Data No. 94 |
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飯豊山
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7月25日(金曜)〜26日(土曜) 梅雨明けは、ぐずぐずと遅れていた。出発の金曜夜、会津へ向かう道中も雨が降り続く。会津に入って、一旦止んだ雨は、深夜にかけて再び音を立てて降る。会津坂下ICで高速道路を降り、山都町を経て、川入キャンプ場駐車場に0:50到着。半分雨中の登山覚悟で、車中で一杯後仮眠。 4:30に目を覚ますと、まだ小雨模様。管理小屋で懐中電灯を照らしながら湯を沸かし、皆で朝食をとる。関東近郊の日帰り登山ならば、「絶対中止」の天候だが、はるばるここまでやって来た皆の意思は登山決行だ。明日には梅雨明け、という可能性もあったから。 6:05、雨具を装着して出発。小雨降る森の中を10分歩くと、「御沢登山口」の標識。ここからが、長坂尾根と呼ばれる山道だ。これは別名「十五里尾根」と呼ばれ、それは一里が十五里にも感じられるほど辛く長い登りだからという。確かに、辛い急な登りだ。途中に下十五里、中十五里、上十五里、笹峰、というポイントが500m〜800m間隔で設けられてあり、良い目安になる。しかし、梅雨空が続いた登山道は思い切りぬかるんでいた。 最初の目安となる「横峰小屋跡」には、標準コースタイムで到着。そして、そこでびっくりしたのは、同行の皆さんの先輩で、A信金を最近定年退職されたYBさんご夫妻とバッタリ出会ったことだ。ご夫妻は、百名山をこれで64座目とのこと。きっと今は楽しくて仕方が無い頃であろう。 横峰からは多少傾斜が緩んだものの、ぬかるみとの闘いは続く。そして、ようやくぬかるみから開放されると、今度は痩せ尾根の登りが待ち構えていた。岩場が連続し、ところどころに鎖場がある。Mさんがバテ気味なので、後ろから見守る。奥さんはしっかりした歩きだ。 辛く長い、視界の利かない痩せ尾根を登ると「剣ヶ峰」。そして、そこからもう一頑張りで「三国岳」の避難小屋に11:15到着。しかし、混雑していて、落ち着いて休憩できる雰囲気ではなかった為、僅かの休憩で、先ずは切合(きりあわせ)小屋を目指す。 「三国岳」という通り、そこは福島、新潟、山形3県の県境だ。しかし、そこから飯豊本山までは右が山形県、左が新潟県の県境尾根である筈なのに、何故か、飯豊山神社までの尾根道だけは福島県の領有だ。三国岳を出発後、MKさんとFSさんは先に行ってしまった。M夫妻と、我慢我慢の登行。視界の利かない稜線を、登ったり下ったりで、いつ果てるともない雨中の登行が続く。そして、Mさんが「もう、飯豊本山まではむりだな」とポツリ。私も同意見。もう切合小屋に泊ろう。 尾根道沿いには美しい花が沢山咲いていた。シラネアオイ、紫のミヤマクルマバナなどの可憐な花に慰められての登行だ。13:15、霧の中にようやく切合小屋が現れた。 途中ですれ違った人々に聞くと、昨夜の小屋は100名を越す客で大混雑だったらしい。今晩は団体が居ないので比較的楽そうだが、それでも夕方には定員一杯になった。到着してすぐに、濡れた着衣を着替えて簡単な昼食をとる。そして17:00頃、夕食の準備。アルファ米を湯で戻して、レトルトパウチのカレーをかけて食べる。19:00頃、シュラフに包まって一旦眠りに落ちたが、22:00過ぎに目が覚め、屋外のトイレに立つ。それからウィスキーを一人でちびちび飲んだら、ようやく心地よい眠気がやってきた。 7月27日(日曜日) 山小屋では絶対に熟睡出来ない私であったが、夕べウィスキーを呷ってからは比較的良く眠った。3:00過ぎから、そろそろ人々が起き出す。外は雨が止んだらしい。雨が止んだと知ったら、元気が出た。静かに朝食の準備をする。味噌汁にアルファ米を入れて煮て、カニ缶も入れた豪華な雑炊だ。 4:35、飯豊本山へ向けて小屋を出発。上空は昨日よりも雲が薄い。ひょっとしたら晴れるかもしれないという期待を持って歩き出す。雨具から開放されたのも嬉しい。 いくつもの雪渓を渡って、最初は緩く登る。そして、小起伏を幾つか越えていく。草履塚という地点を過ぎると傾斜が増し、飯豊山本峰の登りになった。途中「御秘所」と呼ばれる岩稜を越えて、「御前坂」を登りきると飯豊山神社は間もなくであった。山道には花々が美しい。ヒナウスユキソウ、ニッコウキスゲ、タカネマツムシソウなどが目立つ。 切合小屋から2時間で飯豊山神社到着。傍の本山小屋は、切合小屋よりもやや小ぶりか。神社に参拝し、登山開始後初めて写真を撮る。神社から本山へは約20分だ。そして、その稜線がさらに素晴らしい花畑。ピンクのヒメサユリが、ことのほか美しい。イイデリンドウも咲いていた。山腹の緑の草原には黄色いニッコウキスゲ、ブーケのような白いタカネツメクサが目を引く。 7:00、待望の飯豊本山(標高2,105m)に到着。上空は薄い青空が出たが、展望はまだ得られない。しかし、長く辛い登行だっただけに、とても嬉しい山頂到達だった。記念撮影をし、皆でしばし感動を共有。雨具から開放されての登頂はやはり喜びが大きい。 帰路はすっかりリラックス気分で、花畑で写真を撮ったり、時折見える対岸の残雪豊富な山腹に感動しながら歩いた。そして、YB夫妻と再びすれちがう。お互い表情は明るい。ご夫妻とは切合小屋で最後にまた会うことになった。 9:20、切合小屋帰着。小屋裏の広場でコーヒータイムを楽しみ、牛首山や本山の山腹の展望が広がってくるのを皆で喜んだ。標高が2,000mやっとなのに、残雪の豊富さは北アルプスをしのぐ。さすがは豪雪地帯の山だ。のびやかで穏やかな山容なのに、登り下りには岩の痩せ尾根が多いのも意外な一面だ。 10:10、下山開始。昨日の往路を戻る。三国岳迄のアップダウンで、Mさんが再びバテ気味。三国岳を過ぎると、ひたすら下りだが、この急峻な痩せ尾根が一番神経を使う。山頂小屋で腰をすえて休もうとする皆を、私が敢えて急かし先を進む。下山後に温泉旅館を探して泊まるのならば、時間的余裕は無いのだ。 痩せ尾根を下り、時間節約のため、私が途中から先行し、横峰でラーメンを作る。M夫妻の到着する頃には、すっかり出来上がり、すぐに食べてもらう。横峰から再びぬかるみとの闘い。このぬかるみの急斜面の下りでは、ステッキが大いに役立つ。ステッキが無かったら、何度も尻餅をついて、衣服が泥だらけになったに違いない。 16:00過ぎ、川入キャンプ場帰着。水場で泥だらけの靴を洗い麓に下りる。途中のガソリンスタンドで勧められた熱塩温泉のホテルふじやを電話予約し、17:50に到着。 何はともあれ大浴場に直行し、全ての着衣を脱ぎ去り、頭のてっぺんからつま先まで石鹸で洗い、熱い湯にくたくたになった身体を沈めると、もう、しびれるような快感...。そして、湯上りに冷たいビールを呷り、待望の夕食だ。飯豊山登頂祝いの夕食は、皆が、この上もなく晴れやかな、素敵な顔をしていて、話も弾み、とびきり美味しく、楽しく、夢のようなひと時であったことは云うまでもない。
7月28日(月曜日) 3日ぶりに快適な布団に眠れ、目覚めはすこぶる爽やか。10:00まで宿に滞在。青空が出たので、飯豊山が見えるという場所まで行ってみたが、まだ山は雲の中だった。しかし、その後、喜多方の蔵造りの町並みを見物し、名物ラーメンの昼食を終え、帰路につこうと喜多方の郊外に出たら、すっかり晴れ渡った青空の下に、初めて飯豊連峰がその姿を我々の前に見せてくれた。周囲の低山とは一線を画して、純白の残雪をいただく、たおやかな山容。麓から仰ぐ飯豊山は、あまりにもゆったりと、あまりにも穏やかな姿で聳えていた。そんな姿を見たら、辛かった飯豊山の登山がとても楽しかった出来事に思える。今度機会があったら、是非青空の下で歩きたい。 期待した日程に一日遅れて、この日に梅雨明け発表があった。しかし、そんなことは、もはや、少しも残念とは思えない、充実した気分で帰途につく。 飯豊山、ありがとう、そしてまた来る日までごきげんよう。■
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