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Data No. 40

 

データ:
登頂日: 1988年10月16日
標高 2,577.6m
場所: 栃木県奥日光 
天候: 快晴
登頂時の年齢: 34歳
同行者: 単独行
 


 

日光白根山

 


【紅葉狩りのはずが、雪見登山に】

  先週、南アルプスで紅葉を楽しんだばかりなのに、直後に強い寒波が襲来し、関東北部の山々が雪化粧してしまった。ずっと梅雨空だった関東にやっと青空が戻ってきたのに、もう雪の季節とは淋しい。高い山へ登れるのは今年最後になるかもしれない。

  前夜宇都宮に泊り、早朝の日光線に乗り、6:44日光到着。上空は晴れているが、奥日光方面は灰色の雲が垂れ込める。7:02のバスで、いろは坂を登り中禅寺湖や戦場ヶ原の秋景色を楽しみながら、湯元温泉まで1時間余り。いろは坂は、もう行楽の車で数珠繋ぎだ。

  8:20湯元温泉着。降りた登山者は私一人だけ。今年はこういうパターンが多い。人が少なくて心配しながら歩いて行くと、頂上には必ず大勢の人が居る。私の計画が一般的ではないのか、マイカー登山が主流で電車やバスで来る登山者がマイナーなのか。湯元温泉は冷たい北風が吹き、うら寂しい。温泉街を抜け、スキー場沿いに登る道をたどる。当初、標識が無く正しい道かどうか心配したが、荒れた沢の縁に「奥白根山登山道」という立て札を見つけ安心する。

        登山を開始した湯元の温泉街を見下ろす

  スキー場上部からの登山道は脆い黒土の荒れた道で極めて歩きにくい。木の根や草を掴んで這い上がる急斜面が続く。土が脆い証拠に、根こそぎ倒れた大木がそこいら中にある。そんな倒木が道を塞ぎ、潜るのも跨ぐのも一苦労。急斜面が漸く終って尾根道になると、笹に覆われた登山道はうっすらと雪化粧している。乾いたサラサラした雪だ。それにしてもこの季節で雪の上を歩くことになろうとは。

         外輪山から仰ぐ雪化粧した白根山頂上 

        山頂にいる人々が見えてきた 


   いやらしい黒土斜面から開放され、明るい尾根道を登り詰めると、目の前が開けて、厳しい奥白根山が初めて現れた。頂上付近は白い雲が遊び、樹木は霧氷で純白に化粧し、黒い岩壁もまだらに雪化粧している。その姿はもはや秋の山ではない。雲は消えつつあり、天気は回復基調だ。人の気配も多くなり、寂しさも吹き飛んだ。
 

【大展望の奥白根山頂上】

  外輪山の尾根道を進むと標高2,370mのハゲ山、前白根山頂上に着く。足元には、冷たそうな水を湛える五色沼を挟み、奥白根山はいよいよ大きく迫る。湯元温泉街も箱庭のように小さい。前白根山から左側に、外輪山を絡むように下って行くと、一面の雪原となった窪地に避難小屋がある。大勢の人が歩いた跡があるので、滑ることはないが、雪に不慣れなハイカー達はおっかなびっくりだ。

  ここからが奥白根山本峰の登りになる。ルートは南面なので雪は融けて楽な気分で歩く。灌木地帯を息を切らせて登ると、やがて岩石地帯となり、台地状の場所に出る。付近には幾つかの火口跡があり、巨岩が散乱していて異様な雰囲気。山頂は白根神社奥社を経て、更に岩を縫うように登った所だった。

         奥白根山頂上にて

  11:35、標高2,577.6mの奥白根山頂上に到着。日光連山の最高峰で、関東以北の最高峰でもある。素晴らしい展望が待っていた。中禅寺湖を抱きかかえるようにして聳える男体山、北西には既にすっかり雪化粧した尾瀬の燧ケ岳や、上越国境から会津へ続く山々が高さを競う。先程歩いて来た前白根山方面は、五色沼へ向かって断崖絶壁となっている。素晴らしい高度感の山だ。

  巨岩が散乱している山頂は、賑やかだった団体が去ると、とても静かになった。天気は良いが風が冷たい。岩陰に腰を降ろし、男体山を眺めながら湯を沸かして簡単な食事をする。初めて訪れた日光の山は、険しい岩山が居並ぶアルプスとは一味違い、湖と角の取れた山々が箱庭のような細やかな景色を見せてくれる。

 
                                     箱庭のような奥日光の景色、左から女峰山、男体山と中禅寺湖

  
                尾瀬の燧ケ岳を望む。その奥は上越国境〜会津の山々

  12:40に下山開始。北面は雪が凍っていてアイゼン無しでは危険らしいので、前白根迄往路を戻る。前白根迄はかなりの人出があったが、殆どの人は、私が登ってきたルートを下っていった。私はあの不快な悪路がイヤなので五色山を経て中ッ曽根コースを下る。

  前白根から五色沼を左に見て五色山に登りし、そこから金精峠への道を分けて尾根を下るコースだ。しかし、こちらも往路に負けず劣らず悪路だ。笹薮が道を隠して見えない。深い所では自分の肩迄埋もれてしまう。足元が見えないと木の根や石にしばしば躓く。国立公園内で人気のある山の登山道がこれ程荒れているのは驚きで、今まで私が登った山々で最悪の整備状態だ。栃木県当局の怠慢の所為か。登山者の事故を防ぐため、もう少し整備してもらいたい。

      
                                              山上の五色沼を見下ろす

  薮漕ぎから開放され舗装道路に出た時はホッとした。15:25、湯元に帰着。下山祝いに缶ビールを買って飲む。外輪山の奥にある奥白根山は、すぐ麓の湯元からでも決して見えなかった。

  15:45、日光駅行のバスに乗るが、戦場ヶ原から大渋滞にはまった。歩いた方が早い位だが、身体も疲労していたので、諦めてバスの座席の背に身を任せる。やがて、とっぷりと日が暮れてしまい、中禅寺湖にお月様が影を映す。尾瀬も上高地もハイシーズンにはマイカー規制するのに、この日光では大昔から渋滞のニュースが名物だ。何の対策も講じないのか。栃木県の怠慢さに、再びやるせない気持ちになる。

  東京から近い日光の山を、私がこれだけ後回しにしたのは、夜行列車が無く日帰り出来ないこと、麓を観光で何度も訪れ食傷気味だったこと、観光地ズレした雰囲気、そしてこの道路の渋滞情報が訪問をためらわせた為だ。19:10、定刻より2時間遅れて日光駅に到着。幸い、乗り継ぎで東武特急ロマンスカーに席を確保出来た。日光の山は決して日曜日に行くものではないと肝に銘じながら帰途につく。■


日光白根山登山行程

10月15日(土曜)
入間18:30頃 === 池袋 19:58 ===(東北線)=== 21:19 小山 21:31 === 22:03 宇都宮、ビジネスホテル、ニューイタヤ宿泊

10月16日(日曜)
宇都宮6:02 ==(日光線)== 6:44 日光 7:02 ==(バス)== 8:20 湯元温泉 8:25 --- 10:05 天狗平 --- 10:25 前白根山 (2,370m) --- 10:50 避難小屋 --- 11:35 奥白根山(2,577.6m) 12:40 --- 13:40 前白根山 --- 13:55 五色山 14:05 --- 14:15 国境平 --- 15:25 湯元温泉 15:45 ==(バス)== 19:10 東武日光駅 19:38 === 19:46 下今市 19:50 ===(特急きぬ138号)=== 21:19 北千住 ==(JR、西武)== 23:00 入間帰着


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