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Data No. 20

データ:
登頂日: 1987年5月31日
標高 2,034m
場所: 長野県
天候: 快晴
登頂時の年齢: 33歳
同行者: Oさん


信州 美ヶ原

 


初夏の高原へ

  国鉄が分割民営化され「JR」になった。そしてJR東日本の特急・急行が週末に乗り放題の「EE切符」が1万円で発売された。それを使って美ヶ原を探訪する。そろそろ山も新緑が美しい季節だ。

  新宿から松本行夜行急行アルプスに乗り、日曜早朝に松本到着。喫茶店で時間をつぶし、朝一番の上り特急あずさ2号に乗車し下諏訪駅まで戻る。それなら、何も松本まで行かなくても良かったが、夜行列車を下諏訪で降りてしまっては時間をつぶせない。松本から折り返した方が列車内で眠れる時間もとれる。乗り放題なのだから、利用しない術は無い。

  下諏訪駅から美ヶ原山本小屋行バスに乗る。車内は空いていた。夜行の疲れが出て、バス発車と同時に眠りこけた。下諏訪の町を出て、山道をグングン登ってゆくのだが、眠気が勝って外の景色を見る余裕は無かった。それでも、かなりの時間が経ってから、窓から朝日に照らされ、山道に揺られて行くうちに次第に目が覚めていった。上空は真っ青な空があり、周囲は眩しいほどの清々しい新緑に包まれていた。

  終点「山本小屋」で下車。ここはもう美ヶ原の一端だ。バスを降りると、目を疑うような広大な緑の草原が目に入った。標高2,000mの山のてっぺんに、こんな広い草原があるとは...。噂には聞いていた美ヶ原であるが、想像を上回る。ゆるい起伏をもって果てしなく続く草原の向こうには真っ白な雪を戴いた北アルプスも見える。槍ヶ岳から穂高岳への稜線がくっきりとノコギリの歯のよう。背後には八ヶ岳や南アルプスの眺めが素晴らしい。

      
                草原でコーヒータイム                       これが2,000mの山の上?    
     

絶景を独占した天上の草原

  夜行列車とバスで疲れた身体をウーンと背伸びをして緊張をほぐし、支度を整える。何も気張ることは無い。沢山の鉄塔やアンテナが立つ草原の端までは、ほとんど平坦な道を歩くだけだ。

  この美ヶ原は夏の季節は牧場になっている。車でも走れるほどのハイキング道の両側には牧柵があり、のどかなアルプの雰囲気が漂っている。しかし、この5月末では、家畜の姿は全く無かった。他に誰もいない無風快晴の緑の草原をのんびりと歩き、途中のベンチでコーヒーを沸かしてゆっくり飲む。思わず昼寝でもしたくなる。美ヶ原を独り占めしたような気分。

           
                               北アルプスの稜線が彼方に

  美しノ塔、塩クレ場などのポイントを過ぎても、全く誰にも出会わない草原の散策は続いた。そして北アルプスの稜線はずっと姿を見せていた。この美ヶ原の最高地点は、目指す「王ヶ頭」というアンテナ塔が林立しているところである。

  土産物屋を兼ねた山荘と、アンテナ塔が林立する王ヶ頭に近付くにつれて観光客の姿が次第に増えてきた。そして王ヶ頭に着くと、それまでの静かな草原歩きが、まるで嘘のように大勢の人が居た。標高2,034.1mの最高地点に到着したのだ。登山姿の人はほとんど居ない。出発点の山本小屋ははるか後方になった。およそ一時間半の雲上の散歩だった。

  
             美ヶ原の最高点、王ヶ頭を望む                       王ヶ頭にて

  しばし最高地点で休憩後、「天狗の露地」と呼ばれる松本からのバスが発着するところへ下る。松本行のバスも空いていた。バスが発車して山道をぐんぐん下り始めると、歩いたあの美ヶ原の草原は本当に高い山の上だったのだということを再認識させてくれた。無風快晴の別天地だった、あの2,000mものテーブルランドは、大自然がいかにして造ったのであろう。

  松本からは長野行特急しなのに乗る。そして長野駅から上野まで信越線の特急あさまに乗り、19:40入間に帰着。このEE切符は最長で青森まで行けるのだが、長野を往復しても決して損ではない。貧乏人にもこのような旅行の機会が与えられるのは嬉しいことである。

  雲上の楽園、美ヶ原、その名の通り、とても美しい草原であった。いつの日か、きっとまた訪れてみたいバラダイスである。■



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