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Data No. 49

データ:
登頂日: 1989年10月14日
標高 1,700m
場所: 福島県
天候: 晴れ
登頂時の年齢: 35歳
同行者: Y夫妻

 


安達太良山

 


【智恵子抄の山へ】

  高村光太郎の「智恵子抄」で、有名な山だ。この山は、その乳首のような特徴ある姿を、東北本線の車窓からも見ることができる。従姉のF子さん夫婦が、最近山登りに熱を上げ、是非どこかに連れて行ってくれとの要請があったので、検討の結果、この山を選んだ。季節も紅葉の真っ盛りのようだ。

10月13日(金曜)〜14日(土曜)

  車で入間を22:00出発。東北道を北上し二本松へ向かう。天気は快方に向かうとの予報だったが、時折雨が激しく降る。本当に回復するのかと心配になる程、湿った空気が北関東を覆っていた。二本松ICを降りて、岳温泉に向かう頃から漸く雲が切れ、岳温泉を過ぎ、登山口である奥岳温泉に着く頃には、満天の星空も出た。既に夜中の2時、軽くビールを飲んで車中仮眠。
 

【晴天に恵まれ、紅葉の山へ】

  5:30、目を覚ます。快晴とは行かないが、青空が広がりつつある。標高が950mの奥岳温泉からは、足元に素晴らしい雲海が見えていた。コーヒーを沸かし、軽く朝食を済ませて、6:35出発。

  指導標に従い車道を10分登ると、分岐があり左手が「五葉松平」、右が「勢至平」となっている。我々は登りに五葉松平を経て、下山に勢至平を歩く。スキー場造成中の斜面はひどくぬかるんでいた。ブルドーザーで樹木を伐採された斜面は痛々しい。スキー人口が増えるに連れて、自然破壊が進むのは心が痛む。残っている樹木の紅葉が、山肌の出血のよう。登山に関心の無い若者達は、こんな自然破壊が進んでいることなど想像もせず、新スキー場オープンの知らせに嬌声を上げて押しかけて来るのだろう。

     
                                                  鮮やかな紅葉に包まれた中腹

  1時間程登るとスキーリフトの最上部を過ぎ、本来の登山道となる。更に30分登ると傾斜が緩み、なだらかな台地状の五葉松平に出た。そして行く手には、こんもり丸い頂にぽつんと岩峰を載せた安達太良山が姿を現す。この山の別名「乳首山」そのままの姿だ。その右隣には、対照的に黒い岩がゴツゴツとした鉄山が屏風のように天を圧する。そして山の中腹は、息を呑むほどに広大で、カラフルな黄葉・紅葉の絨毯が見渡す限り広がっていた。

    
                   乳首のような安達太良山を目指す。五葉松平にて。

  五葉松平を過ぎると、「乳首」に向けて、ぐるりと弧を描く稜線伝いに歩く。頂上に近付くと、赤茶けたガレの山肌となる。最後のひと頑張りを、夫婦を励ましながら登って行くと、いよいよ其処だけが異質の黒い岩が突き出た「乳首」部分の登りだ。今日の行程で一番急な箇所だった。

            山頂乳首の直下にて 

  9:25、標高1,700mの安達太良山頂上に到達。周囲を見回すと磐梯山や吾妻連峰は雲を被っている。しかし、この安達太良連峰だけは気持ち良い青空の下だった。風の当たらない岩陰に腰を降ろし、食事をとりながらワインで身体を温め、ゆっくり休憩。

       安達太良山頂上にて

  休憩後、鉄山迄足を伸ばす。乳首を下り、牛の背と呼ばれる稜線を歩く。樹木は全く無く、中腹の原生林とは全く異なる「死の世界」だ。小ピークを越すと今度は馬の背と呼ばれる稜線を行く。左下には月世界のような沼ノ平の噴火口跡が姿を見せる。荒々しい白褐色の噴火口跡の底部は、平らな砂漠だ。彼方には裏磐梯の秋元湖、小野川湖、そして檜原湖も湖面を光らせる。

   稜線左下は沼ノ平と裏磐梯の湖沼

 稜線右下くろがね小屋を見下ろす 

  稜線の反対側は、対照的にカラフルな暖色の原生林と、赤い屋根のくろがね小屋が佇む。稜線を境に死の世界と生の世界が展開する。出発が早朝だったので、頂上迄に出会った登山者は10人足らずだったが、くろがね小屋方面から続々と人が登ってきた。

  鉄山は安達太良山より9m高い1,709mだが、全く人気が無かった。本峰は今頃大勢の登山客で賑やかであろうが、ここはいかにも寒々としていた。安達太良連峰は、この更に北に、もっと標高の高い箕輪山が連なるが、あの「乳首」だけに人が集中する。

  鉄山を後に、下山にかかる。馬の背に戻り、急斜面を斜めに下る細い道に入る。滑り易く歩き難い道でY夫妻のため慎重に歩いたので、かなり時間を喰う。くろがね小屋に近付くと漸く安心して歩ける道になる。そして再び素晴らしい紅葉に目を向ける余裕が戻ってきた。

     
                             
本当に鉄の塊のような鉄山を仰ぐ

  麓の岳温泉の源泉である「くろがね小屋」付近は、硫黄の臭いを漂わせる湯が噴出する。当然この小屋にも温泉があり、全国的にも珍しい、温泉に入れる山小屋だ。この頃から上空に次第に雲が広がり始めてきたので、小屋前で休憩後、早々に下山にかかる。

  くろがね小屋を振り返る 

  小屋からの下山路は、ジープなら走れる道だ。案の定、雨が降ってきた。広い道だが、ぬかるむと歩き難い。雨具を装着してとぼとぼと下る。勢至平は、登りに通った五葉松平よりも広々としていたが、雨のせいで景色は劣る。「七曲り」の急斜面の下りを経て、15:00、漸く駐車場に帰着。泥だらけですっかり水気を含んだ登山靴を脱ぎ去り靴だけを履き替え、今宵の宿の岳温泉へ。

  Y夫妻が手配してくれた岳温泉「富士急しゃくなげ荘」に投宿。快適な温泉に浸かり、素晴らしかった安達太良の紅葉の感動を語らいながらの晩餐は極楽だった。就寝前にもうひと風呂浴び、戻ったらY夫妻はすっかり熟睡していた。今日は、さぞかし疲れたであろう。

10月15日(日曜)

  この日もまずまずの天気。朝食後、土湯峠から磐梯吾妻スカイラインをドライブする。土湯温泉でF子さんがこけしを買い、紅葉が最高潮になったスカイラインをドライブし、浄土平で吾妻小富士に登る。その後、福島に下り、東北道を快適にドライブし、18時に大宮駅にY夫妻を降ろす。19時過ぎ、入間帰着。■

 

安達太良山登山行程

10月13日(金曜)
入間21:50 ===(R16、東北道)=== 2:00 奥岳温泉駐車場

10月14日(土曜)
奥岳温泉(950m) 6:35 --- 8:00 五葉松平 --- 9:25 安達太良山(1700m) 10:35 --- 11:30 鉄山(1709m) 11:45 --- 13:00 くろがね小屋 13:30 --- 勢至平 --- 15:00 奥岳温泉 === 15:40 岳温泉、富士急しゃくなげ荘宿泊

10月15日(日曜)岳温泉 10:00 === 土湯温泉 === 磐梯吾妻スカイライン === 12:30 浄土平 13:30 === 福島 ===(東北道)=== 18:00 大宮駅 ==(R16)== 19:20 入間帰着


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