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Data No. 102

 データ:
 登頂日: 1977年9月2日〜4日
 標高: 
 場所: 群馬・福島・新潟
 天候: 晴一時雨
 登頂時の年齢: 23歳
 同行者: Zさん、FOさん

 

初めての尾瀬

 


  「夏が来れば想い出す、はるかな尾瀬遠い空.....」。昔から憧れ、思いを馳せていた尾瀬に行ける機会がやってきた。メンバーは、私とFOさん、そしてZさんの三名。

9月2日(金曜)3日(土曜)

  金曜夜、21:00、上野駅6番線で待ち合わせ、21:56発の急行尾瀬1号で沼田に向かう。たった2時間20分の乗車では、ほとんど眠れない。Zさんを中心に山の話をしながらの車中。それでも知らずの内に30分位は眠ったようだ。Zさんに揺り起こされると、沼田駅に到着していた。

  列車は空いていたが、それでも8両編成の急行から全員が降りると、駅前のバス切符売り場には長蛇の列が出来た。バスは大清水という尾瀬の登山口まで1時間半で運んでくれる。しかし、睡眠不足と座席の窮屈さ、加えて山男達の発する異様な臭いで、大人になってからはしばらく味わったことのない車酔いのむかつきを覚えた。バスが大清水に到着し、ひんやりとした山の空気を吸って、ようやく救われた。

  2:30過ぎ、懐中電灯を点けて尾瀬沼目指し出発。一時間ほど広い道を緩く登り、一ノ瀬休憩所から山道に入る。真っ暗な上に、時折小雨もぱらつく天候で、一番心細かったの私であろう。女性のFOさんはまるで平気な顔だ。私は僅かばかりの山登りの経験はあったが、夜中の山道を歩くなんて初めて。幸い、雨は大したこと無く、やがて月明りも射し、他のハイカー達も大勢いるので、何とかなるさという気分になった。

  標高1,762mの三平峠まで約二時間半、休み休み歩いてたどり着いた時には、空もうっすらと明るくなってきた。ここで、Zさんが、持って来た携帯コンロでコーヒーを沸かしてくれた。山に登って熱いコーヒーが飲めるなんて想像もしていなかった私は、その便利さに驚いた。内心、とても心細い私には、そのコーヒーの味と熱さがどれほど元気付けになったことだろう。

      夜明けの尾瀬沼にて

  明るくなると青空も広がり、力が湧いてくる。三平峠から樹林の間に見え隠れしていた尾瀬沼へはずっと下りで10分で着いた。湖畔を更に20分程歩くと長蔵小屋がある。ここで朝食とする。紅茶を沸かしてもらい、フランスパン、レーズンバター、ウィンナーソーセージ、フルーツの缶詰など、なかなか豪華なものだ。皆が沢山食べた。尾瀬沼は深い緑の山々に囲まれてシーンと静まり返り、初めて訪れた私にはとても神秘的な光景であった。汗が冷えて寒くなったので、セーターを一枚着て、しばらくベンチの上で横になる。 

  7:00、長蔵小屋を出発。普段なら未だ布団の中で快眠を貪っている時間だが、夜中から歩き通していたため、時間の感覚を失ってしまいそう。もう昼頃のような気もするし、夜など訪れて来ないような気もする。尾瀬沼を左手に見ながら、時折すれ違うグループと挨拶を交わしながら小一時間歩くと沼尻(ぬしり)休憩所だ。ここでも60分の休憩。Zさんは燧ケ岳に登りたいらしいが、私とFOさんが乗り気でなかったので、少し可哀想な気もした。私がもっと山の経験豊富だったら良かったけれど。

      初めての夜行と夜中の歩きでバテ気味  

  そうすると時間は充分あるので、ベンチの上で昼寝。真っ青な空と聳え立つ燧ケ岳を眺めつつ、気持ち良くうとうととする。Zさんの話だと、日本でここより北には、燧ケ岳よりも高い山は無いそうだ。登りはきつそうだ。登ることにならなくて、私は内心ほっとしていた。

  10:00、沼尻を出発し、山間の段小屋坂を尾瀬ヶ原に向けて歩く。夏休みが終わった今は、云わばシーズンオフで、人が少ない。のんびりと尾瀬を楽しむには一番良い季節かもしれない。沼尻川の水の音を聞きながら黙々と歩く。川の水の何と冷たいことよ。長蔵小屋で買った小さなリンゴを冷やして食べた。実が締まっていてとても美味しかった。

    尾瀬ヶ原から燧ケ岳を見る

  段小屋坂を登り切り、再び緩く下ると尾瀬ヶ原の東端十字路、見晴(みはらし)に着く。インスタント・ラーメンを作って食べる。三人とも、汁の一滴も残さず食べた。食べ物は減っても荷物は減らないようだ。山ではごみを捨ててはいけない。山を愛し、自然を愛するならば、ごみの持ち帰りを面倒がってはいけない。その点、流石に我々のリーダーであるZさんは徹底していた。

         尾瀬ヶ原にて

  昼食後、広い尾瀬ヶ原を西に進む。故郷の新潟県も通ってみたいという私の希望が入れられ、東電小屋経由で遠回りする。遥か湿原の彼方にこんもりと聳える至仏山の麓まで約3時間、黙々と歩いた。水芭蕉の頃の華やかさは無いのだろうが、可憐な白、黄、青の花々が木道の傍に慎ましく咲いていた。ゆらゆら揺れる吊橋を渡った所から約1km足らずが新潟県だ。新潟県内にも東電小屋という小屋がある。管理人が一人でポツンと玄関の前に立っているだけで、淋しい所であった。

  木道は平らであっても、結構疲れる。さすがに息は切れないが、硬い板の上をクッション性の乏しいキャラバン・シューズでは足首が疲れた。広い尾瀬ヶ原を渡り切り、山の鼻が間近になった頃、次第に北の方から雨雲が広がり出し、ポツリポツリと雨が降ってきた。16:00、山の鼻小屋に着いた時には本降りになった。

  私にとって初めての山小屋泊り。しかし、狭い部屋に大勢でごろ寝という、私が抱いてきたイメージとはまるで違い、全く民宿と変わらない。風呂まである。客が少ないため、3人で8畳の部屋をくれた。思いがけずに風呂で汗を流すことが出来、さっぱりした気分で夕食を楽しみ、部屋で山談義に花を咲かせた。私は口に出さなかったが、初めて履いたキャラバン・シューズで参っていた私が一番疲れていたであろう。運動靴の方が、ずっと楽だったのではないか、としきりに思った。夜は激しい雷雨になった。

9月4日(日曜日)

      山ノ鼻にて   

  6:30起床。朝食後、8:00、小雨が残る尾瀬ヶ原を後に、傘をさして鳩待峠へ向かう。楽しかった尾瀬を後にするのが名残惜しくもあり、早く家に帰って楽な格好をしたいとも思った。鳩待峠へは緩やかな4kmの登りだった。昨日のコースに比べたらずっと楽なコースだが、昨日の疲労が残り、濡れた坂道の朝一番の登りだけに、やはり少しばてた。

  鳩待峠に着くと、天気はすっかり回復し、嘘のように良い天気になった。他のハイカー達とタクシーを相乗りで沼田に向かう。途中、吹割の滝でタクシーの運転手が、休憩がてら車を停めて見物させてくれた。沼田駅前で熱いうどんを食べ、コーヒーを飲む。下界から遠ざかった二日間の情報を得るべく新聞を読むと、巨人の王選手がとうとう756号ホームランを打ったとのこと。やったね!

  沼田12:24発の急行よねやまで帰京。快い疲れが身体を包む。ベテランのZさんに刺激され、私ももっと山に来ようと思った。ZさんやFOさんのような気の合う仲間がいてくれれば、楽しい人生も送れるだろう。■

 

尾瀬山行行程

9月2日(金曜)〜3日(土曜)
上野21:56 ===(急行尾瀬1号)=== 0:20 沼田 0:35 ===(バス)=== 2:00
大清水2:30 --- 三平峠でコーヒータイム --- 5:30 長蔵小屋で朝食7:00 --- 8:30沼尻で休憩10:00 --- 11:30 尾瀬ヶ原見晴(昼食) 13:00 --- 東電小屋 --- 16:00 山ノ鼻、山ノ鼻小屋宿泊

9月4日(日曜日)
山ノ鼻8:00 --- 9:30 鳩待峠 10:00頃 ===(タクシー)=== 11:30 沼田駅 12:24 ===(急行よねやま)=== 14:40 上野

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