屋も、地元管理者も儲けのことしか考えていない対応で、それらは全く富士山そのもののせいではないのだが、印象が悪かったのだ。

  しかし、関東埼玉県に長年暮らしていて、富士山が次第に好きになっていった。良く晴れた日に富士山が見えると、嬉しくて元気が出るし、気分が落ち込んでいるときに、思いがけず富士山が見えると、俄然心が明るくなるようになった。特に近年、契約社員として、2年間、自分に全く馴染めなかった会社への朝夕の憂鬱な車通勤途上、富士山が見えると、大いに元気をもらった。逆に富士山が見えないと、今日は良いことが無さそうだと、自分に暗示までかけてしまっていた。富士山は、私にとってパワースポットだ。

 
                     富士山様、こんにちは。今日はご機嫌うるわしゅうお見受けします!

  
                   中腹を横切る白い帯は、雲ではない。いったい、何の現象だろう?

  山頂は、私一人に貸切だった。私が到着後、途中で追い越した熟年男性がひとり登ってきたが、山頂に着いた途端、放尿をはじめ、その直後に、さっさと来た方向へ下山してしまった。彼は、いったい何しに頂上へ来たのだろう。

  毛無山という名前からして、私は樹木の無い草原状の山頂を想像していたが、違っていた。富士山方面以外は樹林帯で展望が利かない。この山の名前の由来は、私が想像したように、その昔は樹木が生えていないために「毛無山」と呼んだという説と、逆に樹木が生い茂っているために、木成山(きなしやま)と呼んだのが始まりだという、相反する説があるが、後者の場合だと、当てはめる漢字が間違っていると言わざるを得ない。

  ま、私にとっては、今日は富士山を拝めれば幸せだ。富士山を真正面に眺め、富士山とテレパシーで会話しながら、ゆっくりと、ひとり宴会をさせてもらう。持参したご馳走は、自分のためでもあり、富士山へのお供え物でもある。でも、お供え物は、こういう場所に残してきてはいけないんだよね。ちゃんと全部、富士山と一緒に飲み食いして、空にして参りました。 

   
                      毛無山頂上にて                        本日の憩いは富士山と一緒に

   私がひとり宴会を終える頃、熟年男性がひとり到着。挨拶を交わして、下山を開始した頃から、続々と登ってくる人とのすれ違いが増えた。この秋は、いつもこんなパターンだ。更に下ると、50人もの団体もいた。本当に早く登ってよかった。

  この山、山頂からは富士山方面(南東方面)しか見えなかったのだが、山頂稜線のある地点では、北西方向を見渡せる「北アルプス展望台」という岩があった。その岩によじ登ると、南アルプス〜八ヶ岳がきれいに眺められる。そして、北アルプスの稜線も、その背後にスカイラインを見せていた。

    
                               八ヶ岳連峰

    
                 南アルプス南部、左から赤石岳、荒川中岳、悪沢岳、右端が塩見岳

    
               上の写真から続く南アルプス北部。左から農鳥岳〜間ノ岳〜北岳と、甲斐駒ヶ岳〜鳳凰山

   展望は存分に楽しめた一日であった。アルプスの山々は、見えると本当にうれしい。しかし、今日に限っては、彼らの姿は、もっと至近距離に、どっかりと構えている、富士山の巨大さを、最大限に引き立てるものでしかなかった。山のボリュームには、あまりにも比べようの無い、圧倒的な差があった。 

    
                                 下山後に振り返る毛無山

  晴天に感謝し、往路を下る。急斜面の下山は、登り以上に足の筋肉への負担がかかる。麓に着いたときには、すっかりひざが笑っていた。そんな疲労は、富士山を眺められる気持ちの良い温泉に浸かって癒そう。■


行 程
10月22日(金曜日)
入間22:20 === 五日市 === 上野原 ==R20== 大月 ==(中央道無料区間)== 河口湖 ==R139== 1:10朝霧高原駐車場

10月23日(土曜日)
駐車場6:30 === 6:45
麓山の家駐車場 6:55 ---- 7:10毛無山登山口 --- 7:35二合目上、不動滝展望台 --- 8:15五合目 --- 8:55八合目 --- 9:20毛無山頂上(1,946m)10:00 --- 10:10北アルプス展望台 --- 10:45五合目 --- 11:55麓山の家駐車場帰着 12:05 === R139 === 紅葉台 === 13:30富士吉田、葭之池温泉14:30 === 中央道 === 大月 ==R20== 上野原 === 五日市 === 17:30 入間帰着

 


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