山に呼ばれて山歩き Home

日本全国の山ある記

山のバッジギャラリー

ぶらり旅行記

ふるさと讃歌 十日町

お奨めリンク集

Data No. 17

データ:
登頂日: 1986年10月26日
標高 1,723.7m
場所: 埼玉県奥秩父
天候: 快晴
登頂時の年齢: 32歳
同行者: 単独行


奥秩父 両神山

 


奥秩父の名峰へ

  毎週末、気を紛らすために山を登っている。それはそれで、日頃の憂さを晴らすのに役立ってはいるのだが、根本的な悩みが消える訳ではない。しかし、家でじっとしているのも辛いので、ポケットラジオ持参で山に来た。

  入間市駅から朝一番5:25の西武秩父行に乗り、終点西武秩父からバスで小鹿野を経て納宮(おさみや)7:50到着。ここが両神山の登山口となっている。バスから降りたのは私一人だけ。何だかとっても心細かった。天気が抜群に良いのがせめてもの救い。

  埼玉県奥秩父と群馬県との県境に聳える両神山(りょうかみやま)は、日本武尊にまつわる伝説を持つ山で、「八日見山(ようかみやま)」という古名を持つ。山稜は越後の八海山のような鋸歯状の起伏に富んだ岩場が続き、一種独特な姿を見せる。二年前に近くの二子山の頂上に立った時、初めてこの両神山を見て、いつか是非登ってみたいと思っていたのだ。

  さて、納宮部落から誰も居ない山道を落ち葉を踏みしめながら登って行くと、「熊出没、注意!」という立て看板。登り始め早々に嫌なものを見てしまった。風で木々が揺れる音や、藪の中でガサゴソと音がするたびにドキッとして、必要以上に早足になる。45分ほど急坂を登ると奈良尾沢峠に立つ。右手に二年前に登った二子山の岩峰が、紅葉に彩られた原生林を突き破るようにニョッキリと聳えていてとても美しい。熊の看板など見なかったら、もっと落ち着いて眺めていられたであろう。奈良尾沢峠からは、折角登ったのと同程度の高度を日向大谷へ向けて下る。
 

寂しい山道が一転

  両神神社が祀られている陽だまりの中の日向大谷部落に着くと、駐車場や林道の両側はマイカーで埋まり、登山者が急激に増えた。確かに、納宮から峠越えをしなければならないバスを利用するよりは、マイカーの方がはるかに便利である。熊が出没しそうな寂しい山道を一人で歩く不安が消えホッとした。日向大谷の部落を離れると、薄川(すすきがわ)沿いの登山道を歩く。前にも後ろにも人の声が聞こえるようになった。二度三度と沢を渡り返して行くうちに、鬱蒼とした樹林の中の登りとなり、ややバテ気味になった頃、静かな森の中に丸太造りの居心地が良さそうな清滝小屋が現れた。ガイドブックでは、この小屋で一泊して二日目に頂上へ登るようになっていたが、早朝の電車を利用すれば充分日帰り可能だ。15分程休んで先を急ぐ。

   
           中腹にある居心地良さそうな清滝小屋                    奥秩父の山並み

  小屋からは引き続き樹林帯の急坂を喘ぎながら登ると、ようやく両神山頂上へと延びる産泰(うぶたい)尾根に出て、綺麗に秋色に染まった山肌と目指す両神山の山頂が眺められる。更に岩混じりの尾根道を進むと、苔むした二頭のお犬様に護られた両神神社の社殿。ここを通過し、傾斜が緩んだ道を行くと東屋があり、若い衆が特製の登山記念バッヂをハイカー全員にプレゼントしてくれた。今日は「両神山紅葉祭り」だそうで、下山すると麓で甘酒のサービスもあるそうだ。

  頂上が近付くにつれて、登山者の数が激増した。降りてくる人の話だと、頂上は満員で座る場所も無いらしい。それを聞いてガッカリしたが、折角来たのだから、何とか山頂へ向かう。狭い岩場のルートでは登り下りの人々が互いに順番待ちをさせられ、ようやく正午に狭い岩の上に祠が立つ両神山頂上(1,724m)に立つ。

               大賑わいだった両神山頂上

  幸い、大人数のグループが下山した直後だったので、私一人が腰を下ろすスペースを探すのに苦労はしなかった。山頂からは360度の素晴らしい眺め。紅葉に彩られた鋸状の八丁尾根を持つこの山はもとより、遠くには富士山、上信越の山々、奥秩父連嶺、八ヶ岳などが、空中に淡い線を引いて浮かんでいる。この素晴らしい景色に囲まれて、崖っぷちに座り、ラーメンとコーヒーの昼食をとる。頭上では山座同定をする人が居て、私がまだ知らない奥秩父の山名をいろいろと聞いた。しかし、自分がいかに沢山の山に登ったかを聞こえよがしに自慢するオバさんの甲高い声が極めて耳障りだ。のんびり一時間以上を頂上で過ごし、13:20に下山にかかる。

 
   
                     美しく秋の色に染まった両神山の八丁尾根

気分爽快の帰路

  13:00から始まった日本シリーズ第七戦をイヤホンで聞きながら白井差(しらいざし)部落へ向け出発。両神神社から、登りに来た道と別れて、急坂を下る。追い越しても追い越しても、わんさと人が居た。よくもこれだけの人が登ってきたものだ。鎖場では必ず渋滞し、順番待ちをさせられる。その間、日本シリーズでは清原が初回にタイムリーを放ちライオンズ優勢....。バスが出るまで充分時間があるので、渋滞にもいらいらせず、ライオンズの勝利を願って歩く。

  山頂から1時間40分で白井差小屋に到着。ここで熱い甘酒をご馳走になり、さらに舗装された道をバス停まで歩く。バス停に15:30到着。近くの民宿で時間潰しにビールを飲み美味しい山菜料理を食べながら日本シリーズをテレビ観戦する。バス発車前の丁度良い時間にライオンズが勝ち、広島との対戦成績を三勝三敗一引分けのタイとした。これで三連敗後の大逆転優勝の奇跡がぐっと現実味を帯びてきた。民宿の人達と喜び合い、別れを告げ、気分良く16:05発のバスに乗り込んで帰路につく。今日は良い日だった。■

 

両神山登山行程  1986年10月26日

入間市 5:25 === 6:20 西武秩父 6:37 ==(バス)== 7:15 小鹿野 7:30 ==(バス)== 7:50 納宮 7:50 --- 8:35 奈良尾沢峠 8:40 --- 9:00 日向大谷 9:05 --- 10:35 清滝小屋 10:50 --- 11:30 両神神社 --- 12:00 両神山(1,723.5m) 13:20 --- 15:00 白井差小屋 15:10 --- 15:30 白井差口 16:05 ==(バス)== 16:50 小鹿野 17:01 ==(バス)== 17:40西武秩父 17:52 === 18:52入間市

         登山記リストへ戻る