Data No. 32 & 33 |
データ: |
瑞牆山 ・ 金峰山
|
|
【梅雨の中休みに登頂を狙う】 金曜夜のうちに甲府に来てビジネスホテルで一泊後、土曜日早朝、韮崎へ向かう。甲斐路の空はどんよりしていた。韮崎駅前から7:26発のバスで増富温泉へ。驚いた、週末の朝一番のバスなのに登山者は私一人だけ。奥秩父はそんなに人気が無いのか。1時間で増富温泉に到着。町に湯治客は歩いていても、登山者は居ない。 人が多過ぎるのも困るが、あまり寂しいのも好きではない。かなり意気をそがれたが、何とか頑張ろう。午後から雷雨の可能性もあるので、「通仙峡渓谷」に沿った車道をかなりのピッチで歩いた。いろいろな滝や岩に、こじつけとも思える名前が付けてあって、苦笑しながら歩く。宿が数軒とキャンプ場のある金山というところに出て、峠道にかかる。峠を登り切ると、塔のような岩が垂直にニョキニョキ立っている瑞牆山が目の前に現れた。高曇りで結構見晴しは利いている。 更に進むと小奇麗な瑞牆山荘の前に出る。此処には駐車場があり、多くの車がいて、登山者がかなり居る。寂しさから開放され、俄然元気が出てきた。車道歩きは此処までで、ようやく登山道らしい道になる。 林の中を登って行くと、過去には決して見たことの無い、怪獣の爪を沢山立てたような怪奇な瑞牆山(みずがきやま)の岩峰が見え隠れする。あの頂上へ登る道などあるのか。増富温泉から約2時間で、木造の富士見平小屋に到着。此処迄で標準タイムを1時間短縮。小休止後、瑞牆山に向かう。少し登ったと思ったら急に下る道となり、天鳥川の畔に出る。そこから一本調子の辛い登りだ。原生林の中の道はかなり急で、延々と車道歩きをしてきた身には、大分堪えた。そんな私をシャクナゲやツツジの花が慰めてくれる。 11:55、バテバテで瑞牆山頂上に到着すると、素晴らしい眺めが待っていた。天気も回復し、風も無く、暖かい陽が差す。巨大な岩が累々とした頂上の一角に腰を下ろし、先ず一服。正面には、五丈岩を天空に突き上げる金峰山の貫禄が素晴らしい。原生林に覆われた小川山もきれいな裾野を引いている。南アルプス方面は良く見えないが、明日に期待が持てそうだ。 下を見下ろすと、不気味な大岩塔「大ヤスリ岩」がニョッキリ突き上げている。自分の座っている山頂の岩の下は、オーバーハング気味の断崖絶壁だ。このように重力の原理を無視した造形を見せる大自然に、畏怖の念を抱く。 90分休憩後、ゆっくり下る。登っている時はバテて気付かなかったが、登山路はあの鋭い大ヤスリ岩のすぐ傍を通っていたのだ。下から見上げるよりも、上から見下ろした方が迫力は凄かった。 15:00、富士見平小屋に到着。番人の親父さん以外誰も居なかった。時間的には金峰山へ向かってあと1時間ほど登った大日小屋にも行けるのだが、無人で誰もいないと言うので敬遠した。 小屋には、その後ちらほら客が来て、私を含め7人になった。夕食を自炊がてら、親父さんの話を聞いたりして過ごした。昔は土間にも人が眠るほど賑わったが、マイカー時代の到来で日帰りの山になってしまい、週末でこの程度だとか。4年前にこの小屋で起こった殺人事件の話も聞かされたが、他に客が居なければ聞きたくない話だ。夕方弱い雷雨があったがすぐに上り、夕日が綺麗に射す。残念ながら小屋には荷揚げ品が無く、ビールを飲めなかった。他の客はしっかりとアルコールを持参していて羨ましい。 19:20、湿気ているが、気持ち良い布団に包まって眠りにつく。ほの暗いランプの明かりが、山小屋の一夜らしい。ああ、それにしてもビールが飲みたい。夢にまで見そう...。
6月19日(日曜日) 【五丈岩を抱く金峰山を登頂】 同宿の男達がガサガサと起き出す音で目が覚める。外は少し明るくなっていた。時計を見ると4:15。土間の入口から外を見ると真正面に富士山があった。森の樹木が、ちょうど上手い具合に富士山が見えるような隙間を作っている。「富士見平」小屋とはよく言ったものだ。 5:10、金峰山へ向けて出発。深い樹林帯の中の道を、最初から登り一方なので忍耐が必要だ。時々樹林帯が途切れると、昨日は見えなかった南アルプスや八ヶ岳がとても良く見える。黒々とした甲斐駒ケ岳や鳳凰山の背後には、残雪を戴いた白峰三山が超然と聳える。人気の無い大日小屋を過ぎ、尚も登り続けると巨大な「大日岩」の前に出る。瑞牆山の名残のような感じ。登山道では昨日に増してシャクナゲが見事だ。 樹林は次第に背が低くなり、森林限界を越すと、目指す金峰山の頂上とシンボルの五丈岩が見えてきた。山梨・長野県境の尾根道を登るのだが、山梨側はスッパリと切れ落ちた急斜面なのに対して、長野側はなだらかなハイマツの斜面という非対称山形を見せる。目標が見えてからの登りが結構長く辛かった。 7:45、金峰山頂上、標高2,595mに到着。それ迄、仏様の横顔のような細い塔に見えていた五丈岩は、頂上で見ると幅が広くてガッチリとした要塞のよう。20mもの高さを持つ花崗岩で、「御像岩」とも呼ばれる。ガッカリしたのは、巨大な落書きがそこいら中にあること。その落書きのほとんどが人間の名前だ。 正しく360度のパノラマだ。近くには奥秩父山塊がうねり、西には南アルプスの高峰が自己顕示し、北の八ヶ岳は端正なまとまりを見せる。八ヶ岳の左肩には北アルプスが顔を覗かせる。数年前迄は、このようなパノラマを眺めても、どれが何山なのか殆ど知らなかったし、登ったことも無い山ばかりだった。近年は山登りに精を出したお陰で、今は自分の足で登った熱い思い出を呼び起こす山が多くなり、大いなる感慨を持って眺められる。特に白雪を戴いた白峰三山が印象的だ。黒々とした富士山よりも魅力的である。 下山はゆっくりと歩いた。空は完全に雲が消え去り、快晴になったので、急いで下ることもない。昨日登った瑞牆山がきれいだ。富士見平小屋には登りと同じ時間を費やして下った。もう親父さんは下山してしまったらしく、小屋は閉まっていた。マイカー時代になっても、私のような自分の足だけが頼りの人間もいる。小屋は大切に守ってほしい。 11:40、瑞牆山荘に到着。念願のビールをやっと飲む。美味い!こんなとき世界中でビールほど美味い飲み物を私は他に知らない。さて幸せな気分になったところで、それからが長く辛く退屈な増富温泉までの林道歩きである。 マイカー族が埃をたてて飛ばす車道を私は足を棒のようにして歩いた。90分程だが、二時間にも三時間にも感じられた。通仙峡では家族連れがバーベキューを楽しんでいる。山に入ってからろくなものを食べていない私は、急に腹がひもじくなる。 13:10、増富温泉帰着。早速ビールをもう一本買ってゴクゴク飲む。幸せで頭がクラクラする。せっかくラジウム温泉で有名な増富に来たのだから、500円を払って旅館の温泉に入り山の汗を流し、バスで韮崎へ。すぐに甲府行電車に乗り、甲府駅ビルで美味しいトンカツ定食にありつき、文明の便利さに感激する。甲府17:38発の臨時特急かいじ号で満足の帰途につく。■
瑞牆山・金峰山登山行程 6月17日(金曜) 天候:曇り 6月18日(土曜) 天候:曇り後晴れ、夕方一時雷雨 6月19日(日曜) 天候:晴後快晴 |