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 Data No. 160

 

 

花の森吉山

 


データ:
 登頂日: 2006年7月2日
 標高: 1,454m
 場所: 秋田県
 天候: 小雨   (登頂時年齢:52)



遠い遠いマタギの里

  秋田市内でレンタカーのカーナビをセットし、指示されたとおりに高速道路を飛ばし、一般道も時速70km以上でスイスイ走っても、阿仁スキー場までは、しっかりと1時間30分以上かかった。秋田市そのものが決して大都市でもないし、これだけ奥地のスキー場に、冬になったら本当に客が来るのだろうかと無用な心配をしてしまうほど、阿仁は山奥だった。こんな山奥でも、しっかりと人間の生活がある。そう、この近辺は、狩猟民マタギの里なのだ。

  到着の30分くらい前から注意したが、スーパーも無ければ、コンビニも無い。山頂で食べるランチや飲み物も買えずに阿仁スキー場ゴンドラ乗り場に着いてしまった。身体にまとわり付くような小雨が降っている。しかし駐車場にはかなりの車が停まっている。係員に花の咲き具合を尋ねたら、今が見頃だとのこと。しからば、森吉山にあえて登頂はしなくても、花畑の見物だけでも行ってくるかと、雨具を装着してゴンドラに乗り込んだ。

  随分距離の長いゴンドラだった。たっぷり15分乗車しただろうか。雨降りながらも、意外と遠望は利いていて、見渡す限り原生林におおわれた周囲の山々が水墨画のように眼下に広がる。人里は全く見えない。昔はこの山々をマタギが、熊を追い、鹿を追い、自由自在に闊歩して、自給自足の生活を営んでいたのだろう。まあ、いずれにしても、よくもこんな奥地にこんな立派なゴンドラを架けたものだ。このゴンドラの経営者は私が住んでいる町を走る私鉄会社系列だ。



期待を裏切らなかった花畑

  ゴンドラ山頂駅から、折畳み傘をさして歩き始める。既に背の低い灌木帯を歩くので、場所によっては風に傘が煽られる。高山植物の花は、歩き始めてすぐに現れ始めた。イワカガミ、シラネアオイ、タニウツギなどが雨に煙った登山道に花を添える。道は石森という小ピークを過ぎ、避難小屋のある付近まで来ると、行く手に膨大な原生林に包まれた森吉山の斜面が見えてきた。人間世界の臭いを全く感じさせない緑濃い山である。今の季節の花も素晴らしいが、秋の紅葉もそれは見事なものだという。

  
         歩き始めてすぐに現れたシラネアオイ                      タニウツギの花

  
        山頂付近にはまだこんな残雪も                       広大な原生林に包まれた森吉山


  高山植物の花は、避難小屋を過ぎて、森吉山本峰への緩やかな登りの途中で更に華やかになる。緩やかな山の斜面にはところどころ湿原があって、水芭蕉も咲いているし、チングルマや濃いピンクのウラジロヨウラクなども姿を見せる。そして、山頂に近い「稚児平」という付近が一番の花畑であった。白い花、赤い花、紫の花などがカラフルに地面を彩る。天気の悪いのが本当に残念だ。カメラのファインダーを覗いても、肉眼で見るほどにはきれいに写らないし、雨の中でカメラを構えるとすぐに濡れてしまい、写真を撮るのも一苦労だ。

  こんな天気だから、山頂を目指す人は少なかろうと思っていたが、なんのなんの、思った以上に人の数は多かった。数十人の団体もいる。雨の森吉山山頂は大賑わいであった。標高1,454m。決して高い山ではないが、本州の中部山岳よりも1,000m以上低い標高で、立派な花畑があるので人気もうなずける。ゴンドラ駅から標準タイム90分のところ、50分で到達。何の展望も無い山頂で、一枚だけ「証拠写真」を撮ってもらい、すぐに下山を開始した。

  
       ウラジロヨウラクの花                              山頂直下、稚児平付近の花畑

    
          視界ゼロの森吉山山頂で                          イワカガミ

  帰路は飛ばしに飛ばし、先行の団体客などをほとんど追い越して、30分強でゴンドラ駅に着いた。そして、下りのゴンドラでは、たった一人でゆっくりと余韻を楽しむ。これから山を目指そうという夥しい数の団体客を目にした。可愛そうに、雨はそれから本降りになっていった。

  下山後は、車を進めて打当(うっとう)温泉「マタギの湯」で汗を流す。この温泉センターでは熊肉料理や鹿肉料理も味わうことが出来て、そばにはマタギ資料館もある。興味のある人にはお奨めのスポット。

  森吉山の詳細は、地元のHP、

 http://www.town.moriyoshi.akita.jp/site/climb/climb.htm 

を参照されたい

  尚、秋田まで行くのはJRでも飛行機でも交通費が大変だし、ドライブするのも相当な気力・体力が必要だが、JR東日本が期間限定で満00歳以上の会員にだけ提供する3日間の激安乗り放題パスを利用すると、ごく気軽に行って来れます。森吉山はまた機会があれば、鮮やかな紅葉を愛で、そして、マタギが闊歩した美しい原生林におおわれたこの山を、晴天下でじっくりと眺めてみたい。■

 

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