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Data No. 62

データ:
登頂日: 1995年8月18日〜19日
標高  1,695m
場所: 奈良県
天候: 快晴
登頂時の年齢: 41歳
同行者: 単独行

 

大台ケ原

& 鈴鹿、御在所岳

 


8月17日(木曜)

【初めての関西の山へ】

  11:00に入間を出発し、一路奈良へ。相模原〜厚木ICを経て初めて東名道をドライブ。日の陰る頃名古屋から東名阪道に。その終点から、まるで高速道路と変わらない無料の名阪国道を飛ばして奈良県に入る。地図を頼りに南に進路を取る。榛原を経て吉野方面に向かうが、町の中はどうしても分りづらい。ようやく「大台ケ原」という道路標識を見た時はほっとした。

  異境の地に来たような気がする。走っている車は当然のことながら全部関西のナンバーだし、コンビニに寄っても、道を尋ねても、人々の話す言葉は、私の生活圏とまるで抑揚が違う。ここは本当に同じ国だろうか?

  大台ケ原は、ウンザリするほど山奥で、人里から離れた場所だった。入間を出発後、10時間余りかけ、ようやく21:45に大台ケ原の広い駐車場に到着した。コンビニで買ったおにぎりでようやく遅い夕食をとる。超長時間運転の疲労で、缶ビール一本だけでかなり酔いが回り、車の中で大の字になって眠る。パノラマルーフ越しに満天の星が明日の好天を約束していた。
 

8月18日(金曜)

【大台ケ原を周遊】

  5:30、目を覚ます。駐車場にはかなり車が増えた。今日は山登りと言うよりもハイキングなので緊張感もなく、ゆっくり、のんびり朝食をとる。申し分のない快晴だ。

      日本庭園を歩くよう。

              最高所、日出ヶ岳にて  

  6:30、東大台一周コースに足を踏み出す。大台荘という建物の脇から、大台ケ原の最高地点である日出ヶ岳を目指す。良く整備されたハイキングコースだ。朝の空気はキリリと冷えて気持ちが良い。森の中の道は自然観察コースになっていて、要所に解説があるので、じっくり歩けば良い勉強になる。階段状になった登り斜面を歩くと、野生の鹿が沢山いた。私の動静をじ〜っと見張っている。彼らは、私が「わ〜っ!」と叫べば、一目散に逃げて行くのだろうか。それともエサが目当てなのだろうか。

  しばらく行くと山の稜線に出て、左に更に登ったところが最高点の日出ヶ岳(標高1,695m)だった。コンクリート製の展望台がある。熊野灘が見えるとのことだが、今日は夏の暑さで下界は霞み遠くは見えない。周囲、見渡す限り山また山の世界である。人里は全く見えない。紀伊半島の内陸であるこの地は雨が多いことで知られる。その為か、隙間無く樹木にびっちりと覆われた山々の姿だ。関東近辺では見られない雰囲気であろう。

  山頂を下り一旦鞍部に戻り、周遊コースを歩く。ゆるく登り返した山の頂付近は、見事なまでの白い枯れ木林だ。これらの樹木が茂っていれば薄暗い森なのであろうが、ここは陽光を遮るものが無く、地面は明るい笹原である。何故このように樹木が枯れ果てているのだろう。そして何故新しい樹木があまり成長していないのだろう。立て札にはトウヒの原生林となっている。

   立ち枯れが目立つトウヒ原生林


         正木ヶ原にて 

  更に下ると正木ヶ原という平坦地に着く。笹の茂った原に倒木やトウヒの樹木が程よく配置され、ちょっとした日本庭園の趣だ。鹿の群れがあちこちに見え、やはり人間の動きをじっと窺っている。尾鷲辻という十字路を過ぎ、緩やかに登ると今度は「牛石ヶ原」という草原だ。神武天皇の銅像が立ち、枯れた小さな池があった。それにしても、日本で一番雨が多いというこの地で、何故これほど枯れ木が多いのだろう。

  凛々しい顔の神武天皇像 

  再び道は樹林帯に入り、シャクナゲの木が目立つ。一旦回遊コースを逸れて、「大蛇ー(だいじゃぐら)」と呼ばれる場所に足を運ぶ。標高が一番高いところで1700mに満たない山だから、期待せずに行ったが、度胆を抜かれた。痩せた岩尾根が突然、千尋の深さの谷底に切れ落ちている。凄まじい高度感の絶壁だ。先端には鎖が張られてあるが、そこまで行くのさえも恐怖だ。こんな所で落ちて死んだら、誰にも発見されないだろう。大きな驚きと感動を持って、しばらくこの場所を動けなかった。一人でゆっくり景色に見惚れていたが、次第に人の数が増えだしたので、特等席を譲り、周遊コースに戻る。

  
                           大蛇ーから絶壁の底を見る

  周遊コースは、そのあと「シオカラ谷」へ向かって急降下する。沢の音が大きくなってくると、小さな吊橋のかかった渓流に出る。家族連れなどが数組休憩していた。冷たい水に手を浸すと、気持ち良い。私もここでコーヒータイムとし、しばし休憩。

        家族連れが憩うシオカラ谷

  シオカラ谷から駐車場へは、急降下した分だけ、急な登りとなる。汗がどっと吹き出た。それまでが至ってなだらかな所ばかりだったので、最後のこの登りは少しこたえる。駐車場に帰着すると、午前10時の時報が土産物屋のラジオから聞こえた。約三時間半の東大台一周ハイキングであった。

  10:30、大台ケ原を後にする。これから登ってくる車が増え、すれ違いに神経を使う。しかし、当地のドライバーは、譲り合いの精神や礼儀に欠ける。この大台ドライブウェーは、昨夜は暗くて気が付かなかったが、つづら折の急坂が無く、カーブも傾斜も緩やかな道が延々と続く。むしろ、この大台ドライブウェーよりも、麓の国道の方が、よほど粗末で狭く、大型バスとすれ違えず、無理やりこちらがバックさせられた。関西人は実に自己主張が強い。関東・東北の人間と、これ程までに気性が違うものか。

  山頂の案内所で教えてもらった入之波(しおのは)温泉に向かう。山鳩湯という旅館が外来入浴を受け付けるとのことなので、勇んでタオルを片手に行った。ひなびた山間の旅館の浴室で、赤褐色の湯がとうとうとあふれる浴槽に身体を沈めると、適温でしかも湯触りがとても気持ち良い。群馬の伊香保温泉の湯をもっと濃くした感じ。露天風呂は無かったが、窓からそよ風がほてった身体を冷ましてくれる。

  更に山道を下って奈良盆地を北進する。下界は猛暑だ。この日は鈴鹿山地の湯ノ山温泉に宿を取り、16:00に到着。もう何処にも外出せず、温泉に浸かり、美味い料理を楽しみ、冷たいビールを飲んでぐっすり眠った。
 

8月19日(土曜)

【鈴鹿、御在所岳を探訪して帰途につく】

  朝食後、温泉街のすぐ裏手から鈴鹿山脈の御在所岳に長いゴンドラで登る。ゴンドラからの、迫り来る御在所岳の景観は実に素晴らしい。頂稜付近はごつごつとした岩が突き出ていて、標高が僅か1,200mあまりの山にしては第一級の迫力を持つ山容である。

   迫力のある御在所岳の山容

  豪壮な岩山で、期待に胸が膨らむ 

  そんな外観を持った山だから山頂では、どんな素晴らしい世界が待っているのだろう、と期待を胸に山頂駅に着いて、思いっ切りがっかりした。麓から仰ぎ見たあの岩山の風貌が何処にも無い。頂上一帯はスキー場のゲレンデであり、子供向けの動物園や植物園などに全て人工的に改造されていた。山頂展望台に行くリフトも、アナウンスが喧しい。

    山頂は平凡なスキー場と遊園地だった。

                  御在所岳山頂にて  

  山頂展望台に上がったが、夏の暑さで遠景はボーっと霞んでいる。見えるのはお城の形をしたレストランや、近隣の凡山ばかり。夏休みのため、続々観光客がくるが、彼らは満足するのだろうか。それとも始めからこんなものと知って来るのか?登りのゴンドラの中で聞こえた、人々の景色に対する感嘆や感動の声は、山の頂上では、ついぞ聞こえなかった。

  10:00、ホテルに戻り、車で出発。何だか消化不良なので、北へ向かって滋賀県の伊吹山を登ってみようと考えた。ところが、折角2時間もかけて行ったのに、夏休みだというのに、伊吹山ドライブウェーは道路補修のため全面閉鎖。数年前に来た時と同じだ。そんな情報はもっと前に道路標識などでドライバーに通知してほしい。多くの車が私と同じようにドライブウェーの入口まで来て、がっかりして引き返して行く。馬鹿馬鹿しさがつのり、怒る気にもなれない。

  消化不良は結局治まらなかったが、予定よりも早く帰路につく。中央道を経て夕刻帰宅。

  関東近辺では決して味わえない大台ケ原の奥深さは期待以上のものであったが、御在所岳や伊吹山は大いに期待を裏切られた。ゴンドラに乗ったり、車道で山頂へ向かうような山は、あまり期待してはいけないのだろうか...。■

 

大台ケ原と御在所岳行程

8月17日(木曜)
入間11:00===12:45厚木IC===(東名、東名阪道)===21:45大台ケ原駐車場

8月18日(金曜)
駐車場6:30---日出ヶ岳(1,695m)---正木ヶ原---牛石ヶ原---大蛇ー---シオカラ谷---10:00駐車場10:30===11:30入之波温泉12:30===16:00湯ノ山温泉宿泊

8月19日(土曜)
8:20〜10:00御在所岳をロープウェイで探訪
湯ノ山温泉10:00===12:00伊吹山ドライブウェイ入口12:10==(名神、中央道)=== 18:30入間、帰宅

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