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Data No. 51

データ:
登頂日: 1990年4月30日
標高 2,189.8m
場所: 長野・岐阜県境 
天候: 快晴
登頂時の年齢: 36歳
同行者: 単独行

 

恵那山

 



【中京地方の人々自慢の名山】

  快晴の中部山岳の山では、しばしば中京地方の登山者達が、「あっ恵那山が見える!」と感嘆の声をあげる。お椀を伏せたような形のその山は、特別際立った峰でもないが、さぞかし彼らには自慢の山なのであろう。私の勤務する会社の工場は、その麓の長野県飯田市にあるものの、恵那山を市内から視認したことは無い。しかし、全く縁もゆかりも無い山ではないので、GWの休みを利用して行ってみる。

4月29日(日曜)〜30日(月曜)

  17:20、自宅出発。連休で渋滞しているかもしれない高速道路にお金を払うのはイヤなので、伊那まで一般道を走り、22時過ぎようやく「伊北IC」から中央高速に乗る。恵那山トンネルを潜り抜け、0:20に中津川ICを降りる。道に迷いながら、恵那山登山口へと続く中津川渓谷沿いの林道に入る。車一台やっと通れるくらいの砂利道である。周囲に人家の気配は全く無く、暗夜の深い林の中をヘッドライトを照らしながらのドライブは気持ち悪いことこの上ない。カセットステレオの音楽で気を紛らして奥へと進む。

  不意に道が広くなり、ヘッドライトが数台の車を照らし出した。どうやら黒井沢駐車場に着いたようだ。時刻は深夜の1:30。車を停めてエンジンを切ると、キーンと耳鳴りがする程の静けさに襲われる。車は数台あるものの、人の気配は無い。こんな不気味な所では、早く酔っ払って、車のドアをしっかりロックして寝てしまうに限る。缶ビールを飲み干して後部座席に横になる。
 

【素晴らしい快晴、しかしストレスの溜る登山】

  5:30、明るさで目を覚ます。外は快晴だ。明るい新緑の谷間は、昨夜の不気味さが嘘のように、清々しい空気が満ちていた。二人連れが登山道に向かっているのが見えた。ああ、ほっとする。

  
      清澄な黒井沢の流れ                  樹間から目指す恵那山頂上が見える       

  朝食を済ませ、6:20に出発。黒井沢沿いの道を緩く登ってゆく。黒井沢休憩所という小屋から本格的な山道になり、ジグザグの急坂を喘ぐ。霜柱が足元でサクサクと乾いた音を立てる。鬱蒼とした山道を登るに連れて残雪が厚くなり、しかも硬く凍っていて、陽の当たらない山腹を横切るルートでは谷側に滑り落ちそうで、緊張する。軽アイゼンでも持って来れば良かった。途中に、「局所豪雨頻度の高い地域」という標識が見える。この地域は降雨量のとても多い地域なのだそうだ。

  やがて、暗い樹林帯から明るい尾根に出ると、真っ白な雪を戴いた中央アルプスの山々が視界に飛び込む。真っ青な空の下、純白の高峰の眺めは、疲れた身体から、馬力を引き出してくれるに相応しい素晴らしさだ。伊那谷を挟んで、南アルプスの連嶺も中空に浮かぶ。この天気ならば、山頂での大パノラマが大いに期待できる、と思っていた。

  
        キャンプ場のある野熊ノ池                   残雪豊富な恵那山中腹と目指す山頂

  傾斜が緩み、笹薮に囲まれた小さな「野熊の池」に出る。水場があるので、幾張りかテントがあった。さらにカラマツ林をジグザグに登り、尾根に出ると、ようやく目指す恵那山の頂上が見えてきた。頂上まですっぽりと針葉樹林に覆われている。一旦尾根から離れ、残雪で滑り易い山腹を巻くようにして足を進めて行くと、高原状の台地になった広場に恵那山頂上小屋が現れる。山頂は、そこから更に東南の方向に緩く登った所であった。9:10になっていた。

     恵那山頂上にて、展望は良くない

 辛うじて見える御岳、乗鞍岳、北アルプス 
 

  標高2,189.9mの恵那山頂上はとても広い。しかし、びっしりと生い茂った樹木が視界をひどく妨げる。遠景の写真を撮ろうにも、折角の好天の下に聳えるアルプスの山々は樹木の隙間から僅かに覗くだけで、何だか消化不良の気持だ。相手は大自然なので、景色を妨げる樹木を伐採しろとは言わないが、見たい芸能や催しが、人垣が邪魔で断片的にしか見えない時のようなストレスを感じる。それにしても、2000mを越す山頂で、よくもこんなに樹木が真っ直ぐ、高く育っているものだ。山頂付近は何処を向いても、遠方がきれいに見渡せる場所は無い。快晴の初夏の陽光に照らされ、下からは残雪の強い照り返しを浴びる。

  避難小屋から反対側のピークにも登ってみたが、景色の見え方に大差は無かった。木曽御岳と乗鞍岳だけが、それでも気持ち良く姿を見せる。山頂付近の残雪は優に70cmを越えていたのではないだろうか。堅く締まった雪面には靴の足跡さえも出来ない。避難小屋の前に座って軽食をとる。近くにいたグループは、しばしばこの山に来るらしく、「私は3回目」、「ボクは5回目」などと、この恵那山の登山歴を吹聴する。へえ、何が良くてそんなに何回も来るのだろう。恵那山と恵那山自慢の地元の人には悪いが、私にはこれが最初で最後だ。こんなに素晴らしい五月晴れに恵まれながら、こんなに消化不良を感じる山は、今まであっただろうか。

       
                  下山中、山頂よりも眺めの良い地点で南アルプスを望む

  9:55、下山開始。往路をそのまま戻る。山頂よりも、途中の尾根筋のほうが遥かに眺めが良い。黙々と一人で下って行くと、これから山頂を目指す人々に大勢出会った。登りの時には堅く締まっていた日なたのルートは、既にグチャグチャのぬかるみになっていた。陽射しの強さを認識させられる。登りでは全く汚れることのなかった私の登山靴は、下りでは目一杯泥だらけになった。

  12:15、黒井沢駐車場に帰着。中津川へ戻る狭い林道は明るい日中になってみると、結構な坂道であったことに驚いた。道理でセカンド・ギアでしか走れなかった訳だ。

  麓の中津川は半袖のTシャツ一枚で充分な暑さだった。運転中はエアコンを使ってしまうほど。折角のGWに真っ直ぐ郷里に帰るのもつまらないので、中央道、長野道を経て、長野市内のビジネスホテルに一泊する。普通ならば念願の山の登頂祝をささやかに居酒屋でやりたい気持ちになるが、こんな晴天下でありながら、ストレス満点の山の体験には、疲労感のほうが強くて部屋でビールを飲みながらコンビニ弁当を食べた。

 

恵那山登山行程

4月29日

入間17:20 === 青梅、奥多摩 === 19:30 塩山 == 甲府 ==R20== 22:20 伊北IC ==(中央道)== 22:50 駒ヶ岳SA 23:30 === 0:20 中津川IC ==(恵那山林道)== 1:30 黒井沢登山口

 

4月30日

黒井沢登山口 6:20 --- 6:45 黒井沢休憩所 --- 7:30 野熊の池 7:35 --- 9:05 山頂避難小屋 --- 9:10 恵那山頂上(2,189.8m) 9:55 --- 11:05野熊の池 11:10 --- 11:45黒井沢休憩所 11:55 --- 12:15黒井沢登山口 12:30 === 中津川 === 中央道、長野道、R19 == 16:50 長野(ビジネスホテル宿泊)

 

5月1日  長野から十日町の実家へ

 



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