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Data No. 18

データ:
登頂日: 1986年11月27日
標高  876m
場所: 茨城県
天候: 快晴
登頂時の年齢: 32歳
同行者: 単独行


 

筑波山

 

 


晩秋の平日、ローカル線に揺られて

  筑波山というと、非常に通俗的な行楽地というイメージが強い。標高も900m足らずで、今までは登山の対象として考えたことは無かった。しかし、「西の富士、東の筑波」と対比される程の著名な山であり、万葉集にも歌われている歴史の古い山である。標高が低いといえども、関東平野のど真ん中ににょっきりと立っているので、「関八州の見晴台」と呼ばれるほど眺望の良い所だとのこと。既に季節は木枯らしの吹く晩秋となり、もう高い山には行けない。Z社在職も一昨日で終り、気分転換のため、人気の少ないであろう平日の木曜日に訪ねる。

  常磐線土浦駅から、廃止間近な関東鉄道の一両編成のディーゼルカーにゴトゴトと揺られ、筑波山が大きく目の前に迫る筑波駅に8:53に到着。更に駅前から、バスで麓の筑波神社に行く。神社付近は土産物屋や旅館が沢山居並び、たいそう賑やかな場所である。


筑波駅前から仰ぐ筑波山

  杉木立に囲まれた立派な筑波神社に参拝し、神社の脇から、ケーブルカーの線路に沿った登山道に入る。凛と冷えた爽やかな快晴に恵まれ、枯葉をサクサク踏みしめながら歩いて行くと、直ぐに身体が温かくなってきた。今朝は、電車内でも、ゾクゾクするほど寒かったが、風の当たらない雑木林の中の登りは汗もかかず、寒くもなく快適だ。平日のせいか、他に誰も歩いていない。かなり急な山道だが、整備は行き届いていた。途中には、百人一首でお馴染みの「恋ぞつもりて淵となりぬる」の男女川(おなめがわ)の水源がある。樹木が鬱蒼とした山腹の登山道は、晩秋だからこそ、登ろうという気になるが、暑い季節は敬遠したい。

  登っている途中、ケーブルカーのワイヤーが引っ張られて移動するゴロゴロゴロという音がしばしば聞こえる。鬱蒼とした山の斜面に突然轟音と共にケーブルカーが現れると、少し不気味でもある。ケーブルカーも客が少ない。神社脇を登り始めてから凡そ一時間で、頭上に人の声がするようになり、建物の姿が見えてきた。ケーブルカーの山頂駅であり、展望台と土産物屋が居並ぶ鞍部、「御幸ヶ原」に着いた。


眺望絶景の低山

  そこから左側の男体山へは、ほんのひと登りだ。日本で最初の高層気象観測所である筑波山測候所と男体祠が狭い870mの山頂に立つ。のどかな田園風景の広がる関東平野の果てには、白い雪をいただいた日光連山が浮かぶ。快晴であったが、季節風の吹き出しのためか、東京のある南西方向は、あまり見通しが利かない。帰宅後に知ったが、この日丹沢では雪が降っていたそうだ。

      
          筑波山女体山頂上で                      男体山から見た女体山

  男体山を下り、御幸ヶ原に戻ると、いくらか観光客も目立ち始め、土産物屋もようやく店を開き出した。ここから今度はブナの林の中を女体山へ向かう。稜線沿いには「電波銀座」の俗称通り電波中継塔が沢山立ち並ぶ。ここを上り詰めると筑波山最高地点、標高876mの女体山頂上である。眺めは男体山よりもずっと優れていて、広くて、いかにも山の頂上らしい雰囲気があった。遠くには土浦の町と霞ヶ浦の水面が霞んで見え、足元には筑波神社が杉木立の中に佇む。標高が900mにも満たないのに、平野の中にポツリと立っている山なので、意外と高度感がある。

       
               山頂から筑波神社方面を見下ろす                    奇岩をくぐって行く下山

  この山は筑波神社からのケーブルカーの他に、女体山の麓からロープウェイも架かっている。休日にはさぞかし大勢の観光客で混雑することだろう。平日にやってきて、静かな雰囲気を楽しめたのは幸いであった。一旦僅かに下って、茶店で昼食休憩をした後、再び女体山に登り、下山道に入る。

  女体山頂上の女体祠傍にある「天の浮橋」から始まる下山道は、「屏風岩」、「北斗岩」、「出船入船」、「神楽岩」、「母の胎内潜り」などの実に様々な奇岩が露出する楽しいルートである。岩山とは思えないこの山に、何故このような奇妙な岩が、まるで人為的に置かれたように散在するのだろう。それとも、太古の人々が厚い信仰心から実際に細工をしたのであろうか。このルートでも、陽が高くなって、これから山頂を目指そうという数人のハイカーとすれ違っただけで、ひたすら静かな林の中を歩いた。「弁慶七戻岩」を過ぎると、単調な林の中の下りとなり、それも僅かの辛抱で出発点の筑波神社に出る。

              
                          筑波神社で、お参りをして帰途につく

  バス停傍の土産物屋でコーヒーを飲み、騙されたつもりで、皮膚病に効くという名物の「がまの油」陣中膏を買って帰路につく。晩秋の陽が落ちるのは早い。夕方のラッシュアワーが始まる前に家に着いたが、もう外は暗くなっていた。静かな、静かな晩秋の一日であった。■

 

筑波山登山行程 1986年11月27日

入間市5:12 == 上野6:45 ==(常磐線)== 7:56 土浦 8:15 ==(関東鉄道)== 8:53 筑波 9:07 ==(バス)== 9:15 筑波神社 9:20 --- 9:45 中ノ茶屋 --- 10:15 御幸ヶ原 --- 10:30 男体山(870m) 10:45 ---御幸ヶ原 --- 11:25 女体山(876m) 12:15 --- 13:05筑波神社 13:19 ==(バス)== 13:30筑波 13:40 ==(関東鉄道)== 14:17土浦 14:44 ==(常磐線)== 15:46 日暮里 === 17:00 入間帰着


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