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Data No. 103 |
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丹沢 沢登り 〜塔ヶ岳へ
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土曜朝、リュックサックに麦茶入り水筒、缶詰、おやつ、着替え、カメラなどを詰め、キャラバンシューズを履き、7:20にアパートを出る。新宿8:02発の小田急電車に立ったまま1時間乗り、9:00過ぎ伊勢原着。TM社平塚工場のZさん、 I さん、TK社のHさん、そして私の4名が集合。セブンイレブンで朝食を買い、Zさんの運転する車の中で貪り食う。 丹沢の山懐に向かい、デコボコ道を走ること約一時間で登山口に到着。すると、他の三人はヘルメットを被りだした。どうも様子が変だから、どこを登るのかと尋ねたところ、いとも簡単に「ここを沢登りするんだよ」との返事。電話では、丹沢の塔ヶ岳を登ってみようとのことだったので、まさかヘルメットが必要な所とは夢にも思わなかった。「大丈夫、大丈夫」という声に励まされ、心配ながらも付いて行くことにした。 岩がごろごろしている水無川(水はたっぷりと流れているが)を、前から三番目、後ろを
I さんに守られながら登る。しばらくすると滝があった。「本谷F1」という看板。それを見て、他の人達がヘルメットを持ってきた訳が分かった。滝の岩を登るのだ。私は鉄鎖の付いた巻道を登った。高さはそれ程でもないが、初めての岩場だから恐ろしい。Zさんと
I さんは、平然と鎖には目もくれず、手と足だけですいすい登ってしまった。流石にカッコ良い。「F」とは、滝(Fall)のことらしい。 F3では、つるつるの岩が障害となり、さすがのZさんもてこずって、 I さんに下から押してもらっていた。唯一人、背が高くてリーチの長い
I さんだけが自力で登れた。F4、F5は連続した滝だった。巻き道を通っても、ズボンがかなり濡れる。一体幾つ滝があるのかと尋ねたら、9箇所だという。まだやっと半分だ。 F6、F7を無事乗り越えると、午後1時になったので、ようやく昼食の時間となる。沢の水で沸かしたスープとコーヒーが、とても旨かった。ここは休むには丁度良い場所らしく、他のグループも昼食休憩していた。腹が満たされると元気が出た。どうせあと二つでお終いなのだと思えば気が楽である。 そんな軽い気持でF8に着いてびっくりした。何と高さが20mにもなる大きな滝だ。滝の前で記念撮影をしてから、ベテラン達は左側、私はひとりで右側の巻き道を行く。高さは随分あるが、慎重にやれば大丈夫だろうと思って取り組んだ。最初は反対側の仲間に手を振って余裕を見せていたが、それからがさあ大変。どっちへ行けば良いのか判らない。上に行こうとして岩に手をかけるとポロリと欠け、足をかければゴロゴロと落ちる。恐怖で足が竦む。もたもたしていたら、下から I さんの呼ぶ声がする。返事をしたが、どう動けば良いか分らない。ここに取り付く前、皆がF8の傍には此処で遭難した人の墓石があったが、落石や雨風で今は跡形も無いと言っていた。自分もここで遭難してしまうのか。草にしがみつき、浮石に滑りながら彷徨し、やっと沢が見えた時は本当にほっとした。沢に下りると、 I さんが後ろからやってきた。わざわざ探しに来てくれたらしい。とうとう他の人に迷惑をかけてしまった。 幸い最後のF9は楽だった。これで漸く危険箇所が全て終わった。F9を過ぎると、殆ど沢に水が無くなり、文字通りの「水無川」になる。ガレ場をジグザグに数十分登ると、尾根道に出た。そこに出た途端に尾根歩きの人々に出会い、「おーっ、沢登りをやったんですか!」と感心され、素人の私でも少し晴れがましい気分になった。延々5時間に及ぶ苦闘だった。 尾根道を15分歩くと、塔ヶ岳山頂である。標高1,491.2m。急に視界が開けたと思ったら、真正面の雲海に巨大な富士山が突き出ている。大いに驚き、そして大感動。富士山の山肌は濃紺で、所々に白い残雪がある。オ〜イ!と呼べば聞こえそうなほど近くに見える。Zさんらも「Y君を連れて来た甲斐があった」と喜んでくれた。 30分休憩後、通称「バカ尾根」と呼ばれる大倉尾根を下山する。普通の山ならば、こういう場所はジグザグを切るのだろうが、此処は真っ直ぐの急降下である。スピードをつけてしまったら止まらない。これぞ本当にバカ尾根である。人は良い名前をつけるものだ。お陰で私は足がガクガク、爪先はヒリヒリ痛む。ZさんとHさんは猛スピードで下り、私はとても付いていけない。おまけに休憩は全く無し。心の中で「チクチョー、チクショー」を連発しながら下った。 塔ヶ岳頂上から70分で、車を置いてある出発点に帰着。もう私は心底くたくただ。朝登り始めた水無川の清流で顔を洗い、しばらく座り込んだ。
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