本白根山のコマクサ - 見事に復活した花畑
草津本白根山を初探訪したのは、今から19年前、1989年7月22日で今回と同じ時期。その時は、コマクサなど、ほとんど見なかった。本白根山の山頂稜線付近で、自然監視員のおじさんが、地元でコマクサ群落を復活させるために人工的に増殖を図っているのだと、そして心無い人々が盗掘してしまうのを防ぐために監視しているのだと説明してくれた。
以来、この本白根山は春、夏、秋を含めてもう両手では数えきれないほど訪れただろうか。
コマクサに関して言えば、2年前、初めてその見事に復活した群落を見た。一円もお金を落とさないハイカーや観光客の為に心血注いだ地元の人々の熱意には敬服するばかりである。そんな高山植物の女王コマクサを、もう一度見たくて、FKさんと今年もやってきた。
ハイシーズン中はマイカー乗り入れ禁止となる本白根山登山口へ行くには、草津白根火山駐車場から無料シャトルバスが出ている。しかし、片道1キロ強の水平道くらい歩いても良かろう。登山口からは片道350円のリフトが出ている。しかし、すぐそこに見える鞍部まで、僅か15分程度ならば自分の足で登っても良かろう。
鞍部まで登ると、一旦緩やかな下りとなり、やがて古代競技場のような巨大な本白根山の旧火口のくぼみの縁に出る。そこから「古代競技場」の観客席をトラバースするように歩道が設けられていて、その両側がコマクサの群生地である。

本白根山の火口の彼方には浅間山が。 コマクサが咲き誇る斜面

濃いピンクや淡いピンクのコマクサがガレ場に咲き誇る
まだ早朝の登山道には多くのカメラを抱えたハイカーが熱心にコマクサを撮影している。我々も、斜面の上から、斜面の下から、濃いピンクの花、淡いピンクの花など何度でも、何枚でも撮りたくてしばしば立ち止まってしまう。下を向いた可憐な花びらはつつましく美しい。

コマクサはこんなガレ場の環境で咲く 本白根山の緑一杯の旧火口
コマクサを愛でながら、本白根山山頂稜線を歩き、ほど良い所でアウトドア・ブランチとする。絶好の快晴に恵まれて、北アルプスも、上越国境の山々も良く見える。桃源郷の中での食事は、それはそれは美味しいものだ。
たった一つだけ気になるのは、2年前には確かに山頂稜線に咲き誇っていた黄色や白や青の他の高山植物の花畑がほとんど消えていたことである。それらがコマクサの花畑に変っていたのだ。コマクサというのは、解説によると他の植物との共生が出来ないらしい。従って、コマクサならばコマクサだけの群落を作るが、他の黄色や白や紫の花々などのカラフルな花畑では共生することが出来ない。しかし、コマクサには他の植物を駆逐するほどの生命力があろう筈もなく、それゆえに地元の人々が長年、丹精を込めてコマクサの群落を復活させたのだろうが、他の高山植物の花畑をも人為的にコマクサだけの花畑にしてしまったのだろうか。これだけが大きな疑問として残った。

弓池と白根火山 弓池の畔はワタスゲが可憐に彩る
昼近くなると、どっと人出が増した。団体客も続々とやってくる。それを潮時に我々は腰をあげる。帰路、白根火山駐車場近くの弓池の畔で、ワタスゲの群落をゆっくりと鑑賞した。
この日は、エアコン要らずの志賀高原、発哺(ほっぽ)温泉で、のんびり身体を休める。
野反湖のニッコウキスゲ群落
快適な志賀高原で一夜を過ごした後の7月20日は、群馬県六合(くに)村の野反湖(のぞりこ)を探訪する。しかし、大して期待をしていたわけではない。道中、対向車の多いのに、やや辟易しながらドライブした。しかし、その対向車の多さは現地について大いに納得したのである。
野反峠の駐車場に車を停めて外の景色を眺めて、思わず息を呑んだ。湖へと緩やかに傾斜する緑の草原に、ニッコウキスゲが大群落を作って咲き誇っていたのだ。やや雲の多い天候だったが、喜び勇んでリュックサックを背負い、湖畔へ向けて斜面を下ってゆく。

野反湖とニッコウキスゲの群落
野反湖の湖面に下る斜面にはニッコウキスゲの他に、紫のカキツバタ、ピンクのシモツケソウ、ハクサンフウロなど実に様々な花が咲いていた。その華やかな花畑は、湖畔の湿原に降りてみると、最高潮に達していた。大自然が織り成すフラワーアレンジメントだ。

湖畔のニッコウキスゲの大群落 ピンクのシモツケソウ(?)

トラノオとキスゲの大群落 花一杯の斜面
デジカメ時代はうれしい。昔のフィルムカメラだったら、フィルムの残り枚数をいちいち気にしながら写真を撮ったものだが、デジカメはフィルムも現像代もプリント代も全く気にせず、失敗を恐れず、バンバン撮りまくることができる。気に入らない写真をプリントされることもない。この二日間で写真は180枚も撮影した。え、その割りに大した写真が無いって?すみません、私の実力ですから、放っておいてください...。
花に酔いしれて、野反湖の湖畔でランチタイムを楽しむ。そして周遊コースを駐車場に戻り、また暑苦しいが梅雨のようやく明けた下界に下り、日常生活に戻る。
花に思い切り囲まれた二日間だった。夢を見ているような二日間だった...。■
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