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Data No. 112 & 145 

 データ:
 登頂日: 1986年8月30日
 標高: 1,720m
 場所: 新潟県
 天候: 晴後曇
 登頂時の年齢: 32歳
 同行者: 姉夫妻と

 1999年9月26日、再登頂の際の写真も
 下部に掲載しています。

 

越後 八海山

 


【いつも見ていた山に、初めて登る】

  八海山は、六日町盆地から真正面に見え、郷里の十日町から八箇峠(はっかとうげ)を越えてくると、真っ先に目に飛び込む名山だ。昔から信仰登山者が登る山として有名だったが、私自身は、登山を趣味とするまで、子供の頃から登ろうなんて考えたことも無かったものだ。登山をたしなみ始めて10年が過ぎ、義兄に誘われて、ようやく地元の名山を探訪する機会を得た。

  姉が作ってくれた弁当をリュックに詰め、8:20に六日町の義兄のアパートを出発。8:40に八海山ゴンドラ乗り場に到着。ここにスキー場とゴンドラが出来たお陰で霊峰八海山も標高1,155mの四合目まで労せずして登れるようになった。天気予報では今日は晴れだが、午後から大気の状態が不安定になり雷雨の可能性もあるらしい。なるべく好天の内に登頂を果たしたい。

        
                        八海山ゴンドラのチケット

  10分間の空中散歩でゴンドラ山頂駅に到着。コシヒカリの実る六日町盆地がまるで箱庭のよう。麓からは八ツ峰のノコギリ状の岩峰が一列に並んでいるのがはっきり見えるが、四合目からは両側にしっかり根を張った薬師岳が険しい八ツ峰を隠している。

         目指す八海山、八ツ峰 

  9:05、登山開始。フェーン現象が続き、雑木林の中を登ると、風通しが悪く、どっと汗が吹き出る。30分程緩やかな上り下りを繰り返すと、薬師岳本峰の登りとなる。程なく、ブナ林の登りの傾斜が緩むと、六合目の「女人堂」だ。昔の八海山はここから先が女人禁制であり、女性はこのお堂に籠って祈願したという。今はもちろん、誰でも登れる時代なので、此処は避難小屋として使われている。左手に越後駒ケ岳がぼうっと霞んで見える。

  女人堂を過ぎると、一本調子の登りとなる。朝より雲が多くなって麓の景色が隠れてしまった。それでも頭上には青空が残っていた。急登であるが、途中で明るい緑の草原が現れたり、可憐な花が咲いていたりで、気を紛らすことが出来た。登る前に姉が心配していた鎖場などは苦も無く通過。

  女人堂から40分で薬師岳頂上(1,653.8m)を踏む。沢山の石碑に混じって青銅の神像も建っており、難行苦行して登る修験道者達のひたむきな信仰心に頭が下がる思いである。神像の傍にある釣り鐘は、霊山への来意を告げる為に打ち鳴らすものらしい。登山中にしばしば聞こえていたカーンという乾いた音は、この鐘の音だったのだ。薬師岳から、ほぼ水平位置に千本檜小屋と八ツ峰の岩峰が見えていたが、そこに辿り着くには一旦50m位下って再び登り返す。

        薬師岳から八ツ峰と千本檜小屋を見る
      

  10:55、千本檜小屋に到着。休憩料を払ってしばらく休んだ後、姉を残して義兄と八ツ峰越えに挑む。付近はガスに閉ざされて視界は利かなくなった。先ずは第一峰(地蔵岳)を右にトラバースして鎖に頼りながら第二峰(不動岳)との鞍部に出る。第二峰を登ると、其処からは次々に岩峰を越えて行く。それが、北アルプスの山のようなしっかりした岩ではなく、小石が脆いセメントで固まったような岩だから手掛かり足掛かりが乏しく、全面的に鎖に体重を掛けざるを得ない。私は鎖に全面的に頼るのは恐かったが、義兄は平然とスルスルと登り下りしていた。幸い(あるいは残念ながらか)霧の為に、足元にすっぱりと切れ落ちている筈の絶壁が見えなかったので、恐怖感も程々というところ。

                               
           八ツ峰の鎖場で                      怖い岩峰を鎖で登ったり、下ったり

  さて、最後の第八峰、大日岳であるが、ここが一番垂直に近く、また鎖も長かった。足元がゾクゾクする感覚を味わいながら登り切る。この大日岳が八海山の十合目であり、頂上(1,720m)と言われているものだが、実際の最高地点はずっと先の入道岳(1,778m)にある。しかし、ここに登れば八海山の頂上を極めたと言っても差し支えあるまい。天照大神や不動明王が祀られていて、鐘や小鳥居等いろいろなものが岩峰の頂上にあるので、不謹慎な俗人の振舞いをしてはならない雰囲気。

      十合目、大日岳山頂にて

  八ツ峰の緊張感から開放され、入道岳まで足を延ばそうと草付きの尾根を歩いていた時、突然ゴロゴロゴロッと雷鳴が聞こえてきた。何処にも避難する場所が無い山なので、迷うことなく二人とも即座に回れ右をした。雷雨時に稜線にいることは、とても危険である。結局、それ以降雷は二度と鳴らなかったが、身の安全が第一であるから後悔はしない。

        巻き道へ下る急なハシゴ

  帰路は巻き道を戻る。大日岳の手前から岩の間を潜るように梯子で下り、八ツ峰の半分をトラバースするようにつけられた道を進むと、小広い湿原台地に小さな池が二つあった。丸い方が日の池、細長い方が月の池と呼ばれ、後で千本檜小屋で信者の人に聞いた話だが、「薬草エキスがたっぷり溶け込んだ」という池の水を汲んで持ち帰り、病気がちの人が一日一杯ずつ飲むと、効き目はそれはそれは素晴らしいものだそうだ。

     八ツ峰走破を終え、小屋でようやく腹ごしらえ

  12:55、千本檜小屋に帰着。往復1時間40分の八ツ峰巡りであった。小屋の中で熱いお茶を飲みながら昼食をとる。白装束の年配の信仰登山者達が大勢いて、さすがは霊山だと実感する。姉は小屋の人達と話をしていたので退屈しなかったと言う。信者に加え、登山のグループもいて、週末の小屋は賑やかだ。

  14:07、下山にかかる。往路を1時間20分かけて下った。途中でポツリポツリと雨が降ってきたが、本降りになることはなかった。15:30、ゴンドラ山頂駅に帰着。朝とは打って変わり、大勢の観光客が居た。■

 

八海山登山行程

1986年8月30日
六日町8:20 ==(車)== 8:40 ゴンドラ山麓駅 8:50 ==(ゴンドラ)== 9:00 山頂駅(四合目)9:05 --- 9:25 四合目半 --- 9:55 女人堂 10:05 --- 10:45 薬師岳(1653.8m) --- 10:55 千本檜小屋 11:12 --- 八ツ峰縦走 --- 11:52 十合目、大日岳(1,720m) 12:00 --- 日の池、月の池巡り --- 12:55千本檜小屋(昼食休憩)14;07 --- 14:45女人堂 --- 15:32山頂駅 15:45 ==(ゴンドラ) == 15:55山麓駅

*その後、最高峰、入道岳は1999年9月26日に登頂しました(FKさん、MKさん同行)。下記は、そのときの写真です。

 
                 薬師岳から仰ぐ越後三山(左から越後駒ヶ岳、中ノ岳、そして八海山)

         八ッ峰への入口と案内図

     
                 良く晴れて、谷底まで良く見えるので、少し怖い...

          最高点、入道岳(1,778m)にて (丸ヶ岳と表示されていた)


      
                             入道岳から見る八ツ峰

      
 
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