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Data No. 163

Data:
登頂日: 2006年11月25日〜28日
地域&標高: 
由布岳(ゆふだけ): 大分県、1584m (霧)
鶴見岳(つるみだけ): 大分県、1375m (霧)
英彦山(ひこさん): 福岡・大分、1200m (小雨)
涌蓋山(わいたさん): 大分県、1500m (曇後晴)
登頂時年齢: 52歳
同行者: 単独行


大分の山々

 由布岳・鶴見岳
 

 英彦山・涌蓋山


  山があってもやまなし県、すべってころんでおおいた県...。子供の頃は、他愛も無い語呂あわせでケラケラ笑いながら揶揄した地名であったが、山登りを楽しむようになってからは、とても気に入った地域になっている。

  5年ほど前に大分〜熊本にかけての「やまなみハイウェイ」周辺の山旅を絶好の快晴下に楽しんだ。今回、ある航空会社で貯めたマイルの消化に、再び大分の地を選んだ。今回ハイライトにした由布岳は、最近あるTV局のドラマ(私は一度も見ていないが)の舞台になったという湯布院温泉の背景として聳えるスマートな山だ。前回、九重連山から、すっくと双耳峰を天に突き上げる由布岳の姿を見て、いつか是非登ってみたいと思っていた。


11月25日(土曜)  日本アルプスを眺めながら大分へ

  目的地の天気予報は雨であったが、この日のフライトでは素晴らしい日本アルプスの展望を楽しんだ。飛行ルートは羽田離陸後、甲府盆地〜南アルプス〜琵琶湖の上を通過する。富士山はもとより、北・南・中央アルプスも、越後の山も、加賀の白山も驚くほどクリアな空気の下に佇んでいた。しかし、機内で山を見て喜んで写真まで撮っているのは、私一人だけ。旅慣れた(?)他の乗客は景色には全く関心を示さない。

   
 一番手前の聖岳から南アルプス全山が見渡せる     長野県飯田市上空からの中央アルプスと北アルプス

  そんな素晴らしい景色が楽しめたのは琵琶湖上空までで、そこから西は次第に雲が下界を隠すようになってしまった。

由布岳・鶴見岳を登頂

  国東半島にある大分空港到着後、すぐにレンタカーの軽自動車で別府を目指す。幸い雨はまだ降っていない。小雨程度ならば、せめて念願の由布岳は登ってみたい。登山口までのドライブ距離の長さが、じれったい。別府からやまなみハイウェイをぐんぐん登り、11:40に由布岳正面登山口到着。山は雲の中で全く見えないが、すぐに雨が降り出しそうな陽気でもない。駐車場には驚くほど多くのマイカーが停まっていた。

    
            正面登山口付近の草原                      比較的歩きやすい登山道

  登山口から緩い傾斜の草原を登って行き、しばらくするともうほとんど落葉した樹林帯の中を登る。ガスで景色は全く見えない。私の登山開始が昼ちょっと前なので、下山者とのすれ違いが多い。合野越という地点を過ぎると傾斜が増し、道は大きなジグザグになる。登山道はよく整備されている。ジグザグの道は向きによっては薄日も射すような明るさだったり、冷たい風と霧滴が吹き付ける薄ら寒い雰囲気になったりを交互に繰り返した。それでも道も良いので楽観的な気持ちで西峰と東峰鞍部のマタエに着いた。由布岳の最高点は西峰なので左側に進路を取る。そこからはすっかり岩山の様相になる。

  途中すれ違った夫婦が、「とても写真どころじゃなかったな」と呟いているのが聞こえた。その時点では、意味が分らなかったが、それは西峰を登るに連れて分ってきた。険しい岩峰はガスにまかれて冷たい風にさらされていた。そして慎重に登って行くと最初の鎖場。それを越して更に痩せた岩稜を辿ってゆくと、垂直的な黒い岩場に銀色の長い鎖がかかっているのが見え、更にその上は岩場をトラバースするように鎖が付いている。そして帽子を飛ばさんばかりの強風。この時はさすがにビビった。もう止して下山しようかと思った。それでも折角ここまで来たのだから、と岩壁に取り付く。いつになく鎖を握る手と肩に力が入り、おっかなびっくりで何とか難所を通過。そして更に痩せた稜線を渡ったところが由布岳西峰、標高1,584mの頂上であった。登山口から1.5H、13:15到着。山頂は誰もいず、展望は何も無く、山頂標識が風に揺れていた。記念写真を撮ろうにも誰もいないし、強風でタイマーをセットするどころではない。標識前で思い切り腕を伸ばしてカメラを逆に構え、登頂証拠写真を撮った。

   
    強風でかなりビビッた岩場                 寒々とした由布岳山頂

  長居は無用。また、おっかなびっくり危険箇所を慎重に下り、鞍部に戻る。他の登山者は、よく知っているのか、西峰を敬遠して、東峰に登ったようだ。ガイドブックにもそのようにアドバイスしてある。何はともあれ「また無謀な中高年が遭難」などという記事のタネにならず良かった。帰路も飛ばして、14:20に登山口帰着。

  由布岳の隣にある鶴見岳ロープウェイ乗場へ車で移動し、ロープウェイを使って山頂を踏む。途中まで別府の湯煙と別府湾が見えていたが、1375mの山頂部はすっかりガスの中。山腹は鮮やかな紅葉に染まっていた。私は登山記念バッジを買ったので、あえてこんな天気でも登頂してしまったが、他に大勢いた観光客は何を期待してこのような天候のときにお金を払ってロープウェイになんか乗るのだろう。まあ、お互い様で、大きなお世話か。

                
    RWのチケット。晴れていればこんな景色。               残念ながら、今日はこんな天気...

  下山後、城島後楽園温泉で汗を流し、この日は大分市内のカプセルホテルに2500円で宿泊。


11月26日  懐かしい九重の温泉巡り

  この日はすっかり雨模様。大分市からR442〜竹田を経て九重の山並みに向かう。やまなみハイウェイを登りつめ、牧ノ戸峠ドライブインで山バッジを数個購入。そして噴煙や湯煙が立ち上る九重温泉郷へ下ってゆく。星生(ほっしょう)温泉、九重まきばの湯、岳ノ湯温泉、黒川温泉などを探訪した。中でも一番私好みだったのは、星生温泉であった。湯は白濁して硫黄の香りが漂う。硫黄泉の他に、数種類の泉質の露天風呂が広い敷地内に配置されている。最近関東周辺で流行りの地下数千メートルから無理矢理汲み上げた加熱湯ではなくて、正真正銘、大地の恵みの湯だ。

  湯巡りをしながら、雨に煙って見えない九重の山々の追想に浸った。この九重連山は、これからも機会があれば、何度でも訪れてみたいところだ。人気も絶大で、やまなみハイウェイは、通行車両がとても多い。

  この日は宝泉寺温泉で、アパートの部屋のような旅館に朝食付2,800円で泊った。温泉大浴場は素晴らしく、施設は古くても清潔で、かなりお値打ちの宿である。夕食は豪勢なコンビニ弁当と缶ビール、じゃなかった発泡酒をコタツに入って、テレビを見ながらのんびりと。

   アパートのような造りの宝泉寺温泉の安宿


11月27日  英彦山登頂

  朝食後すぐに車を出す。夕べ見た予報では今日は「曇後雨」、今朝見た予報では「雨後曇」、実際には朝から晩までずっと雨。本当に天気予報というものはでたらめだ。

  R210沿道には渓谷に沿って様々な温泉がある。天ヶ瀬温泉、日田温泉をはじめ、日帰り温泉が各所にあるので、私のような温泉フリークにはたまらない。しかし、今回の大きな目的は英彦山(ひこさん)登頂なので、往路はそのまま通過し、日田から山越えをして福岡県に入り添田町の英彦山神社前に11時過ぎに到着。

  英彦山は、越後の弥彦(やひこ)山、兵庫県の雪彦(せっぴこ)山と並び、日本三彦山のひとつに数えられている。だから、参拝客でいつも賑わっている越後弥彦神社の雰囲気を想像して到着したが、あまりの寂しさにびっくりした。平日で、雨が降っているせいもあるが、観光客も参拝客もほとんど姿が見えない。参道には土産物屋がたった2軒あるのみで老婆がヒマそうにしていた。それなのに駐車場は有料だ。2時間毎に300円とのこと。係員から山頂まで片道1時間半から2時間だと聞いたので順当で600円が必要だが、ここはひとつ、自分の普段のエクササイズの成果を試してみる。

  
      全く人気が無かった英彦山神社泰幣殿                   英彦山中岳山頂にて

  参道の階段の上りはとても苦しいが、もみじの落ち葉が石段をカラフルに彩っていた。英彦山神社泰幣殿を先ずは参拝し、登山道に入る。登山道もずっと階段状が続く。苦しいので、脇の土の上を歩いたほうがマシだ。杉林に囲まれた登山道はいかにも神社境内らしい。有難いことに、上に登るに連れて雨は弱くなり、いくらか明るさも増して、途中で傘はザックの中に片付けた。途中4〜5名のハイカーとすれ違ったが、この英彦山の中岳山頂(標高1200m)も全く無人だった。山頂神社は拝殿も閉まっていて、賽銭を上げることも出来ないので、合掌だけで節約させてもらう。麓から1時間5分で到着。駐車料金節約の望みが出てきた。ガスで何も見えない山頂神社前でサンドイッチをお茶で流し込み、写真をタイマーで撮って、10分後に下山開始。天気の悪い日の下山はもう何の興味も無い。すっ飛ばして、往復1時間55分で駐車場に帰着したら、係員に本当に山頂まで行ってきたのかと驚かれた。浮いた300円は温泉に浸かって発泡酒でも飲もう。麓はずっと雨だったそうだ。

  下山後は町営しゃくなげ温泉で汗を流し、往路を戻り、夕刻湯布院温泉に到着した。ここではあらかじめネット予約しておいたレトロな雰囲気の宿に2食付7,350円で投宿。食事も湯もかなりハイレベルだった。最後の日だから、思い切って奮発したのだ。エッ?ちっとも奮発してないって?ほっといてください。

(筆者注: 「ゆふいん」は「湯布院」とも「由布院」とも書くようだが、一体どのように使い分けするのか私には判らない。)


11月28日  涌蓋山登頂

  この日の予報も雨だったが、朝目が覚めてみると青空が広がっている。そしてテレビをつけると予報は晴れマークに変っていた。俄然元気が出て、朝食を一番に済ませ、すぐに車を出す。

  九重連山へ再びやまなみハイウェイを飛ばし、九重筋湯温泉の駐車場に車を置く。目的は涌蓋山(「わいたさん」と読む。また「湧蓋山」とも書くようだ)の登頂だ。私自身はこの旅を計画するまで全く知らない山だったが、横浜のN氏にバッジのある山として教えてもらい、資料を調べたら、九重連山の展望台であり、山頂の眺めが良く、比較的短時間で登れるということで、可能であれば登ってみようと思っていたのだ。これまでの3日間、麓から姿を見ることの出来たのはこの涌蓋山だけだった。おっとりとした山容だが、山頂部はすっくと立っていて、九重連山からは独立した名峰である。

  天気は快晴とまではならず、九重連山も山頂部は雲の中だ。そして涌蓋山も山頂部が見えたり雲に隠れたりしている。筋湯温泉から渓流の橋を渡って登山道に入る。樹林帯はほどなく切れて、ゆるやかに起伏する草原を登ってゆく。初めて晴れたし、鬱蒼とした道ではないので気分は爽快だ。この日も、なるべく早く下山してゆっくり温泉に浸かってから帰りたく、早足で歩く。

  南側から連なる稜線付近に出ると、そこは広大な牧場になっていた。黒い牛達がじろりと私を監視している。牧場があるので、車が通れる道もある。しかし、登山者は使えない。稜線の鞍部、涌蓋越から進路を右に取り、涌蓋山本峰の登りが始まる。冬枯れの山肌には盆栽のような緑が点在しているが、これが6月頃には、山肌をピンクに彩るミヤマキリシマなのであろう。この花が咲く頃に一度は訪れてみたいものだ。

   
    こんもりとした涌蓋山(わいたさん)の全容          盛んに湯煙を上げる九重筋湯温泉と九重連山方面

   
   シーズンにはミヤマキリシマでピンクに染まるであろう山腹          涌蓋山山頂にて

  山頂部は雲の中になってしまい、登り詰めて山頂だと期待したところはまだ手前のピークだった。気を取り直して更に15分程登りつめた所が、標高1500mの涌蓋山頂上だった。山頂はとても広い草原状だ。またまた誰もいない。今回は4つの山の頂に立ったが、いずれも私に貸切だった。麓の景色が見えたり隠れたりする。時間さえあれば、ゆっくりして展望が開けるのを待ちたいが、今日は時間に余裕が無い。タイマーで写真を撮って、お茶を飲み干し、また早足で下山開始だ。

  しかし、この私めが一体どうしたことか、飛ばしすぎたのが裏目に出て、何処かの分岐で道を間違えて、見覚えの無い車道に出てしまった。そして、どうせどこかでまた案内標識でもあるだろうと甘く期待して深みにはまり込んだ。結局、延々と遠回りの車道を最後まで歩くはめになり、途中出合った林道の作業員から筋湯温泉には行ける道であることを聞いて走りに走った。それでも、結局は30分もロスし、全身汗でぐっしょり。まあ、ダイエットには良かったか...。

最後に姿を見せてくれた由布岳

  汗まみれのまま車に乗り込み、空港までの時間を読める場所まで行ってから湯に浸かろうと思い、湯布院温泉に戻る。うれしいことに、そこで初めて双耳峰の由布岳がその全貌を私に見せてくれた。3日前に、私を登らせまいとガスと強風で威圧したネコの耳のような岩峰は、麓から見ても魔王の住む岩山のようであり、その尖った黒い耳を雲の下すれすれにまで突き上げていた。

  
     最後に姿を見せてくれた双耳峰の由布岳                    由布岳を眺めながら汗を流した由布岳温泉

  やや消化不良になりかけた山旅だったが、何とか目的の4山を登頂したし、最後に由布岳が姿を見せてくれたことで、妙に満足してしまい、頭の先から爪先まで湯布院の湯で洗い流してサッパリした後、大分空港で、たった一人慎ましく祝杯を上げた。そういえば、ほとんど他人と口をきかなかった4日間だった。■

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行程:

11月25日(土曜)
入間市5:30出発 ==(西武、JR、京急)== 7:00羽田空港 8:15 ==(JL-1783)== 10:00大分空港10:40===(レンタカー)== 11:40
由布岳登山口11:45 --- 13:15由布岳山頂13:20 --- 14:20登山口14:30 === 14:40鶴見岳RW (15:00発のRW利用で山頂往復)16:00 === 16:10城島後楽園温泉16:55 === 18:25 大分市の温泉付カプセルホテル、大分クレインホテル宿泊

11月26日(日曜)
大分8:30 === 竹田 === 10:30牧ノ戸峠10:35 === 10:40星生温泉11:25 === 11:35九重温泉まきばの湯12:05 === 13:00黒川温泉14:00 === 14:35岳ノ湯温泉15:20 === 16:25宝泉寺温泉、「たから温泉」宿泊

11月27日(月曜)
宝泉寺温泉8:25 === 日田 === 11:00高住神社 ===
11:20英彦山神社駐車場(泰幣神社参拝、中岳山頂往復)13:20 === 13:30しゃくなげ温泉14:00 === 15:35湯ノ釣温泉16:00 === 16:55 湯布院温泉「いよとみ荘」宿泊

11月28日(火曜)
湯布院8:30 === 9:40
九重筋湯温泉9:45 --- 11:00涌蓋山(1500m)11:10 --- 12:30筋湯温泉12:35 === 13:30湯布院、由布岳温泉14:00 === 14:45レンタカー返車し大分空港16:15 ==(JL-1792)== 17:35羽田空港 ==(モノレール、JR、西武)== 20:00入間市、帰宅

  

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