Data No. 119 |
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甲州 茅ヶ岳
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深田久弥氏ゆかりの山 茅ヶ岳(かやがたけ)は、天気のあまり良くない日に甲府盆地から眺めると、山の形が八ヶ岳に似ていることから「ニセ八ツ」などという失礼な名前を付けられている。また、「日本百名山」の著者、深田久弥氏が登山中に亡くなった山としても知られる。茅ヶ岳という名前は、ススキ(茅)が山麓を広く覆っていることから付けられたのだという。標高は低いが、展望の極めて良好な山としても評判である。 秋の深まった週末、Oさんと、この山に日帰り登山する。日帰りの為にはバス時刻の関係で、入間市駅を初電に乗っても間に合わないが、西武新宿線の初電に乗れば間に合うので、日曜日の夜明け前に狭山市駅まで歩き、Oさんと待ち合わせる。5:01の上り電車に乗り、中央線高尾駅6:15発の各駅停車に乗車。 8:06に韮崎到着。バスが不便なので、思い切ってタクシーを使う。バスの終点である「穂坂柳平」という、人の名前のような集落を通り過ぎて、8:40にカラマツ林の中にある登山口到着。これで約1時間節約出来た。 絶好の晴天に恵まれて 絶好の快晴だ。明るい気持で登山道に足を踏み出す。目指す茅ヶ岳の山頂が、秋色に染まった林を前景にして顔を出している。腰まで埋まるカヤトの薮をこいで行くと、朝露で下半身がしっとりと濡れる。足元が見えない薮は嫌いだ。数回石につまずいた。薮を過ぎると、薄暗い樹林帯の中の、傾斜が緩やかな道を登る。そしてやがて視界が開けると、女沢という沢に出る。その沢に沿って登って行くと今度は女岩と呼ばれる大きな岩が行く手に立ち塞がる。何故いちいち「女」なのだろう。女岩で約10分休憩。甲府盆地の対岸には南アルプスが競り上がっている。 女岩を過ぎると登山道は急になってきた。Oさんがバテないようペースを落として登る。急な登りの慰めは、華やかな秋の色に染まった山肌の樹木と、頂上で待っているであろう素晴らしいパノラマへの期待である。急登を我慢して、ようやく稜線の鞍部に出ると、茅ヶ岳の頂上はもう一投足だ。鞍部から左へ進路を取り、枯葉をカサカサと踏みしめながら、ひと頑張り。 登山口から2時間強、10:50に茅ヶ岳山頂に到着。期待に反しない素晴らしい展望が待っていた。吸い込まれるような紺碧の秋空の下、南西の方角には、ボーッと白く霞んだ甲府盆地を砂漠に見立てると、富士山がエジプトの巨大なピラミッドのよう。今更ながら、その他を圧倒する高さに感銘を受ける。周囲をぐるり見回しても、白い雪を載せている山は富士山だけだ。西には鳳凰三山や甲斐駒ケ岳等の南アルプスが屏風のよう。南には五丈岩を頭に載せた金峰山が奥秩父連嶺の中で一際目立つ。北には大きく緩やかな裾野を広げた八ヶ岳連峰が美しい。その左肩には北アルプスの稜線が霞の上に泳いでいる。 此処から見える数多くの山々に、私は既にいくつも足跡を印した。よく山に通った、よく山に登った。これまでの私のたどった山の思い出が走馬灯のように浮かんでくる。 快晴の山に登頂を果たしたOさんも感激してくれた。このパノラマをほしいままに、昼食を広げる。全てはOさんの奥さんが用意してくれたものである。おにぎりも、肉巻き野菜のおかずも、とても美味しい。穏やかで風の当たらない頂上で、日本を代表する山々に囲まれてのひとときであった。 奥秩父の金峰山、瑞牆山 約1時間を茅ヶ岳頂上で過ごし、北側にある金ガ岳へと足を進める。一旦急降下して、鞍部から石門をくぐって再び登り返すと南峰、そしてさらに10分程行くと北峰で金ガ岳山頂だ。標高が1,704mの茅ヶ岳に対して、この金ガ岳は1,764mで茅ヶ岳よりも高い。実際には山腹が同体の一つの山だが、標高の低い方の峰が山の名前になっている。しかし、無理もない。茅ヶ岳山頂の方が、ずっと眺めが良かった。 金ガ岳で約15分休憩後、パノラマ展望に別れを告げて下山にかかる。浅尾原という集落へ向けて南西に伸びる岩の張り出した尾根を慎重に下る。やがて、樹林帯の下りを過ぎ、コンクリートの休憩舎まで来ると、真っ直ぐな一本道が裾野を緩く下っている。さあ、バス停はもうすぐかと期待したのが大間違い。この東光開拓地と呼ばれる裾野に付けられた一直線の道は、なかなか終点が現れず、延々と一時間も続いた。今ここに自転車があれば、全くペダルを漕がずに数分で通過出来るであろうに。 15:20、浅尾新田バス停に到着。しかしバスはあと一時間もない。ビールでも飲めるなら良いが、全く何も無いこんな場所では時間を潰すすべも無く、同じコースを下って来た他のハイカー3名と相談し、タクシーを呼ぶ。タクシーは直ぐに来てくれて、韮崎駅に15:40到着。 幸い駅に到着したら直ぐに上りの臨時特急があり、山の余韻も味わえずにホームに上がる。臨時特急は自由席でも充分に余裕があり、進行左手に席を取り、夕焼けに染まり始めた思い出の茅ヶ岳を眺めながら家路につく。歩き続けた疲労で、缶ビール一本で簡単に酔ってしまい、轍の音を子守唄に、素晴らしかった山々の展望を夢見つつ、気持ち良く眠りこけた。■
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