山に呼ばれて山歩き Home

日本全国の山ある記

山のバッジギャラリー

ぶらり旅行記

ふるさと讃歌 十日町

お奨めリンク集

Data No. 121

 データ:
 登頂日: 1989年11月4日
 標高: 1,172m
 場所: 新潟県
 天候: 晴れ
 登頂時の年齢: 35歳
 同行者: 姉夫婦

 

佐渡島
 

ドンデン山 ・ 金北山

 



  姉夫婦が佐渡に住んで3年目、義兄の任期が終る来年は本土に戻るとのことで、彼らが居る間に、かねてから話のあった佐渡島の最高峰、金北山に登ろうということになった。

11月3日(金曜)  

【佐渡へ佐渡へと】

  上野7:36発、上越新幹線スーパーあさひ1号は、僅か1時間40分で新潟に到着。佐渡汽船乗り場から12:05の両津行フェリー「こさど丸」に乗る。波静かな日本海を渡り、佐渡が近付くと、船内には佐渡おけさのメロディーと観光アナウンスが流れる。デッキに出てみると、大佐渡山脈がボーッと浮き出ていた。今回は、あの一番高い山に登るのだ。船内には観光客、釣り人、家族連れなど様々な人々が乗っていて、迫り来る佐渡島に見入っている。14:25、両津到着。姉夫婦の迎えを受ける。
 

【好天のドンデン高原】

  天気が良いので、車でドンデン高原に案内してもらう。両津を離れ、急な狭い道をぐんぐん登ると、眼下に両津湾の景色が箱庭のように展開する。900mばかりの山であるが、海抜0mから登るので、その高度感は素晴らしい。快晴の今日は、佐渡海峡を隔てて越後の山々が良く見えている。

      尻立山からの大佐渡山脈の山々

        両津湾と加茂湖を見下ろす。 

  ドンデン高原の最高峰、尻立山(934.2m)に登る。芝生に覆われた心地良い山頂だ。なだらかにうねる稜線は島とは思えない程。山の下に見えるドンデン池と野営場に足を伸ばすことにしたが、義兄はわざわざ車を回送してくれた。キャンプファイアーの跡が点在する高原は、今は全く人気が無く芝生の草原はうら寂しい雰囲気だ。姉達の話では、ヘビが多い場所だそうだ。

  車で外海府方面に下り、海岸をドライブし佐和田の姉夫婦のアパートに行く。その夜は姉の手料理をたらふくご馳走になる。

11月4日(土曜日)  

【佐渡最高峰、金北山登頂】

  快晴だった昨日に比べて、今日の空は一面灰色の雲に覆われている。しかし、予報ではそれ程崩れる気配は無いらしい。折角なので、予定通り佐渡島最高峰、金北山登山を決行する。

  朝食後、佐和田を出発。大佐渡スカイラインをドライブ。このスカイラインは過去2度通ったが、全く島とは思えない山岳道路だ。このスカイラインのほぼ最高地点に「白雲荘」というホテルがある。ここが金北山の入口だ。

    
                
         自衛隊の敷地内の車道を登ってゆく。時折、自衛隊の管理車が通るのみ。

  登山道といっても、この山一帯は自衛隊の敷地になっていて、むやみと一般人が入れない。その為、義兄が事前に問い合わせしてくれた。自衛隊のゲートをくぐった後、頂上まではずっと砂利道の車道を歩く。時折自衛隊の車や工事のトラックが通るだけで、我々の他に登山者は無い。車道歩きなので、息が切れるような急坂は無い。途中、背後から登ってきたジープが我々の姿を見て停車し、乗っていた自衛隊員に「何処へ行くのか」と尋ねられた。我々の格好を見ればハイキングだということくらい一目瞭然なのに...。「ソ連大使館から来ました」とでも答えたら、彼らはどんな反応を示すだろう、などと冗談を言いながら歩く。この佐渡島という場所は、国防にとってかなり重要な場所らしい。ソ連が日本を攻める場合、一番最初に占領されるのが佐渡島だ、なんて説もある。

  すっかり樹木の葉は落ちてしまい、枯葉が足元でカサカサ音を立てる。冬の近いことを感じさせるように冷たい風が吹き、汗はほとんど出ない。曇天ながらも視界は結構利いて、足元には日本海の白波が良く見える。行く手に、一際高い金北山のレーダードームが雲の切れ間から姿を見せる。

           
      金北山神社の鳥居                                    神社はレーダードームにはさまれて鎮座

  一所懸命歩くこと約一時間半、漸く無人の宿舎のような建物を通り過ぎ、鳥居をくぐる。コンクリートの階段を登りつめると、レーダードームと筒のような建物に挟まれて、金北山神社が鎮座していた。金北山の標高は1,171.9mで、対岸の弥彦山よりもずっと高い。神社に参拝し、神社前で姉が作ってくれた弁当を食べる。幸い、雲が時々切れて陽射しが身体を温めてくれる。

  雲が切れると下界が良く見える。左手には両津湾に出入りするフェリーやジェットフォイルが青い海に航跡を描く。国仲平野を隔てた右側は真野湾が静かに横たわる。1200m足らずの標高の山であるが、海を直下に見下ろすので高度感は素晴らしい。景色に見惚れていると、時折レーダードームが「ブーン」と振動音を立てて唸る。全く興醒めの建造物だ。

      山上の「アヤメ池」

   両津湾と加茂湖を見下ろす。かなり高度感がある 

  山頂からドンデン高原方面への縦走路を少し行くと、笹とススキの穂に囲まれた「アヤメ池」がある。ベストシーズンには素晴らしい花と景色を見せてくれるのだろう。

  コーヒーを沸かして身体を温め、往路を戻る。天候はいまひとつであったが、なかなか出来ない佐渡の最高峰に登れたので、内心とても満足であった。これで、姉夫婦が居る間に佐渡は存分に楽しむことが出来た。結局この日に金北山に登ったのは我々3人だけのようだ。

  下山後、大佐渡スカイラインを相川方面に下り、佐渡金山を見物する。15年程前に観光バスで訪れたが、今日は時間に制約も無く、改めて見直すとなかなか興味深いものだ。洞窟の中の囚人鉱夫の仕掛け人形は不気味でもあり、ユーモラスでもある。「金」というものが持つ魔力は昔も今も変わらない。
 

11月5日(日曜)

【佐渡よさらば】

  佐渡とお別れの日。義兄が携わって完成した佐和田ダムを見学し、妙宣寺、国分寺、トキの里などを案内してもらい、午後3時頃のフェリーに乗る。港を離れるフェリーのデッキから一人でぼんやりと佐渡の山と両津の町を眺めつつ、義兄が赴任を終えたら、もう当分佐渡に来る機会は無いだろうな...としみじみと感慨に浸る。両津を出港後、一昨日訪ねたドンデン山、昨日登った金北山がうっすらと背景に浮かび、いつまでも私を見送ってくれた。■

 
            登山記リストへ戻る