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Data No. 177


Data: 
訪問日: 2010年4月25日
地域: 山梨県
標高: 甲州高尾山 1,092m
          要害山 780m
天候: 快晴
同行者: 単独行


展望の
甲州高尾山

 武田家ゆかりの要害山


ぶどう郷を見下ろす山

  「甲州高尾山」なんて、つい最近まで、聞いたことも無かったし、何処にあるかも全く知らない山だった。昨年より、山バッジ展をご縁に交流が始まった「ポレポレ隊」のレポで、初めてその名を知り、私にも気軽に行けそうだということで、オリジナルバッジも譲っていただいた。そんなきっかけで、この「甲州高尾山」は、私にとって、いつかは登頂必須の山となっていた。

          
           甲州高尾山は、R20を甲府から東京方面に向かう際、勝沼付近でこんな風に見える山!

  甲州高尾山なんて、一体何処にある山だろう、と思っていた。調べてみると、私が頻繁に通過する国道20号線の甲州勝沼付近で、ぶどう郷を見下ろすように聳えている、いつも視界に入っていた山だった。決して目立つ姿でもなく、これまでは眼中にも無かったものだ。しかし、ポレポレ隊のレポを拝見すると、南アルプスや富士山の展望が素晴らしい。

  それで、快晴の約束された春の一日、早朝に自宅をでて、勝沼へ向かった。

  勝沼駅から、地図を頼りに車を山道に進めてゆく。「大滝不動」に駐車スペースがあるということで、狭い山道を進んでいくと、途中で管理員らしき人間が二人立っていた。通行止めでUターンさせられるのかと思って停車したら、そうではなかった。山火事を起こさないよう、入山者にティッシュペーパーと注意書きのチラシを配布していたのだ。聞くと、大滝不動までは車で行っても大丈夫とのことで、安心して車を進める。しかし、対向車が来たらすれ違える道幅は無い。

  延々と続いた狭い林道は、大滝不動で通行止めのゲートがあった。ここで車を停めて、ハイキングに出発する。
 

荘厳な不動尊と名瀑に感動

  「大滝不動」なんて、どうせしょぼくれた山の中の建物だろうと思っていたが、どうしてどうして、立派な佇まいだ。急な石の階段を登って行くと、急峻な崖から、数段に渡って滝が流れ落ち、それを背景に立派な神社が鎮座している。しかし、どこにも人の気配は無い。

  
      立派な大滝不動と数段に渡って落ちる滝(光線の具合から、下山時に撮影したものを掲載。)

  不動尊に本日の晴天を感謝して参拝し、右手からはじまる登山道に踏み込む。

  山道は歩きやすく、決して危険箇所もない。山ツツジが、まだ冬枯れの森をハッとするほど鮮やかに彩り、枯葉をサクサク踏み締めて歩く道は快適だ。

          
                   新緑がやっと芽吹き始めたばかりの山肌を、山ツツジが彩る

  道標にしたがってゆくと、登山道はほどなく稜線に出て、幾つかのピークを越えて甲州高尾山に続いている。稜線に出てしまえば、甲府盆地と南アルプスや富士山の展望が、ずっと付き添ってくれる。稜線の左下には林道が走っているが、マイカーは通れない道だ。

  
                      甲府盆地と南アルプスを眺めながら、明るい稜線を歩いて行く

  登山口の大滝不動は、勝沼からかなり奥に進んだ山奥だったが、そこから甲州高尾山へのコースは、再び勝沼駅(甲府盆地)方向へUターンするような登山道だった。また、甲州高尾山自体は、今日歩いたコースの最高点ではない。到着するまでに越えた幾つかのピークの方が明らかに標高が高い。「山高きがゆえに尊からず」。標高よりも、展望の良い山、容姿の優れた山の方が尊ばれるということか。これって、人間でも同じかしらん?
 

展望を独り占めの山頂

  途中、2組のカップルに出会っただけで、極めて静かな山旅だった。そして、マイカーで大滝不動まで入れたので、あっけなく、申し訳無いが、1時間もかけずに甲州高尾山頂上(1,092m)にたどり着いてしまった。

   山頂の記念写真は地面にカメラを置きセルフタイマーで 

  誰も居ない山頂だった。富士山や南アルプスの展望は、私が独り占めした。一人の場合、誰にも自分の感動を邪魔されない代わりに、誰とも感動を分かち合えない。まあ、どっちが良いのか...。

   
              どこか遠い世界の山のような崇高な富士山

                     
                               甲府盆地の上空に浮かんでいるような南アルプス

  甲府盆地真上の碧空のど真ん中に、純白のスカイラインを引く南アルプス連峰、周囲の低山を圧して、格違いの高度と風格を持って聳える日本一の富士山。そんな大パノラマ世界の一部に、しばし自分自身を置いてみよう。
 

武田家ゆかりの要害山へ

  この日は、まだ時間が早いので、甲府まで足を延ばし、武田家ゆかりの「要害山」も訪れる。甲府市街地から武田神社を過ぎ、山中の積翠寺温泉に向けて車を進める。

  「要害山」は、武将武田信玄の父、武田信虎が1520年に要害城を築いた山城であり、甲府盆地を見下ろす(見守る)ように聳える山。麓には積翠寺温泉があり、信玄公の隠し湯と言われている。標高は780mで高くはないが、温泉とともに一度は行ってみたかった場所なので、これを機会に足を伸ばした。

        
                           春の花に彩られた要害山全容

  要害山は、山桜、ヤマブキ、ツツジなど、春の花に彩られて佇んでいた。積翠寺温泉「要害温泉」の敷地から、山へ踏み込む。静かな、他に誰も歩いていない山道の各所には、「曲輪跡」、「土塁跡」などの案内板があるのだが、はっきり言って、そう言われてみても、もはや何の面影も感じられない。

            
                           登山口にある要害山見取り図

  山頂へは30分もかからずに到達する。その山頂のみ、過去に居城があったことを偲ばせる平地になっていて、「武田信玄公生誕の地」という碑が立っていた。桜の花が咲いていたが、こんな快晴の週末でも、誰も居ず、誰も訪れた気配がない。「兵どもが夢の跡」は、あまりにも寂しいものだった。白い桜の花が、私には武田家滅亡の侘しさを、むしろかき立てるようなものに見える。

  
         居城跡の平坦な山頂に咲く桜                    武田信玄公生誕の地の碑

  下山後は、要害温泉で一日の汗を流す。露天風呂は、甲府盆地を気持ち良く見下ろせる庭のような造りで、湯加減もぬるめで快適そのものだった。しばらくぶりの山歩きだったので、私の両足はとても疲れていた。時間をかけて、ゆっくりと湯と展望を楽しんだ。過去に武田一族からここで見守られた古府中(現甲府市)の街は、数世紀を経て、大いなる繁栄を謳歌していた。■

 

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