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Data No. 35 |
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北アルプス
常念岳 (大天井岳 & 蝶ヶ岳) |
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夜行急行アルプスで大糸線穂高駅に4:45到着。直ぐに接続のバスで中房温泉へ。渓流から硫黄の香りの漂う中房温泉に5:35到着。此処から大天井岳迄は4年前にも歩いたルートなので気が楽だ。 支度を整え6:00出発。樹林帯の中の急坂だ。6:20に第一ベンチ、7:05に第三ベンチ通過。4年前は初めての北アルプスを、私でも本当に登れるだろうかと不安一杯だったが、2回目ともなれば気が楽だ。7:50、合戦小屋到着。ここで大休止。大きなグラスにたっぷりと注いで貰った牛乳がとても美味。下山する人の話では、昨日迄は天気が悪くて、台風と一緒に歩いているようだったと。また大雨で幕営の人も小屋に押し掛けて大混雑だったらしい。今日はこれまで好天であるが、次第に稜線付近はガスが湧きつつある。上空の青空の面積が次第に狭くなっていく。 樹林帯を抜け出し、尾根道を歩くようになったが、長梅雨の影響なのか、前回よりも高山植物の花に元気が無いようだ。頭上に燕山荘が見えてきた頃、周囲はとうとうガスに閉ざされた。9:00、燕山荘到着。景色が見えないので燕岳登頂は割愛し、小休止後、先に進む。 9:45、表銀座稜線に足を踏み出す。前回と全く一緒の天候状態。せっかくの雲上プロムナードも楽しみは激減。このコースは、まだ将来に歩く機会があるだろうから、楽しみはとっておこう。 楽な稜線歩きは大天井岳取付きの鎖場で終わり、槍方面への巻き道を右に見送って、大天井岳の登りにかかる。岩がゴロゴロの山腹をジグザグを切って登るのだが、合戦尾根を登ってきた後の身には辛い。30分程で大天荘の建物が見え、今回のコース中で最高地点となる大天井(おてんしょう)岳(2,922m)頂上は、そこから僅かだった。生憎ガスで何も見えないが、前回は巻き道を通って敬遠した山だったので、ようやく義理を果たした安堵感に浸る。大きくどっしりした山だが、山頂は意外と狭い。他に誰もいない頂上には、朽ちた祠がポツンと立っていた。この稜線の最高峰であり、「大天井」という立派な名前なのに、巻き道があるので、訪れる人も少ないのだろうか。 雨が当ってきたので、ポンチョを被って常念に向かう。人気の無い稜線歩きは淋しい。道は比較的平坦で、スピードを上げて時間を短縮しよう。幸い雨は本降りにならず、暑苦しいポンチョは途中で脱ぐ。途中でガスが切れ、東天井岳から横通岳を経て、常念岳へ続く巨大な山並みがいきなり姿を見せた。黒々とした巨大な怪物のようで、ぞっとする光景だ。山頂から谷底まで一気に全部見えたかと思うと、数秒後には再びガスに閉ざされる。この大自然の激しい変化と山の巨大さに比べたら、人間は何とちっぽけでひ弱なことか。常念岳への道は、東天井岳も横通岳も頂上を通らずに巻いて行く。 横通岳中腹から常念岳との鞍部に降りると、赤い屋根の常念小屋が待っていた。14:15、小屋到着と同時に再び雨がパラパラと降り出し、やがて本降りになった。常念小屋は大きな小屋で、比較的ゆとりの一夜を過ごせそうだ。テレビの天気予報では、太平洋高気圧が張り出して、やっと夏らしい天気になるらしい。夕食後、19時には布団に入る。窮屈ではないが、人いきれの暑さでしばしば目が醒める。耐えられず窓を開けると、快い山の冷気が火照った身体を冷してくれた。夜半、再び、かなり強く屋根を叩く雨の音がした。
8月6日(土曜) 4:00頃、人がガサガサ起き出す音で目が覚める。窓から外を見ると、薄明の空の下に、大きな槍ヶ岳の穂先が見えている。チカッ、チカッと光っているのは、山頂で記念撮影をする人のカメラのフラッシュか。こんな好天にぐずぐずしている手はない。支度を整え、5:20に常念小屋を出発。東の空は曇っていて御来光を拝めなかったが、西の槍ヶ岳は気持良い青空の下だ。 常念岳の登りは小屋の直ぐ裏から始まり、急な岩石地帯の登りである。登るにつれて、槍から大キレットまでしか見えていなかった稜線が、北穂、涸沢、奥穂と姿を現し、1時間ほどで到着した常念岳山頂からは、さながら絵巻屏風を立てたような槍~穂高連峰と、乗鞍岳、御岳が視界一杯に広がる。思わず感嘆の声を上げてしまう。「素晴らしい」の一言に尽きる。 日本の第一級の山岳地帯であり、登山を嗜む人ならば誰にとっても憧れの槍・穂高の岩峰が、目の眩むような深い谷底から一気に一万尺の高さまで競り上がる。槍も穂高も私自身には登頂を経験した思い出の山であるから、感慨ひとしおだ。涸沢のテント村と純白の雪渓が心地良さそう。しかし、涸沢は、あんな高い場所にあったのかと、改めて目を見張る。 昨日ガスの中を歩いた表銀座稜線も、今日はすっかり姿を見せる。この眺めの中で、私にとってまだ未知の山は槍ヶ岳の裏側に連なる裏銀座方面だ。是非、近い内に必ず行ってみたい。北アルプスはまだまだ奥が深い。 小屋でもらった弁当を食べて約1時間休憩後、蝶ヶ岳へ向けて出発。常念岳を急降下し、草原帯から灌木帯に入り、大きなコブを3つ程越えて行く。起伏の多い疲れるコースだ。樹林帯に入ると展望も利かなくなり、辛抱の連続であった。常念岳からは直ぐ近くに見えていた蝶ヶ岳だったが、歩いてみるとひどく遠い。 常念から凡そ2時間で「蝶槍」に到着。ところが三角点のある頂上(2,664m)は、蝶槍から僅かに下ったところである。更に南の蝶ヶ岳山荘裏手の隆起の方が、もっと標高が高く見えたのは私の錯覚だろうか。何だか頂上らしくない頂上だ。残念ながら槍・穂高の稜線は雲に隠れつつある。 氷河の残した二重山稜に沿って、緩やかな道を蝶ヶ岳山荘に向かう。花畑が見事だ。山荘でビールを買い、裏手にある私が一番高い場所と思った地点に登り、気持ち良く飲む。稜線が隠れてしまったとはいえ、穂高の岩山は、やはり素晴らしい。 さて、蝶ヶ岳からはひたすら徳沢へ向けての下りとなる。上高地方面から登って来る人の数が凄い。関西訛りの家族連れが目立つ。10:15、アルプスの稜線に別れを告げ、樹林帯の下りに突入だ。最初は樹木の背が低く、花も至る所に咲いていたし、所々に池があって好もしい雰囲気であった。それが、長塀山を越してからは薄暗い樹林帯に入り、展望は全く無くなった。何時まで経っても同じようなジグザグの急坂を、これでもかこれでもかと下らされ、気分の滅入ること甚だしい。こんな道が早足でも、90分も続いた。突然暗い樹林帯の中に徳沢園の赤い屋根が見えた時の嬉しかったこと。思わず駈け足になる。 12:35、徳沢園到着。到着と同時に缶ビールと、それ迄我慢していたタバコを買い、ベンチに座ってしばらく休憩。此処まで降りると人出が多い。槍・穂高を目指す人々、キャンプを楽しむ人々、あるいは上高地から散策をしに来た観光客など、周囲は人だらけだ。徳沢から上高地は、もう梓川に沿った気楽な散歩道。 14:05、上高地河童橋に到着。観光客で溢れかえっていた。もはや穂高の稜線は厚い雲に隠れてしまった。やがて突然雨が降り出し、急いでバス停に逃げ込むと物凄い土砂降りになった。バスを待つ間、降りしきる雨を眺め、山の上では大した雨に遭わずに済み、素晴らしい展望を堪能して、無事に下山出来た幸運を噛みしめる。 松本でゆっくり泊りたかったが、「松本ぼんぼん祭」と重なって何処にも部屋が無かったので、山への郷愁を断ち切り、夕刻の上り「あずさ」車中の人となる。■
北アルプス表銀座、常念岳~蝶ヶ岳山行行程 8月4日(木曜) 8月5日(金曜) 8月6日(土曜) |