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Data No. 105

 データ:
 登頂日: 1978年11月12日
 標高: 1,330.6m
 場所: 埼玉県
 天候: 晴れ
 登頂時の年齢: 24歳
 同行者: SI君、TK君、YKさん

 

秩父 武甲山

 



【秩父のシンボル、セメント掘りの山】

  先日の鷹ノ巣山の感激が忘れられず、SI君ともう一度秋の山にハイキングに行くことになった。出発前夜、SI君のアパートへ弁当の仕度に行くと、TK君が遊びに来ていた。「一緒に行く?」「うん、行きたい。彼女も連れてっていい?」「もちろん!」と即座に話はまとまり、TK君とフィアンセのYKさんの二人を加え、総勢4名で行くことになった。弁当はYKさんが作ってくれるという。

  11月12日朝、池袋から6:50発の特急レッドアローちちぶ1号に乗車。憧れのレッドアローに初めて乗るので、胸が踊る。ロマンス・シートに腰をうずめていると、いつも満員電車に揺られながら見る西武線の車窓が、初めて通る所のよう。飯能から次第に山深くなってゆく。生憎、天気は曇りなのが残念。

         西武秩父駅前にて 

  8:13西武秩父到着。武甲山の登山口は一駅手前の横瀬なのだが、女性も居ることだし、時間を有効に使おうと表参道入口までタクシーを奮発した。四人で割り勘すれば一人250円で済む。セメント会社の傍を抜けると砂利道になり、宇遠橋(うとうばし)というところでタクシーを降りる。

  武甲山登山道は、麓から一丁目、二丁目、三丁目...と、丁目石がほぼ等間隔に置かれてあり、頂上神社が52丁目とのこと。登って行くには良い目安になる。TKカップルが初めての山登りなのではしゃぐ。TK君にはズックを貸したが、YKさんは街中を歩くスタイルだ。7丁目の鱒釣場で小休止。その後薄暗い杉林の中を丁目石を数えながら登り、18丁目の水場でも長々と休憩。あまり長々と休憩したくないが、「慌てるのは止そう」と言われると返す言葉が無い。

    
     頂上直下の神社で                          ここを登りつめれば頂上

  杉の巨木に囲まれた眺望の利かない林の中を登って行くと、ラジカセをガンガン鳴らしながら登ってゆく若者の集団に追いついた。山に来てまであんな煩い音を聞きたいものか。最初の頃、キャッキャッと騒いでいたTKカップルの口数がめっきり減ってきた。全員黙々と頂上を目指した。

           武甲山頂上にて

  一丁目の鳥居を9:00にくぐってから凡そ二時間。11:00過ぎに狛犬ならぬ狼の石像に守られた武甲山頂上御岳神社に着いた。此処でお参りをして、神社の右側を10分ほど歩けば其処が標高1,330.6mの武甲山頂上だった。麓から見上げると石灰岩の採掘で山腹をえぐり取られた無残な姿を晒していたこの山は、意外にも頂上は高山の風貌を持っていた。足元には秩父の町が広がり、ボーッと霞んだ奥武蔵から奥多摩にかけての山々は、さながら墨絵のよう。北の彼方には上越国境か、雪化粧した山々が見える。

       山頂でゆっくりランチタイム 

  TK君達も初めての山登りに感動した様子だ。風の当たらない神社の近くまで引き返し、待望の昼食とする。YKさんが一所懸命作ってくれたメニューは、おにぎり15個、ゆで卵8個、ポテトサラダ、ウィンナーソーセージ、朝鮮漬け、その他いろいろ。四人で貪るように食べ、40分程で全部無くなった。腹は満たされたが、汗が冷えてきて大分寒くなった。

         
       発破避難用の小屋                   下山中、武甲山を背景に

  13:00、下山にかかる。下山コースは真っ直ぐ西武秩父駅に出られる西参道を選んだ。西参道には表参道のような丁目石が無かったが、所々に木で出来た小屋があった。随分、登山者のために親切なことだと思っていたら、実はそれらは石灰岩採掘のダイナマイト発破時に避難する為の小屋らしい。今日は日曜日なので、発破は無い。時折現れる真っ赤な紅葉が退屈な下山に変化を添えてくれた。表参道は楽な道だったが、この西参道は段差も大きく、秩父の町に向かって飛び込むような傾斜で下ってゆく。

  その下りも一段落して後ろを振り返ると、降りてきた武甲山の姿が素晴らしい。さて写真を撮ろうという話になり...あれ、カメラはどこだ?あれ、無い!リュックの中にも何処にも無い。暗い影が忍び寄る。さては休憩中に置き忘れたか...。20分程唸りながら考えた末、SI君と私が引き返して探しに行く。

  「置き忘れたとしたら多分俺だろう」というSI君の責任感は彼をスーパーマンにした。いきなり下ってきた道を駆け足で登り始め、私の視界からあっという間に消えた。私はあきらめて、登るのを止めた。そして80分後、カメラをぶら下げて真っ赤な形相で駆け下りてくるSI君の姿を見た。文字通り、彼は「Superman」というTシャツを着ていた。

  カメラが無事戻ったことの嬉しさはもちろんのこと、皆が下りだけで90分を要した山道を彼は80分で往復したことに驚愕した。お陰で大切な記念写真は無事に手元に戻った。「やっぱりお前は人間じゃねえ」、「ゴリラ男」、「超人」などと、SI君がもてはやされることしきりであった。

  晩秋の陽が秩父の山々の頂に隠れる17:00頃、西武秩父駅に到着。レッドアローは全て満席とのことなので、普通急行に乗る。楽しい晩秋の一日であった。■


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