Data No. 22 & 23 |
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花咲く頚城アルプスへ 7月18日(土曜) 5:26、夜行急行「妙高」は終点の妙高高原に到着。「曇り時々晴れ」という予報だったが、何と雨がザーザー降っていた。バスの時間までかなりあったので、タクシーを5名相乗りで笹ヶ峰牧場へ行く。タクシーの運転手は、「絶対に今日は天気が回復しますよ」と、どういう根拠があるのか言い切ったが、私は悲観的であった。とにかく、折角来たのだから、高谷池ヒュッテ迄登り、そこで考えよう。 今回目指すのは、故郷新潟県、上越地方の名山である火打山(ひうちさん)と妙高山(みょうこうさん)だ。両山とも、2,400mを越す標高を誇り、もっと西の雨飾山を含めて、一帯を「頚城(くびき)アルプス」とも呼ぶ。 笹ヶ峰牧場でタクシーを降り、バス停の屋根の下で朝食をとり、7:05傘をさして出発。このような天気にも拘らず、団体バスも到着し、かなり登山者がいる。重苦しい気分でぬかるんだ登山道に踏み込む。森の中で雨が当たらなくなったので、邪魔な傘はしまう。やがて本当に雨は止んだ。 雨が止むと元気も出るし、景色にも目を向ける余裕が出る。40分程で清澄な黒沢の流れを渡ると、登山道の勾配がぐっと増して来た。「十二曲り」と呼ばれる急坂だ。黙々と頑張って歩く。笹ヶ峰を出てから凡そ2時間で「富士見平」というところ。そしてようやく勾配が緩む。そこから高谷池ヒュッテ迄は、僅か30分であった。白い霧の中に赤い三角屋根のヒュッテが現れて、その背後に残雪豊富な火打山の山腹が見える。高谷池ヒュッテにて小休止。小屋の周囲は霧に巻かれた湿原が広がり、幽玄な雰囲気が漂う。タクシーを使ったので、誰よりも早く此処まで辿り着いた。他に登山者の姿は無く、少し心細い気持ちで火打山へ向かう。 木道が敷かれた道を緩やかに登ってゆくと、やがて高山植物の可憐な花が咲き乱れる「天狗の庭」に出る。池塘と残雪が程よいバランスで景色にアクセントを添える。私はこの場所がとても気に入った。天気が良ければ「天上の楽園」といっても過言ではなかろう。黄色のミヤマキンバイ、ピンクのハクサンコザクラをはじめ、色とりどりの小さな花々が一面に咲き誇る。 気を良くして、火打山への登りも足が軽くなった。天狗の庭を過ぎると、ハイマツの稜線になる。しかし、ガスの為に目標となる頂上が見えず、どの位登れば着くのか見当がつかない。周囲には人がいないし、本当に山頂へ向かう道なのか心細い。しかし意外と早く、高谷池ヒュッテから約1時間で、標高2,462mの火打山頂上に着いた。視界は全く利かないが、最近再び火山活動を始めた焼山の噴気の音であろうか、北西の方向からゴーゴーと音がする。私以外誰もいない禿げた山頂には、三角点の櫓と小さな地蔵があるだけであった。山頂で30分休憩後、高谷池ヒュッテに向けて下山する。 火打山から下って行くと、ようやく他の登山者とすれ違うようになり、次第にその数が増えていった。ところが、私が高谷池ヒュッテに到着すると同時に激しい音を立てて雨が降り出した。車軸を流す雨とはこういうことを言うのか。地面から跳ね返った飛沫が下半身を容赦なく濡らす。堪らずヒュッテの中に避難したが超満員。しかし、歩いている最中に降られなかった私はとてもラッキーだった。麓から登ってきた人間は私がトップで、以降の人達は例外なく登下山中にこの激しい雨に遭遇した。 雨は30分程激しく降った後、何時の間にかパタリと止んだ。やっと屋外で自炊の昼食がとれるようになり、ヒュッテ前でフリーズドライの牛丼を食べる。 予想外の混雑だった黒沢池ヒュッテの一夜 さて、雨が止んだならば早いところ今日の目的地である黒沢池ヒュッテに向かおう。オオシラビソの林の中を登り返し、茶臼山に辿り着くと、眼下に黒沢池の湿原と天文台のような丸い屋根の黒沢池ヒュッテが見えてきた。石がゴロゴロとした道を下り、14:20にヒュッテに到着。 宿泊申し込みを済ませ、暖かい陽が射してきた戸外で日向ぼっこをしながら缶ビールを飲み、コーヒーを沸かし、濡れた靴や衣類を乾かす。私の後にも続々と登山者が降りてくるのが見え、今日は小さなヒュッテは満員になりそうだ。それというのも、先月の「山と渓谷」の特集にされ、「最盛期でも満員にならない恵まれた小屋」などと紹介されたためだ。マスコミの力は恐ろしい。他の客と夕食時間まで楽しく山談義に花を咲かせる。夕食は豪華で美味しかった。満腹感とビールの酔いで気持ち良く湿気た布団に包まったが、夜中になっても天井からぶら下がった裸電燈がまぶしくて、頼んで消してもらう。しかし、それでも人いきれで熟睡は出来なかった。 頚城の雄峰、妙高山へ 7月19日(日曜日) 5時前に起床。空は再び曇っているが、高曇りのため昨日よりは良さそう。今日は妙高山に登って出来るだけ早く下山したい。5:30の朝食時間までがもどかしかった。朝食は食べ放題のクレープとお替り自由のコーヒー。大好きなコーヒーが飲めて嬉しい。そして山小屋では異色のクレープも味は良かったが、にこやかに「沢山お替りどうぞ」と言われても、これはさすがに飽きて、ご飯のようには沢山食べられない。 6:05、妙高山へ向けて出発。ヒュッテの裏から登り始め、外輪山である大倉乗越まで30分。そこから一旦下り、雪渓をからむ妙高山本峰のきつい登りにかかる。急峻な息の切れるジグザグの登りであったが高度が上がるにつれ、昨日登って来た火打山とその後ろの焼山が初めて姿を見せた。そして自分の頭上に覆いかぶさっていた急斜面が無くなると、待望の越後の名峰、妙高山頂上(2,445.9m)であった。 高曇りのため視界は利き、北アルプスの白馬岳、弥彦山、直江津港と日本海の海原がきれいに見渡せた。期待が薄かっただけにとても感激し、大いに喜んだ。後からヒュッテの食事の席で一緒だった3名の男達もやって来て、一緒に山座同定を楽しむ。岩だらけの細長い山頂を更に北へ進むと、三角点より高い本当の最高地点「妙高山大神」に着く。もっと天気が良くて暖かければ、帰りの時間を遅らせてものんびりしたいところだ。妙高山は高田平野から眺めると本当に威風堂々たる山である。この標高は北アルプスに比べたら平凡なものであるが、これまで私が訪れた北アルプスのどの峰よりも高度感があった。何しろ、足元には海抜ゼロメートルの直江津港と日本海の海原を見下ろせるのだから。 山頂で一緒になった同宿の3名と、以後一緒に燕温泉に向けて下山し、帰りの列車まで一緒に乗ることになった。登る時に私が追い越した若い男は、下山だけはびっくりするほど速かった。皆がつられて早足で下る。途中で何名も人を追い越したが、私は次第に膝がガクガクしてきた。 称名滝、光明滝を過ぎ、スキー場を渡るとアスファルト道に出て、そこに待ってましたと言わんばかりの待望の燕温泉無料露天風呂があった。ここまで頂上から1時間50分。標準タイムを1時間以上下回った。 私がビール調達係を引き受け、温泉旅館に買いに行った。汗をびっしょりかき、喉をカラカラにして山から下り、登頂を果たした山を眺めながら、温泉に浸かって飲むビールは格別だ。時間はまだ午前10時。早足で下山したお陰で、ゆっくり露天風呂を楽しんだ。山小屋の宿泊客の半数近くは女性だったが、さすがにこの露天風呂は男女別ではないので、皆さん素通りした。 身体がふやけるほどに湯に浸かった後、4名でタクシーを呼び妙高高原駅へ下る。駅前で再び大盛り蕎麦を食べながらビールを飲み、列車の時間を待つ。13:30、妙高高原駅始発の特急あさま20号自由席にゆったりと席を取り、素晴らしかった越後の名峰の余韻を興奮気味に語り合っていたが、やがて山の疲れと鉄路の轍の響きは、皆を心地よい眠りに誘っていった。■
火打山、妙高山登山行程 7月18日(土曜日) 7月19日(日曜日 |