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Data No. 81 & 82

 データ:
 登頂日: 2001年11月23日〜24日
 荒島岳標高 1,523m (福井県)
 大峰山標高 1,915m (奈良県)
 天候: 快晴
 登頂時の年齢: 47歳
 同行者: 単独行


荒島岳 ・ 大峰山

 


【久し振りに西の山へ】

  三連休は全国的に快晴が持続するとの予報に誘われ、かねてから気になっていた荒島岳(あらしまだけ)と大峯山(おおみねさん)へ出かける。11月22日19:00、車で出発。東名道〜東海北陸道を走り、深夜2時前にぎふ大和PAに到着して仮眠をとる

11月23日(勤労感謝の日) 

【深田久弥氏故郷の名山、荒島岳】

  荒島岳(あらしまだけ)を深田久弥氏が日本百名山に選んでいるが、決して評判は良くない。深田久弥の身贔屓と断じる仲間もいたそうだ。しかし、彼が故郷を誇り、愛する気持ちで選んだ荒島岳とはどんな山なのか、私自身も大いなる関心を持っていた。私が福井出身ならば、果たしてその山を選ぶであろうかと。

  ぎふ大和PAを早朝に出発して白鳥ICから福井へ抜ける国道を進む。途中、霧にまかれた九頭竜湖畔を通る。ダムを過ぎて大野市へ下る途中の勝原(かどはら)スキー場が、登山口になっている。寂しい集落だ。駐車場に車を停め仕度をする頃から、霧も晴れてきた。

  7:50、ゲレンデを真っ直ぐに登る舗装道を歩き始める。いきなりの急傾斜で辛い。一本目のリフトの上からも、舗装はされていないが、ススキの穂並がゆれるスキー滑走コースをそのまま登って行く。目指す荒島岳本体の姿は前山に隠されて見えない。足元には大野盆地の田園地帯が広がってきた。

  
           樹間から除く山体                          稜線から山頂を見る

  リフト最上部からは、ブナ林の中を登る。既にブナの葉は大方落ち、木々の間は透けて見える。膨大な量の落ち葉でぬかるみが大分カバーされていて、スパッツを持参しなかった私には幸いだ。途中一旦緩んだ傾斜は、シャクナゲ平へ向けて階段状の急登となる。左手に見える鞍部へたどり着くのかと思ったら、正面のピークへしっかり登らされた。

  この付近から荒島岳本峰の姿が樹間に見えてきた。なんと雪化粧している。登り切ったシャクナゲ平で、中出から小荒島岳を経て登ってくる道と合流する。荒島岳本峰の姿が左手に大きくのしかかって見える。結構立派な山容だ。

  
        山頂付近は意外にも雪化粧                     山頂から九頭竜湖方面を見下ろす

  シャクナゲ平から鞍部へ一旦下り、本峰への急登が始まる。そして今度は圧雪や凍結した斜面との闘いになる。これは想定外であった。私の履いているトレッキングシューズは、つま先とかかとが丸みを帯びているので、ケリが効かない。登りはまだ良いが、下りが心配だ。笹の葉や枝をしっかり掴んで登る。振返れば大野盆地と、すっくと立った小荒島岳の姿が美しい。

  
          荒島岳山頂にて                        霊峰白山は雪化粧していた

  凍結した急斜面を登り切ると、荒島岳、標高1,523mの山頂であった。10:05、2時間15分の登り。小さな荒島大権現の祠と、電波の反射板が立っている。先客は10人程度。空は薄雲が消えず肌寒い。それでも、遠望は利いた。北側には真っ白な白山が際立って美しい。九頭竜湖の付近には、霧が立ち込め、墨絵のよう。寒い山頂の電波反射板の下でガスコンロを灯し、軽食をを温める。缶ビール1本をやっと飲む。

  案の定、下山はよく滑った。笹の枝をしっかり掴んで恐る恐る下る。上空は青空が急速に広がってきた。陽光が当ると暖かい。山頂で着たヤッケを脱ぐ。往路をそのまま下り、12:25に駐車場帰着。

   【大野盆地から仰ぐ荒島岳】

  ただ山頂を往復しただけでは、荒島岳が如何なる山なのか分らない。この山は、当地に暮らす人々からどのように見えるのかを知りたくて大野盆地へ下る。大野市街の手前で、R158から左側へ入り、畑地から初めて荒島岳の全容を見た。

  低い晩秋の逆光の中に、荒島岳はすっくと立っていた。意外と威風堂々とした山ではないか。しかし、この位の見栄えの山なら、他にも沢山あると思うのは私だけではないだろう。深田久弥氏が選んだのは、故郷への強い思い入れの為であり、誰が百の山を日本中から選んでも、多少の身贔屓をしたくなる山はあるに違いない。このように没後数十年も経ってから百名山ブームを起こした深田氏が、故郷のこの山を選んだ気持ちを偲びながら、しばし私は荒島岳を眺めた。

  しかし、当地の人々には、地元の名士深田久弥氏が百名山に選んだ荒島岳を盛り立てようという気持ちが感じられない。登山口付近には何の商店も案内も無い。私自身、一度登山口を見落として通過してしまった程だ。勝手に探して、勝手に登りなさいと言うことか。登山客相手に飲物やバッヂを売ろうという店の一軒くらいあっても良い。登山口となる勝原駅近辺には、全くそのような施設は無かった。

  大野盆地からR158を引き返す。途中、数箇所の温泉に立ち寄り、奈良県吉野の奥地、天川(てんかわ)村へ車を進め、深夜黒滝村の道の駅駐車場で車中泊。寝袋に包まり、毛布をかければ寒いことは無い。

 

11月24日(土曜日)

【大峰山最高峰、八経ヶ岳】

  夜明けを待ち、車を更に山奥の天川村へ進める。カーブの多い狭い山道を走ったかと思うと、オレンジ色の照明付の立派な長い真っ直ぐなトンネルをくぐる。何か、神秘的な別世界へと導かれるよう。ひなびた天川村の集落を越すと、川沿いの、すれ違いもままならない狭い山道になる。そして川から離れるとぐんぐんと標高が上る。7:00、八経ヶ岳(はっきょうがたけ)への登山口、行者還トンネル西口に到着。トンネルは閉鎖されているが、登山客の車で駐車場はほぼ埋まっていた。「長岡」ナンバーの車が2台到着し、懐かしい言葉をしゃべるグループが登山の仕度を始めた。全国各地から百名山ハンターがやってくる。

  
          行者の像がある聖宝の宿跡                        山頂部が見えてきた

  7:20出発。川に沿った平坦な道を歩き出すが、やがて原生林の中の急登が始まる。昨日も荒島岳に登ったので、体調は良い。快調に飛ばして、先発の数グループや団体を追い越したら、嘘のように静かになった。やっと自分のペースで歩ける。

  8:00、稜線の奥駈道に合流する。修験道行者が辿る道に出たのだ。私が今日歩く道は、修験道行者には申し訳ないほどの、八経ヶ岳への最短コースである。とはいえ、1,900mを越す山頂への登りは、楽をさせてはくれない。寒い陽気なのに、汗がにじみ出る。

  弁天の森という1600mのピークを越して、アップダウンを繰り返して行き、行者の像が立つ「聖宝の宿跡」を8:45に通過。ここから弥山への本格的な登りとなる。トウヒやシラベの森の中をジグザグに急登して行く。下りのハイカーとのすれ違いが増える。小屋に泊った人達であろう。やがて発電機の音が聞こえ出し、坂を登り詰めたところが弥山(みせん)山頂の弥山小屋だ。森の中の落ち着いた静かな小屋だ。ここで小休止。

   弥山からの八経ヶ岳

   
   いつか訪ねた大台ケ原 

  最高峰八経ヶ岳(はっきょうがたけ)へは弥山から緩く下り、登り返す。弥山から下る途中で、すっくと三角錐をもたげた八経ヶ岳の姿を初めて目にした。この山も既に雪が降ったらしい。しかし、道は山の管理者が撒いたのか、それとも自然にそうなったのか、うまい具合に圧雪の上に砂が層を作っていて滑らない。この付近はオオヤマレンゲの群生地で、シカの食害から守るために至るところに柵が張り巡らされ、登山者は何度も鉄柵のドアを開け閉めしながら登る。しかし、季節柄か、柵の効き目か、シカの姿は見なかった。

         八経ヶ岳頂上で

  9:50、八経ヶ岳山頂に到着。標高は1,914.9mで近畿地方の最高峰だ。360度の大展望が広がる。修験道行者が駈ける山上ヶ岳からの奥駈道ルートが見える。アップダウンの厳しいコースだ。先ほど通過した弥山の山肌は、縞枯れ現象を見せる。他の登山者の話を聞いて、大阪湾が西に見えていることを知った。至近距離では大台ケ原がゆったりとその姿を横たえる。いつか走った山頂へ続く道路が山腹につけられた痛々しい傷のよう。無風快晴の山頂は至極快適であり、ゆっくり腰を据えて食事休憩とした。

  奥駈道が延びる大峰山の稜線

     縞枯れ現象を見せる弥山 

  この山頂を訪れる人々は、様々な目的を持っている。厳しい奥駈道を踏破する為に5分も休まずに次のルートへ出発するグループ、ひたすら写真を撮る熟年ハイカー、そして圧倒的に多いのが百名山ハンター達だ。彼らの多くはこの連休を利用した数日間に、大台ケ原を訪ね、今日は八経ヶ岳、明日は伊吹山というように、一度に幾つもの百名山を踏破する。

  百名山ハンター達の多くは、あまり周囲の景色に関心を持たず、山頂標識の前で証拠写真を撮ると、さっさと下っていく。人より短時間で登ったことを吹聴するオヤジもいる。そして百名山以外は興味が無いとさえ豪語する。私も、ゆくゆくは百名山を完登したいが、もう少し一つ一つの山に敬意を払って、大切に登りたい。そして百名山だけが日本の名山ではないことも常に認識していたい。

      静かな森の中の弥山頂上(帰路に撮影)

  山頂で小一時間休憩後、往路を戻る。登りが急であっただけに、下りも足に負担がかかる。久し振りに筋肉痛を味わいそう。好天下で、帰路につくのがもったいない気にさえなる。12:50、行者還トンネルに帰着。

  天川村に下り、「天ノ川温泉」にて汗を流す。湯に身体を沈めるとジワーッと足腰の疲労が溶けて行くようだ。その後、山上ヶ岳(さんじょうがたけ)の登山基地となっている洞川(どろかわ)にも足を伸ばしてみた。ここでは女人禁制となっている修験道の山上ヶ岳に、いつか是非登ってみよう。公共交通機関も発達しているので、長距離のドライブを避け、電車+バスでも良いだろう。

  冬間近で、紅葉も終わり、本来は決して登山適期ではなかったが、晩秋の穏やかな高気圧に覆われ、快適な登山を楽しめた。疲れは溜まったが、思い切って行って良かったと、満たされた気持ちで帰途につく。■

 

【荒島岳と大峰山登山行程】

11月22日(木曜)
入間19:00===(厚木IC〜東名道〜東海北陸道)===1:50ぎふ大和PA(仮眠)

11月23日(金曜、勤労感謝の日)
ぎふ大和PA6:10===白鳥IC===R158===7:25勝原スキー場(400m)7:50 --- 8:20 リフト最上部 --- 9:17 しゃくなげ平 --- 10:05 荒島岳山頂(1,523m) 10:40 --- 11:15 しゃくなげ平 --- 12:00 リフト最上部--- 12:25 勝原スキー場 12:40 === 13:20 六呂師温泉 13:50 === 14:25九頭竜温泉15:05 === 16:15白鳥温泉16:50 === 17:05やまと温泉17:35 === 19:50津島市、尾張天空の湯温泉(夕食)21:10 ===東名阪道、名阪国道〜天理IC===0:25黒滝村道の駅(車中泊)

11月24日(土曜)
黒滝村道の駅6:15 === 7:00天川村、行者還トンネル西口(約1100m)7:20 --- 8:00奥駈道合流点--- 8:15 弁天の森(1600m) --- 8:40聖宝の宿跡 --- 9:20弥山小屋(1,895m)9:30 --- 9:50八経ヶ岳(1,915m)10:40 --- 11:00弥山小屋11:05 --- 11:35聖宝の宿跡 --- 12:00弁天の森 --- 12:15奥駈道合流点12:20 --- 12:50 行者還トンネル西口13:00 === 14:00天ノ川温泉14:50 === 洞川=== 15:50下市温泉16:35 === 18:05大宇陀温泉18:40 === 針IC === 20:20名阪国道伊賀SA(夕食)21:00 === 21:40四日市湯遊温泉、ユーユー会館(宿泊)

11月25日(日曜)
ユーユー会館8:00 === 東名阪道〜東名道 === 12:30 厚木IC === 14:00 入間

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