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Data No. 83 & 84

 データ:
 登頂日: 2002年7月6日〜9日
 阿寒岳標高 1,499m
 大雪山標高 2,290m
 場所: 北海道
 天候: 晴れ
 登頂時の年齢: 48歳
 同行者: FKさん

 

 
阿寒岳
 

大雪山旭岳

 



7月5日(金曜日)   【千歳へ飛び、北の大地を阿寒へドライブ】 

  北海道の山を登るなんて、数年前迄は考えたことも無かった。高額な旅費、長時間の移動、ヒグマの危険、などが大きな制約だったのだが、全日空の超割で片道1万円で北海道へ行けるようになった。FKさんと初めての北海道登山ツアーを企画した。

  羽田から90分の快適な空の旅で9:35に新千歳空港に到着。トヨタ・レンタカー、ヴィッツに乗って初めての北の大地のドライブである。

  千歳から道東自動車道夕張を経て、日高から日勝峠を越え、十勝清水から再び道東道に乗る。交通量が極めて少なく、対面通行がほとんどだが、すれ違う車はまばら。そもそも、高速道路に乗らなくても、一般道でも80km/hは出せる。峠道でも、本州では考えられないほど道は広く立派で、カーブは緩やか。北海道の広さを実感しながらのドライブだった。池田で現在の高速道路は終わり。R242〜R241を経て阿寒湖へ。

  「あかんパークイン」に投宿。温泉も、夕食も、ゆっくり楽しむ。食後は温泉街の土産物屋を散歩。途中、雨が降ってきたが、5日間のまだ初日だ。ま、何とかなるだろう、と鷹揚な気持ちで雨を許した。

 

7月6日(土曜日)    雌阿寒岳を登頂】 

  朝、雲は低く垂れ込めていた。5:00に宿を出発して、阿寒湖畔を通過する際は、対岸の山も全く見えなかった。雨の予報ではなかったので、雌阿寒岳登頂を決行。原生林の中を、雌阿寒温泉への道を進む。雌阿寒温泉に5:20到着。車を降りてびっくりした。何と晴れている。目指す雌阿寒岳が林の上にはっきりと見えているのだ。標高400mの阿寒湖畔は曇天、しかしそのすぐ近くで標高700mの雌阿寒温泉がきれいに晴れているとは。俄然元気が出た。

       
                 
山は雲の上だった(雌阿寒温泉の登山口で)

  5:35、出発。FKさんには、熊鈴をザックに取り付けてもらう。しかし、その音はかなり控えめだ。本当に熊除けになるのか...。車道を離れ、アカエゾマツの鬱蒼とした針葉樹林帯の中の道は、初めての北海道の山だけに、不安と緊張を感じる。しかし、やがて他の登山者の姿もちらほら見かけたので、少し安心。

  北国の北海道だが、風の当らない樹林帯の登りでは目一杯汗が出た。しかし、森林限界が低いので、鬱陶しさは長くは続かなかった。やがて、背の高いハイマツの中を登るようになり、行く手に山頂部も見えてきた。この登山道は、定間隔で合目標識があるので、目安となって気分的にも楽である。

  
          登りの途中で中腹を見上げる                   エゾイソツツジの群落が目立つ

  4合目付近から尾根道となり、展望が開ける。足元は雲海だ。その中に、いくつもの山が島のように浮かび、霞を食べる仙人が飛び交う神話の世界のよう。登山道には、しゃくなげのミニ版のような「エゾイソツツジ」が盛りである。6合目付近からは火山礫の中をジグザグに急登する。一番の辛抱どころだ。そこを頑張ると、やがて巨大な山頂火口の縁に出る。火口内部の絶壁から勢い良く噴煙が立ち昇り、対岸の別の火口からも、まるで火災のように噴煙が上がる。かなり活発な火山だ。深田久弥氏は、この雌阿寒岳には噴火活動期に遭遇したので登頂していないという。

        山頂付近を歩くパーティ

    
        雌阿寒岳頂上で                             雄阿寒岳を見る

  火口のお鉢を時計回りに登り切った所が雌阿寒岳頂上(標高1,499m)だ。7:40、約2時間の登高。先客は3組ほど。山頂から見下ろすと、大きな火口底には青い水を湛えた青沼があり、その背景には煮えた鉄瓶のように、黒々と大きな阿寒富士の姿がある。この雌阿寒岳と対を成す雄阿寒岳は雲の彼方に見え隠れする。しかし、空がより明るくなってくると、それが雲ではなくて、雌阿寒岳山麓の大きな別の火口からの噴煙であることを知った。山頂、山麓を問わず、様々な場所から煙を吐き出す。これでは、いつまた火山活動が活発になってもおかしくはないだろう。この日無事に登頂するチャンスに恵まれたことを幸せに思う。

   山頂火口と阿寒富士

  上空には青空も広がる。阿寒湖出発時には予想もしなかった好天に恵まれ、写真を沢山撮る。そして、雄阿寒岳方面を向いて座り、宿で用意してもらったおにぎり弁当の朝食。食事中、更に下界の雲が薄くなり、麓には阿寒湖の湖面と小さな島も姿を現す。人工物は一切見えず、まさしくここは仙人の世界だ。

   
       雄大な原生林とオンネトーを見下ろす                 キタキツネがこんにちは!

  往路をそのまま下る。登りでは見えなかった麓のオンネトーも姿を現した。深緑の大原生林の中に、真っ青な水を湛えたオンネトーは、とても美しい。下山中、キタキツネにも出会った。人を見ても逃げ出さず、じっと何かを待っているような素振りなので、人間から餌をもらうことを覚えてしまったのか。

  10:20、雌阿寒温泉に帰着。野中温泉旅館で山の汗を流す。内湯も露天風呂もぬるめの適温に保たれていて、快適な入浴を楽しんだ。湯に硫黄の香りがするのも嬉しい。

    
                        オンネトーからの雌阿寒岳と阿寒富士

  入浴後、オンネトーを訪れる。湖畔に立つと、左側に雌阿寒岳が、右側に阿寒富士が、一幅の絵画のようにきれいに姿を見せていた。

  それからが長いドライブだった。正午、オンネトーを後にして足寄に戻り、士幌〜新得を経て、狩勝峠を越え、富良野盆地に下る。そして富良野盆地を北上し、十勝岳山麓の白金温泉ホテル・パークヒルズに夕方5時到着。300kmの距離を、食事休憩を含め、一般道だけで5時間で走った。

 

7月7日(日曜日)   【雨の中、富良野を見物】  

  朝から雨。予報では終日降り続く。今日の登山はさっぱり諦める。そうと決まれば、チェックアウトも10:00で良い。FKさんと朝ビールを楽しんだ。

  この日は、富良野のラベンダー畑を探勝。上富良野町の日ノ出山公園と、中富良野「ファーム富田」を見物。その後、旭川ラーメン村へ行き、2軒ハシゴ。味噌ラーメンと塩ラーメン、とても美味。

   (ファーム富田のラベンダー畑)

  この日は再び十勝岳の山懐、十勝岳温泉「ホテル・バーデンかみふらの」に投宿。洒落た造りの館内は、登山など抜きにして、のんびり数日を過ごしてみたい雰囲気だ。夕食は品数が多く、料理も美味しい。温泉も快適。英気を養って、明日は何とか十勝岳を登りたいな...。

 

7月8日(月曜日)  無情の雨で十勝岳を断念】  

  夜半から本格的な雨となり、夜が明けても一向に衰えず。雨は朝のうちに上がり、晴れるとの予報なので、部屋の中で待つ。しかし、一向に雨勢は変わらず、待てる最終限度の9時が過ぎてしまったので、断腸の思いで十勝岳登山を諦めた。

  この日は麓の二箇所の温泉で時間を潰し、食べ過ぎの身体をサウナで絞る。FKさんは、その間ラベンダーの丘を車で見物。「雨後晴れ」という予報は真っ赤な大嘘で、夕方まで降り続いた。

  大雪山旭岳温泉には、初めて山道らしい山道を走った。それでも、道幅は十分広い。宿に入る前、旭岳ロープウェイ駅で情報収集し、ビジターセンターを見学。ロープウェイから、雨具を装着した熟年登山者が大勢降りてきたのでビックリ。こんな天候でも、やはり登る人は登るのか。

  この日の宿は「大雪山白樺荘」というモダンな造りのログハウスだ。「ユースホステル」を兼ねていて、客層も若い。ひとつだけ気に入らなかったのが、朝予約したのに、食材が無いので、夕食はカレーライスだということ。大食堂で、品数豊富な夕食を、お酒を飲みながら楽しく食べる人々のすぐ隣で、カレーライスをそそくさと食べさせられるのは釈然としない。それもここを管理する若者達の、すれていない対応の良さで目をつむろう。明日の好天を祈り、信じて、北海道最後の夜を過ごす。

 

7月9日(火曜日)    【念願叶い、快晴の旭岳を登頂】 

  2日連続の雨天で落胆したが、天の神様はバランスを取ってくれたのか、最終日を迎えた我々に、願っても無い好天を提供してくれた。早朝、まだ陽の当らない連峰が、青空の下に真正面に聳えていた。

    ようやく迎えた快晴の朝

  ロープウェイ始発は6:00である。混雑を予想して早目に宿を出て正解だった。乗り場は熟年登山者で大賑わいだ。満員の始発ロープウェイを姿見駅で降りると、爽やかな高原の冷気に身体が包まれる。真正面には、煙を吐き出す旭岳が逆光で黒々と佇んでいた。

     
                      逆光に浮かぶ大雪山最高峰、旭岳

  旭岳を目指し遊歩道を歩く。直ぐに、高山植物の花畑が姿を現した。緑の草原の中に、色とりどりの可憐な花が咲き誇る。白いチングルマ、ピンクのツガザクラ、黄色いミヤマキンバイなどが草原を彩る。草原から一段高く登ったところが、姿見の池だ。噴煙と旭岳の姿をきれいに映し出すのが特徴であるが、風が強くて小波が立ち、この時間では山は逆光で黒々としていた。周囲には残雪もある。

  中腹から盛んに煙を吐く旭岳の右側の稜線を登って行く。涼風の中の爽快な登山だ。登るにつれて、山麓の大原生林の緑が鮮やかに広がる。本当に北海道の大自然は広大だ。この見はるかす大原生林には、人跡未踏の地が沢山あるに違いない。姿見駅から歩いてきた花一杯の草原も、所々に瞳のような池をちりばめている。周囲の山々は、角が取れて優しい姿だ。

   
        旭岳山頂にて                            山頂の花畑とトムラウシ

  火山特有のザクザクの地面を踏みしめて高度を上げて行くと、展望はますます広がる。姿見ノ池から一時間余りかけて尾根を登り切り、北海道最高峰、2,290mの旭岳山頂に立つと、360度の大展望が待っていた。中部山岳や東北の山々を登れば、何かしら自分の知っている山がいくつか指呼出来るのだが、初めて訪れた北海道の山々は、私が視認できる山は全くない。地図を広げて山座同定する。

    層雲峡方面へ続く山並

     南のトムラウシ山を見る 

    更に南には十勝岳が

  この旭岳から層雲峡方面に連なる大雪山系の、その南へ稜線を伝うと、黒々とした鉄兜のようなトムラウシが見える。そして、その先には、中腹から煙を吐く十勝岳の鋭鋒が見えた。二日間雨に祟られて登れなかったが、いつか必ず、あの頂に立ちたい。雲海の下の富良野盆地を隔てて、夕張岳がどっしりとした姿を見せる。百名山に数えられる幌尻岳は、この山域からずっと離れた南の彼方である。

  遙か南西の方角には、目を凝らすとコニーデ型の山が右端に立つ山の連なりが見える。あれは3日前に登った雌阿寒岳と阿寒富士か。北の彼方には、何と利尻山が姿を見せていた。針のような山頂を天に突き上げた特徴のある姿だ。

  下界は全て雲の下で、町も村も見えない。神々の住む山だけが、この雲海に浮かんでいた。山腹からもうもうと噴煙を吐く旭岳の山頂は、意外にも草原になっていて、花畑があった。

  山頂は人が次第に増え、風が強いので、往路を少し下った岩陰で、ビールで乾杯し、おにぎり弁当と辛ラーメンの登頂祝をする。山上のブランチは最高の味だ。人が居なくて、風が当らないからと選んだ場所だったが、大勢のハイカーが、我々の姿を見てまねて、続々と近くに陣取るようになり、随分賑やかになってしまった。

     
                      順光になった下山後に仰ぐ旭岳

  姿見の池に下ると、すっかり順光になり池の水面は青空と旭岳を明るく映し出していた。遊歩道を反時計回りに歩く。登山客に加え、観光客も多い。山に登らなくとも、見て感激するものは一緒であろう。途中の見晴台でコーヒータイムを楽しみ、鏡池に下り、ロープウェイ駅に向かうと素晴らしいチングルマの大群落があった。これほどまでに一面に咲いたチングルマは見たことが無い。今日が最終日なのが残念。もっともっとこの素晴らしいパラダイスで花に囲まれてゆっくりしたかった。

    
       高山植物の花畑を歩く                              チングルマの大群落

  名残惜しみつつ、11時のロープウェイで下山。あんなにきれいに晴れていたのに、我々の滞在が終るのを待っていたかのように、大雪山の山頂付近は白い雲に覆われてきた。

  もし今日も山に登れずに帰京したら、大きなストレスが残ったことだろう。北海道に来るには、お金も時間もかかり、それがムダになる。しかし、狙った山3つのうち、2つを好条件で登ることが出来たのは、幸運だと言って良いだろう。終わり良ければ全て良し。

  軽やかな気分で山を下り、東神楽町の花神楽温泉で汗を流す。ここの露天風呂からは大雪山が見渡せる筈だが、すっかり山頂付近は雲を被っていた。爽やかな風に吹かれながら、あの白い雲の中にあった山上の楽園に思いを馳せた。

  この後、旭川〜深川を経て道央自動車道に乗り、一路新千歳空港へ。レンタカーを返し、空港内のレストランで祝杯をあげ、18:30発のANA68便で帰途につく。北海道有難う、素晴らしい感動をもらいました。そして全日空様にも、有難う!■

 

北海道の山と温泉巡りツアー行程実績

2002年7月5日(金曜日)
入間市5:48レッドアローで出発、7:30羽田空港到着。 羽田空港8:00--(ANA055)--09:35新千歳空港==トヨタ・レンタカー10:30 ===千歳東IC ==道東道=== R274 == 11:40夕張で昼食12:15 ===日高〜日勝峠==十勝清水==道東道==池田IC==R242==本別==足寄(ワイン、チーズ工房立寄り) ==R241== 16:00阿寒湖温泉 あかんパークインに投宿  (走行約320km)

7月6日(土曜日)
阿寒湖温泉5:00===5:20雌阿寒温泉(700m) 5:35--(1:00)--6:35四合目--(0:20)--6:55六合目--(0:45)--7:40雌阿寒岳山頂(1,499m)8:40--(1:40、往路を戻る)--10:20雌阿寒温泉(入浴) 11:50 ===12:00オンネトー12:10 ===足寄(昼食)==R241==士幌==鹿追==新得==R38 ==狩勝峠==富良野==上富良野== 17:00 白金温泉ホテル・パークヒルズ (走行約300km)

7月7日(日曜日)
白金温泉9:50 == 10:15上富良野、日の出公園10:45 ===11:00中富良野、ファーム冨田11:30 ===R237===13:00旭川ラーメン村(昼食)14:00 ===美瑛=== 15:30十勝岳温泉、ホテル・バーデンかみふらの (走行約170km)

7月8日(月曜日)
十勝岳温泉9:40 === 9:55ラヌイ温泉10:30 ===10:40中富良野温泉12:50===美瑛で昼食===14:50旭岳温泉RW駅、ビジターセンター見学===15:15大雪山白樺荘  (走行約80km)

7月9日(火曜日)
白樺荘5:30==5:35 RW山麓駅6:00==(RW)==6:10姿見池駅6:15--(0:15)--6:30姿見ノ池--(1:25)--7:55旭岳山頂(2,290.3m)昼食休憩9:00--(0:40)--9:40姿見池9:45 --遊歩道周遊-- 10:40姿見池駅11:00 ==(RW)== 11:10山麓駅11:15===12:00東神楽温泉花神楽で入浴12:45===旭川==(R12)==深川IC===道央道===14:40江別東IC==R337==15:45千歳トヨタ・レンタカー16:20 == 16:30 新千歳空港  (走行約230km、総走行距離約1,100km)

新千歳空港18:30---(ANA068)---20:05羽田空港帰着 MR、JR、西武利用で22:40入間帰着

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