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Data No. 43

データ:
登頂日: 1989年8月5日
標高 2,237m
場所: 山形・秋田県境
天候: 快晴
登頂時の年齢: 35歳
同行者: 単独行

 

 

鳥海山

 

 


8月4日(金曜) 
【鳥海山へ延々9時間のドライブ】

  会社を半ドンし、14:30、マイカーで自宅出発。免許を取って一ヶ月、初の長距離ドライブだ。関越道を経て新潟からR7を北上。新発田を通過する頃から夜道の運転となる。山形県境付近はカーブやトンネルが多くて神経を使う。鶴岡付近で夕食休憩後、更に北上を続け、秋田県境の十六羅漢岩から右折して鳥海ブルーラインを登り、23:30鉾立駐車場に到着。延々520kmのドライブだった。

  さて、ビール飲みながら腹ごしらえして眠ろうと、荷物を探しながら顔が青ざめた。食料を詰めた紙袋を玄関に忘れてきたらしい。あるのは、保冷バッグ内の缶ビール、ジュース、パイナップル缶詰とレーズンクッキーだけ。せっかくの初めての長距離ドライブ後の楽しみだったのに...。ここで楽しむ筈だった美味しいつまみを恨めしく思い浮かべながら、後部座席に寝転がり、苦いビールを飲む。ライトを消すと満天の星がきらきら瞬く。麓の酒田の夜景が里心を誘う。

 

8月5日(土曜)
【快晴下、鳥海山に登頂】

      鉾立登山口を出発

  4:00目が覚める。周囲には何時の間にか車が増え、登山者達がガサゴソ支度をしている。まだ明け切らぬ空は雲ひとつ無い。早速私も支度をして4:30、鉾立登山道に踏み込む。

  きれいに石を敷き詰めた道を緩やかに登って行くと、行く手には深い谷を挟んで、すっくと天に向かって聳え立つ鳥海山の頂上が見える。気品のある姿だ。振り返れば日本海の海岸線が緩やかにカーブを描き、白波の彼方には飛島が浮かぶ。足元に深く切れ落ちた奈曾渓谷を眺めながら、石畳の快適な道を歩く。傾斜が緩み賽の河原に着くと、残雪のある緑豊かな草原状の斜面に、ニッコウキスゲを始めとする色とりどりの花が咲いていた。赤とんぼの群れが空を埋め尽くし、まるで秋を思わせるような雰囲気だ。

       
                       
 花一杯の道を山頂に向けて登る
 

  賽の河原を過ぎ、再び急登を頑張ると、七合目の御浜だ。神社と小屋があり、足元には直径約200mの「鳥ノ海」が青い水を湛える。周辺はニッコウキスゲが群落を作り、緑の草原を、暖かい陽光が照らし始める。石畳の道は御浜迄で、そこからは本来の山道になる。緩く登った後一旦下り、下り切った所から「八丁坂」の急登が始まる。汗を思い切りかいて登り切った所で、初めての大休止。

        花畑に囲まれていた鳥の海

  道は二手に別れる。右が外輪山縦走コース、左に下り気味に行くのが七五三掛(しめかけ)と呼ばれる千蛇谷の雪渓を辿るコースだ。登りには外輪山縦走コースをとる。危険箇所は無いが、幾つもの岩峰の上り下りが繰り返され、楽ではない。左手の絶壁の下には、真っ白な雪渓が十合目の御本社に向かって伸びている。その御本社をぐるりと回り込むように外輪山を歩いて行くと、2,230mの三角点のある七高山頂上だ。これ迄、この七高山が鳥海山の頂上とされてきたが、国土地理院では、山の標高を三角点位置ではなく実際の最高点にする修正作業を行っており、鳥海山もこの七高山ではなく、新山の2,236mが公式標高に変更された。これはごく当たり前のことで、今まで何故放置されてきたのかが不思議だ。

  外輪山から御本社と新山を見る  

 ダンプカーで岩をばら撒いたような新山 

     七高山山頂にて

  七高山で小休止後、新山を目指す。岩がガラガラの滑り易い斜面を窪地の底迄降り、残雪を横切って、角張った巨岩を天の神様がどっさりと積み上げたような新山の斜面に取り付く。ペンキのルート指示が不明瞭で、時々とんでもない崖の上で行き詰る。七高山からすぐ傍に見えた新山は、こんな訳で30分もかかってしまった。

  
           外輪山と日本海を望む                     山頂から秋田県方面の眺め

  新山の頂上は極めて狭く、登山者が大勢来たら渋滞を起こしそう。幸い、誰にも邪魔されず、誰の邪魔もしない独り占めの頂上であった。素晴らしい眺望が待っていた。この鳥海山の緑濃くゆったりとした裾野を隔てて、日本海の海岸線は何処までも伸びて、男鹿半島まで見える。日本海側の雲ひとつ無い晴天とは対照的に、奥羽山脈の東側は一面の雲の下だ。南方の月山、更にその先の朝日、飯豊連峰も雲の笠を被っている。

         新山山頂にて(山頂はとても狭い)

  展望を満喫後、御本社に下る。御本社迄のコースには、上から見れば、きちんと岩にペンキのルート表示があり、迷うことは無かった。途中「胎内くぐり」と称する自然の岩のトンネルを通過。此処を通らなくてもルートは出来そうだが、信仰登山の山らしい。明確なルート表示に従い、あっけなく10分程で御本社に着いた。社務所でバッヂとパンフレットを購入し、千蛇谷を見下ろす広場で、唯一の食料であるパイナップルの缶詰を開ける。折角の好天下で、こんな物しか食べられないとは...。

    
      下山に使った千蛇谷の雪渓を見る                      涼しかった千蛇谷の雪渓

  帰路は千蛇谷の雪渓沿いに下る。陽射しが強いが、雪渓を吹き渡る風が爽快だ。往路に辿った外輪山を見上げながら、30分で二俣に戻る。もう足任せに下るのみ。山も草原もすっかり陽が当たり、往路よりもシャッターチャンスが増える。群れ飛ぶトンボが私の肩や腕にとまる。ハエや蚊だったら即座に引っ叩くところだが、のどかな美しい山の繊細で無害なトンボはそっとしておこう。

  御浜小屋そばの、大きな岩の上に寝そべって小休止。時刻はまだ11時。これから頂上を目指す人が続々とやってくる。しかし、残念なことに、麓から湧き上がってくるガスの為に、私が見たパノラマはもうダメだろう。早起きの私は三文の得をした。

   鳥海ブルーラインの通行券と鳥海山の全容

  11:40、鉾立駐車場帰着。広場はマイカーで埋め尽くされていた。レストハウスで漸くまともな食事にありつけ、ホッとする。レストハウス内を見物後、13:00帰路につく。

  昨夜の道を鶴岡まで戻り、鶴岡駅前のホテルにシングルルームを取り、睡眠不足をすっかり解消する。

 

8月6日(日曜)
【月山は次の機会に】

  早朝、上空は晴れているが、山には雲がかかっている。関東に接近中の台風の為、今日の天気はダメかも。5:00、取り敢えず支度をして、まだ寝ているフロントボーイを起こして玄関を開けてもらい出発。車が殆ど走っていない早朝の鶴岡の町を月山方面に向かう。

  八合目まで取り敢えず行ってみようと思ったが、狭い山道を登るにつれて風雨が強くなってきた。6合目付近できっぱり諦めてUターン。麓に戻ると良く晴れていて、後悔の念が湧いたが、振り返って山を見ると黒く厚い雲の中であり、予報を信じればこれからもっと悪くなる。車があれば列車やバスの時刻にとらわれずにいつでも再訪できる。今回は鳥海山を好天下に登ったことだけでも大満足としよう。  

 

鳥海山登山行程

8月4日(金曜)
入間14:20 === 17:00 越後川口SA 17:15 === 18:15 新潟 ==R7== 21:20 鶴岡で夕食 21:50 === 23:30 鉾立

8月5日(土曜)
鉾立(1,140m) 4:30 --- 5:15 賽の河原 --- 5:40 御浜 --- 6:15 七五三掛分岐 6:25 --- 文殊岳 --- 伏拝岳 --- 7:40 七高山(2,230m) 7:55 --- 8:20 新山(2,236m) 8:35 --- 8:50 御本社 9:15 --- 千蛇谷 --- 9:35七五三掛分岐 --- 10:25御浜 10:55 --- 11:40 鉾立 13:00 === 14:30 鶴岡(鶴岡駅前プチホテル宿泊)

8月6日(日曜)
鶴岡 5:00 === 月山六合目 === 鶴岡 === 11:30 新潟 12:30 === 14:00 十日町

8月7日(月曜)
十日町14:30 === 三国峠 === 月夜野IC === 19:00 入間帰着

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